見てもらおう
「ホープダイヤモンド?」
俺も噂なら聞いた事がある。名前とは裏腹に手にした人を破滅に導く宝石。まさかこれがそうなのか?
「そう、コーディくんも噂なら聞いた事はあるでしょ?」
「ああ、でもそれだったらおかしくないか?」
「何が?」
セリカが聞いて来た。よし、説明も兼ねて指摘をするか。
「色だ。ホープダイヤモンドは人の手が一切入っていない程に澄んだ青をしているはず、けれどこれは浅葱色になっている」
「そうなの?」
「知らなかったのか?」
「いや、私が聞いたのだとそういう形をしているって聞いたんだけど……」
シオンが難しい顔で考えだすと俺も考えだしてしまう。
確かにホープダイヤモンドはある。けれどそれが一個だとは誰も言ってない。
俺が知っているのはメジャーな話だけで他にも種類があるのか?
けれど分からない事はまだある。
「それに出どころだ」
「露天商じゃないんですか?」
「その前、露天商がどこでホープダイヤモンドを仕入れたのか。そしてどうして手放せたのか」
俺の現状、気になる点はここだな。
「それ、私には分かります!」
「どういう事だ?」
「手放せたのは片っ端から、人に渡していたから!」
まさか俺に渡してきた奴は自分の手元から無くなるまで、押し付け続けていたのか?
「だったら仕入は?」
「う~ん」
腕を組んで考えるセリカ。
考えられるのは拾ったか、発掘したか、元々持っていたか……。そう考えるとセリカが叫ぶ。
「分かりました! その人、落ちぶれた貴族の人だったんです! それなら最初からホープダイヤモンドを持っていてもおかしくありません!」
「セリカちゃん、そんな偶然にしても……」
いや、あの容姿を考えれば……。
「セリカ、その説推してもいいか?」
「モチロンです!」
今思えば、その人の名前を聞いておくべきだったな……。
「コーディくん、その露天商の人ってどんな人だったの?」
「顔をローブで覆っていた上、しゃがれた低い声で受け取れと言われただけだからな、詳しい事は分からない」
「しゃがれた低い声……男の老人かな?」
「かもな」
よし目的が見えてきた。
「よし、目的が見えた。その老人を見つけてこの事を問い詰める」
「コーディくん、その前にやる事があるでしょ?」
「何?」
何かあったか? 装備や道具は間に合ってるしな。
「そのホープダイヤモンドの話! 忘れないでよ」
「ああ……」
本気で抜けていた。
「私が聞いた話だと、持ち主を選んで気に入った人の懐に入って人の運を奪うの」
「それでその宝石のお気に入りから外されない限り、手元に残り続ける」
「そう、けれど持ち続けているとある日突然、ダイヤモンドが割れて持っている人は全知全能の力を得る事が出来る……と言われているらしいよ」
不幸と引き換えに力を得るか……なんだか信じられないな。
「あ、信じてない?」
「そりゃそうだ。全知全能だなんて、尾ひれが付き過ぎている」
「じゃあ、私より説得力のある人を紹介しようか?」
まだ知り合いがいるのか?
「誰なんだ?」
「占い師の女の子。私と同い年だけど的中率、74%だよ」
74……微妙だな。そう思ったが俺はシオンが俺の悩みに真摯に向き合っている姿に何も言わなかった。