お見舞いに行こう
「ふぅ……」
駐屯地で
警備団から職質を受けて数時間、『俺達四人は闇市対して義憤で突撃した』これだけの説明の為にかなりの時間を取らされ、宿屋に帰れる頃には既に日付をまたいでいた。
「何を聞かれた?」
「闇市との繋がり、何度も聞かされてたまったものじゃなかったよ……」
職質だと何度も同じ事を聞かされると噂は聞いていたが、まさか日を跨ぐまでにされるとはな。
セリカとシオンも疲れた様子だが、もう少し動いてもらわないと。
「奴隷の娘達はどうなったの?」
「それなら俺が聞いている。聞けば全員、教会に送られたらしいぞ」
「教会に?」
「保護という事だろう。よし二人共、最後の一仕事に教会へ行こう」
「あ、そうか。アリシアナって娘を助けたか確認しないとね」
「そう言う事だ」
そうして俺達は教会に向かって行った。
十字架が特徴的な建物である教会。ここは主に神父や僧侶、魔法使いなどの信心深い人が来る人が多い。最も、信仰していなくても簡単な魔法は使えるから必ず行くべき所ではないけどな。
教会の開かれたドアから入って奥へと向かって行く。
両脇の長椅子には複数の幼い少女達が並んで座っており、ある人は虚ろ気な顔で、ある人は怯えた様子で、ある人はこちらを睨んでいる。
……それよりこんなにもいたか?
「貴方方ですか」
目の前に巨大な女神像、その前には神父であろう一人の老人が穏やかな様子で立っていた。
「どうも」
「彼女達の人生はあと一歩で、失われる所でした……本当にありがとう」
ゆっくりと頭を下げる神父に俺達もゆっくりと頭を下げる。
「俺達はただ……やろうと思った事をやっただけです」
「殊勝な心掛けですね。その心を忘れないで下さいね」
辺りを見て俺は思った事を聞く。
「奴隷ってこんなにもいたんですか?」
「裏手に詰め込まれていた人がいたみたいで……気分の悪い話ですよ」
1、2、3……十人はいるぞ……。
「彼女達はこれからどうなるんですか?」
「私達が用意した家に住んでもらいます。うちのシスターと協力して社会復帰をしてもらうんです」
「教会ってそう言う事もするんですか?」
「ええ。他にも、体が弱いなど、働けない人の為に食事を用意したりするんです」
人の社会復帰、食事配給……教会って人助けもするのか、俺も勉強不足だな。
俺が教会に感動している時。
「あ、すいませーん。ワタシはアテがあるんで家には入りませーん」
後ろから軽い声が聞こえ振り返ると。赤髪の少女が手を振りながら話している。
「あの娘がアリシアナ?」
「何か、軽い感じの娘?」
二人も困惑しているが、俺も困惑している。檻に入っていた時は大人しかったのにまさかあれが彼女の素面なのか?
「え? よろしいのですか?」
神父さんも困惑しているな……それを気づかずアリシアナは話し続ける。
「良いですって神父さん。私には……」
すると、アリシアナは俺の手を握って指を絡めて来た。
「ちょ……」
俺が何かを言おうとする間もなく、その繋がった手を見せつけて一言。
「ワタシ、この人と一緒に行くから!」