戦ってみた
「ここが依頼の場所だね」
「だな」
俺達がたどり着いたのは一軒の廃墟、通称『死霊館』。
パッと見では蔦で覆われた朽ち捨てられた豪邸に見えるが、ある日から入るたびに部屋の構造が変わる、魔物が徘徊している、マナの濃度が濃くなったなど囁かれ、取り壊し不可能のダンジョンとなった。
改めて俺は今日の依頼の内容を復唱する。
「依頼の内容はリビングアーマーを八体討伐。倒したら依頼人が欲しがっているリビングアーマーの兜を回収して撤退。これでいいか?」
「うん」
「モチロン!」
シオンもセリカもやる気になってるし、士気の心配は必要ないな。
「よし、いくぞ」
俺の合図と同時にドアを開けて、死霊館へ入った。
死霊館はダンジョンだが、先人達のおかげである程度の法則性が出来上がっている。それが出入り口は必ずエントランスに繋がっている、だ。
もし迷ってもエントランスを探せば確実に出られる。
一階には八つの扉、二階への豪華であったろう階段、見つからなかったら上も見てみないとな。
「どう動くの?」
「固まって動こう、合流出来る手立てがあるとしても孤立は避けたい」
「分かった」
頷くセリカを見て俺を先頭にドアを開けると、開かれた先に広がるのは薄暗い廊下。
法則そのニ、廊下には魔物は出ない。
「問題無し、ついてこい」
三人で廊下を進むまたしても見えてくるドアを開くと今度はダンスホールに出た。
「あれ? 前来た時にはダンスホールなんてなかったような……」
「ここは入るたびに構造が変わるんだ」
「だとしたら私達が見た事無い部屋とかあったりして」
「かもな。それより、初めてじゃないのか?」
俺とセリカのやり取りに入って来たのはシオン。
「うん、二人で鍛える為にね」
「そうか、いい事……」
気配だ。どう考えても魔物だな。その証拠に二人も黙ってシオンは剣、セリカも拳を握って構えを取っている。
ダンスホールの中心、天井には紫の炎が揺らめくシャンデリアがつり下がったこの場所で三人で背中合わせになってそれぞれが視界の警戒をする。
その時、俺に目掛けて剣が飛んできた。
「オルァッ!」
それを剣で叩き落とすと、金属音が響き俺達の前にゆっくりと持ち主が現れる。
リビングアーマーだ、盾だけを持った中身のない鎧が俺達の前に出てきた。そしてそれを皮切りに七体の別個体もゆらゆらと歩きながら現れ、剣と盾を構える。
元とはいえ俺だってSランクの端くれだったんだ。こいつらぐらいで後れは取らない!
俺は叩き落した剣を拾い上げると、思い切り投げつけた。
「返してやるよ!」
剣はリビングアーマーの兜に直撃し、後ろに倒れて動かなくなる。
そしてそれが開戦の合図となって、人三人対魔物七体が始まった。
俺は二体と対峙し斬りかかって来た一体の斬撃を軽々とかわし、背中に回ると隙だらけの背中を深々と斬りつける。
俺の耳には鎧が走ってくる音が聞こえる。予想通りだ。
剣を頭の後ろに回しもう一体の攻撃を防ぐと剣で押しのけて、不意打ちを狙ったであろうもう一体に振り返り兜と鎧の間、リビングアーマーの急所目掛けて剣を突き刺した。
「くらえっ!」
これが効いたのか刺された方は動かなくなり、膝から崩れ落ちる。
そこをすかさず俺は、兜を奪い取り走り出す。
さっき倒した奴だ。俺は急いでそいつの元に着くと兜を奪い取る。
その数秒後、リビングアーマーの亡骸はドロドロに溶けて跡形も無く消えた。
「間に合ったか……」
この館……というより魔物全般に言える事だが、魔物は倒されてしばらくすると溶けて無くなってしまうのだ。
未だに謎の多い現象だが、ハッキリ分かるのは急いで剝ぎ取りをしなければいけないという事だ。
放置していた一体と再び対峙し鍔迫り合いを始める。
そんな最中、俺は二人の方を見ながら戦う。
シオンは剣以外にも蹴りも混ぜており剣でガード、蹴りで怯ませて、その隙に剣で攻撃というスタイルか。
セリカはまさに力づく、斬撃をかわして拳で胴体をひしゃげる程の力で殴りまくる。
「二人共、凄いな!」
「そうかな⁉」
「そうでしょ!」
戦闘中でも関わらず俺の話を聞けるほどの余裕を持つシオンとセリカ。
俺も負けれられないな!
俺は思い切り押しのけ、のけ反った所を横一閃! 首が飛んで動かなくなった。
「グオオオオオ!」
その時、残った一体が咆哮を上げた。何をするつもりだ?