依頼を受けて
「そういえば、パーティの事ちゃんと聞いて無かったよな?」
翌日、俺達はギルドに向かいながらシオンにすっかり忘れていた事を聞く。
「ああ、すっかり忘れてた」
シオンも忘れていたらしく、そうだったと言わんばかりに手を叩く。
「実を言うとパーティ名、決めてなかったんだよね」
「決めてない⁉ 今までどうやって来たんだ?」
「とりあえずはシオン&セリカって仮名で……」
「正式な名前を決める予定はなかったのか?」
「私、こういうネーミングセンスが無いからさ。考えてはボツを繰り返していたら、結局決めれなくて……」
「私も同じ」
セリカが後ろで賛同する様に首を縦に振り続けている。
「だからさ、何か名前を決めてくれないかな?」
「いいのか?」
ぽっと出の俺が命名権を貰えるなんて本当に申し訳ないな。
「いいよいいよ! コーディくんが決めてくれたら私も嬉しいよ!」
まあシオンがここまで言うんだ。ここで断るのは駄目だよな。
「分かった。……百合刀拳とかどうだ?」
「百合?」
セリカが疑問を持っているな、百合と言ったら……。
「花の名前だ。シオンが好きだったんだよな?」
「コーディくん……そこまで憶えていたなんて……」
シオン感動しているな、そう思いつつみていたら彼女が跳んで抱き付いて来た。
「ちょっ……」
「大好き!」
「おい! 人前は流石に……」
抱き付いたまま跳ねる彼女に俺は恥ずかしくなりながらも大人しくさせる。
「私、ハブってる?」
「あ! ごめんねセリカちゃん! 嬉しくてつい……」
「それに刀剣って私、剣無いよ?」
「いや、刃物のけんじゃなくて拳のけんだ」
「やった!」
それでいいのか……。
そんなやりとりをしつつ冒険者の集まり改め俺達、百合刀拳はギルドにやって来た。
「いらっしゃいませ。本日はどのようなご用件でしょうか?」
「あの! 私達のパーティの改名したいです!」
百合を使ったのがよっぽど嬉しかったんだな。シオンは受付前ではしゃぎながら跳ねている。
「メンバーは……」
「私とセリカちゃんのシオン&セリカ! 今日からコーディくんも入って百合刀拳に改名します!」
受付嬢が言い切る前に言いきったな……。
「か、かしこまりました」
「それと……依頼ある?」
シオンに押され、受付嬢は机上の依頼届を吟味し始める。
「シオン&セリカの頃のランクはCですから……あまり大きな依頼はありませんが……」
そう言って、受付嬢は俺の顔を見る。
まあ、元とはいえSランクのパーティにいたしな。報酬や手ごたえは期待できないと言いたいのだろうか?
「いえ、構いません。むしろ二人の教えれるいい機会だと思います」
二人共強くならないとな、俺だけ強くなったって意味はないからな。
「コーディくん教えてくれるの?」
「ああ、といっても講師なんてやった事無いからどこまでできるか分からないけれどな」
「いいよいいよ! 全部極めるから!」
「モチロン私も立ち回りぐらいなら覚えられそうだし!」
二人共やる気になっているな嬉しい限りだ。
「それでどの様な依頼を受けますか?」
「モチロン、一番難しいやつで!」
セリカが元気よく答えると、受付嬢は一枚の紙を取り出す。
「でしたらこれがありますが……」
『討伐 リビングアーマー 八体』
……やってみる価値はあるな。