連れてかれた
「コーディくんだよね?」
俺の前に現れたのは、かつて同じ村で育った幼馴染。
その姿に懐かしさがこみあげてきて自分の声が喜んでいるのが分かった。
「シオン! 久しぶり!」
「コーディくんも! うわー! 何にも変わってない!」
シオン・クラント……俺と同じ村で兄妹同然に育った幼馴染だ。
俺が黒の短髪に対して、シオンは白のショートヘア、しかも一緒にいる時間が多かった事も相まって白黒コンビって村じゃ囁かれていたな。
先日、冒険者になったと話は聞いたけど、まさかここで再会するとは思わなかったな。
「シオンも変わってないな」
「じゃあここもお揃いだね!」
シオンはいつも俺とお揃いに拘っていて、俺もそれが心地よかったから嫌いじゃないけど、まさか服装も同じだとは……流石に色は俺の赤色に対して緑色と色違いではあるが……。
「コーディくんは今日はどうしたの?」
彼女になら何でも話してしまいそうになるが、ただ解雇されたなんて心配される事は言いたくなかった。
「実は前のパーティは訳あって辞めちゃってね」
「そうだったんだ。そうだ!」
シオンは手を叩いて楽しげに言う。
「実はさ、私もパーティを組もうかなって思っててメンバーを探しいるんだけどさ! よかったらどうかな⁉」
見事なまでの渡りに船だな。俺がそれに答えるのは、そう時間は掛からなかった。
「ああ……」
次の言葉、いいぜが出てこない。
いや、出せない。脳裏に浮かぶのは俺の不運で周りを失望させてしまう負の光景。だが、同時にシオンなら俺を受け入れてくれるんじゃないかという正の光景。
「どうしたの?」
心配そうに顔を覗き込むシオンに俺は言い放った。
「悪い、それは出来ない」
「何で⁉」
「それは……」
誰も相手をしない謎のタリスマン……話した所で信じてくれるだろうか?
いや、してもしなくてもシオンは俺から離れてしまわないだろうか?
「……せっかくだからさ、三人で話さないかな? コーディくんの紹介もしたいし」
「三人?」
「私の仲間! ついて来て!」
俺はシオンに連れられるままにギルドから出た。
「シオン」
「何?」
「彼女は?」
俺達が来たのは街の喫茶店、屋外のテーブルで三人座っている、俺とシオンと……この女誰だ?
見た目は、茶髪のポニーテールにへそ出しに短パンのラフな格好、頭にハチマキをしているし手の傷跡と筋肉のつき具合から武闘家か?
「はい! 私はセリカ! セリカ・ノックスです!」
活発そうな子だな。俺達と同年代か?
「セリカちゃんは私と意見が一致して一緒に行動してるんだ。それで一緒に活動していたんだけど二人じゃ限界があってね……」
俺の考察を他所に説明をするシオン。
「聞いてる?」
「ああ。それで……ノックスさん?」
「セリカでいいです!」
「分かったそうさせてもらうよ。それでセリカは武闘家だったりする?」
「はい! よく分かりましたね!」
「手の感じからもしかしたらって思って」
「正解! よく見てますね!」
「ああ、まあ……」
セリカが称賛するが、俺はあまり喜べなかった。目が良くても狩人の様にそれを活かせる場面じゃないと意味が無いからな。
「それじゃあ本題」
シオンが手を叩いて話を切り出す。
「どうして私達と一緒になってくれないの?」
正直に話して納得させないと逃がしてはもらえなさそうだ。
「実は、少し厄介なアイテムを抱えていて」
「何それ? 見せて欲しいな?」
シオンに言われ俺はそれ、渦中のタリスマンを取り出してテーブル上に置く。
「これは……タリスマン?」
「凄く綺麗ですね!」
「そう見えるだろ? ただこれを手にした日からロクな目に合わなくなった」
「……」
「もしかして呪いのタリスマンとか?」
「そう思っていろんな教会に持って行ったんだが、どこも突き返されてばかりだった」
「……」
「捨てたり、壊したりは?」
「それも駄目だった。早くて数分、遅くても翌日にはこのタリスマンが手元に戻って来ているんだ」
「……」
それにしてもさっきからシオンは黙っててどうしたんだ?
「シオン、さっきから黙っててどうしたんだ?」
俺は思考から口を開くのに遅くは無かった。
「いや……そのタリスマン……どこかで見た事があるなって思って……でもまさか……」
シオンが口ごもるなんて相当だな、これってやっぱり危険なものなのか?
「何か知ってるのか? 何でもいいから教えてくれ」
「あー……分かった。でも、都市伝説だから当てにしないでね」
シオンの注意を聞いて俺が頷くと彼女は口を開いた。
「運命を操る自我を持つ宝石、ホープダイヤモンド」