占ってもらう
「ここだよ」
シオンに連れられてやってきたのは路地裏にある古びた家屋。
少なくとも人が寄る所どころか店にすら見えないな。
どうやって店の人と知り合ったんだ?
「雨宿りに入ったら、ここが占いの館だって気づいてね。そこからお店の人と仲良くなったんだよ」
シオンが俺の思考を見透かしたかのように語り、館へのドアを開いた。
「ミューちゃん来たよ!」
シオンが元気よく挨拶する先にいるのは黒いフードを被った人。
「その人ですか?」
声の感じからして女の子だな。
「そうそう、私の幼馴染のコーディくん。私の仲間のセリカちゃんだよ」
「あなた達が……失礼」
彼女はシルク製であろうフードを取ると、素顔を晒す。
「初めまして、私はミュリゼリア。ミュリゼリア・ハウントです。以後、お見知りおきを」
穏やかな顔で微笑む彼女に俺は質問をする。
「さっきシオンが言った、ミューというのは?」
「シオンさんが付けてくれた愛称ですよ。こういった事は無かったので……お二人もよろしければそう呼んでもらっても構いませんよ」
俺は店内を見渡す。
みすぼらしい外装と反して内装は小道具が整理整頓されており、彼女の前にあるテーブル上には水晶玉、タロットカードが置かれており、それを照らす様に机上のカンテラからは紫の炎が揺らめいていた。
「中は凄く綺麗ですね」
「ため口でも構いませんよ? 貴方は今後もこちらに来るのですから」
俺が常連になるみたいな口ぶりだな、もしかして自分の占いに相当の自信があるのか?
「それで今日は、何か道具についてのお話でしょうか?」
「どうして分かったんですか?」
「貴方、鞄を気にしている様子でしたからもしかしてと思いまして」
凄い観察眼だな……隠し事は出来なさそうだ。
「実は、ホープダイヤモンドを手にしてしまいましてね」
俺はそう言いながら、鞄から件の宝石を出して彼女の前に置く。
「これですか……」
「ミュー、何か分かりませんか?」
セリカのやつ、もうあだ名呼びをしているのか。
「見た目も気配も普通の宝石にしか見えませんが……」
ミューは呟きながら、机の下から何かを出した。
「ひとまず……」
「え」
彼女が持っているのは金槌⁉
「割って確かめてみましょう」
「ちょっ……⁉」
俺の制止も聞かずに彼女は金槌をホープダイヤモンド目掛けて振り下ろす。
ガッシャァァアアッンンン!
耳をつんざく音に俺達は耳を塞ぐ、それから数秒後、俺の鞄に重みを感じた。
「何も起きませんね……」
何も知らないミューは吞気にそう言っているが、俺は鞄を開いて中身を確認する。
「あった……」
俺は再び現れたホープダイヤモンドを見せつける。
それにはミューも驚いたのか、口に手を当てて呟く。
「本当だったんですね」
「ああ……割っても、捨てても気が付いたら俺の手に戻っている」
「けれど呪いの類ではない……」
うーん……とミューは眉間に手を当てて考えると、笑顔で喋る。
「こうなったら、持ち続けていましょう」
「え⁉」
「この話には全知全能の逸話があるのでしょう?」
「知ってるのか?」
「シオンさんが教えてくれましたから」
穏やか姿から打って変わって真剣な顔で話しだす。
「さて……ここからは私の占いで道を探ってみましょうか」
来たか!さてと、74の力見せてもらうぞ。
「まず必要なのは二つ、拠点と……格下……」
「拠点はともかく格下?」
「拠点なら私のパーティがあるよ!」
シオンが自信満々に答えるが、それは予想がつくけれど俺より格下?
「だとしたらパーティに入る、後は何をすれば……」
「そうですね……」
ミューは少し考えて、口を開いた。
「奴隷ですね」
「奴隷⁉」
とんでもない事を言い出したぞ!