闇市に行こう
俺の告白から数日後、よくある依頼だけで過ごしていた。
採取も討伐も立派な仕事とはいえ、金剛爪牙にいた頃は大規模戦闘に参加させてもらった時の刺激は忘れられないからな……。
正直言って、この生活に飽きを感じ始めていた。
「それでさ……」
「そうなんだ。私もさ……」
二人が横で話しているが、今後の事も知っていかないと。パーティのランクアップにシオンの夢の手伝い、やらなきゃいけない事があるからな。
そう考えながら、ギルドへ歩いていた。
「皆さん」
聞いた事のある声に呼び止められて振り返ると、ミュリゼリアが立っていた。
「ミューちゃん!」
シオンが喜ぶが俺は疑問をぶつける。
「仕事はいいのか?」
「元々、人も余り来ないですしちょっとぐらい開けても問題無いですよ」
「そうなのか」
「ミューちゃん、趣味で占い屋やってるみたいなものだから……」
趣味? 態度からして生計立てれる程じゃないし、普段は何してるんだ?
「それより今日は皆さんに伝えたい事があってこちらに来ました」
「伝えたい事?」
セリカが復唱するとミューが俺の手に一枚の手紙を握らせる。
「手紙? 誰宛てだ?」
「いえ、これは紹介状ですよ」
紹介? 何故、彼女がこれを?
「闇市のね」
ミューの付け足された言葉に俺は顔を上げると同時に、言葉が溢れ出す。
「闇市の紹介状って事か? どうやって用意した? これを使ってどうしろと?」
「いいですか、落ち着いて聞いて下さい」
「お、おう……」
確かに口早になってしまったからな。
「闇市では違法品、転売品、奴隷が多数売られてます」
「闇市だしな」
「私が以前言っていた事を憶えていますか?」
「奴隷云々の事か? ……まさか⁉」
「お察しの通り、奴隷を手に入れてもらいます」
「俺に犯罪者になれっていうのか?」
「いえ、少々違いますが……」
何をさせるんだ?
「この闇市を壊滅させて欲しいんです」
「壊滅⁉」
ますます訳が分からなくなる。
「ミュー。私からも質問いい?」
セリカが質問をする、彼女も俺と同じ考えなんだろうか?
「どうして私達に頼むの? 警備団の人に頼めばすぐに解決できると思うのに……」
「実はですね……」
ミューは俯いて語りだす。
「奴隷の中に私の友人がいるんです。けれど助けたくとも、私は近づけなくて……」
「どうして?」
「身元が割られているとかか? 友人なら家族程じゃないが、関係を知られている可能性がある」
「その通りです」
「それで赤の他人である俺達に白羽の矢を立てたって訳だ」
「はい、どうかお願いします!」
ミューが深々と頭を下げて懇願をする。
奴隷の救出なんてやった事無いが、何事にも挑戦あるべきだ。そう思った俺の考えは一つだけだった。
「分かった。やろう」