さあ勇者転生だ の4
方針は決まった。
さあ、いよいよ転生の時間だ!
とそこへマイヤ・マイヤさまが現れた。
マイヤ・マイヤさまは、仲間に入れて欲しそうにこちらを見ている!
「ノーラちゃん、転生するところ私も見てていいかしら?」
マイヤ・マイヤさまが見守る中、私は作業に取り掛かる。
まず最初は、この子の魂に元の肉体を因子として埋め込む。
これによって魂が強化され、また新しい体が作られる際には元の体の情報が組み込まれる。
見た目は若干日本人寄りになるだろう。
まだ自我のないこの子の魂には、これまではっきりとした形がなかった。
そこに肉体の因子を埋め込んだことで、魂はどことなく赤ん坊っぽいような姿に変化する。
よし、うまくいった。
次はこの子への加護。
選んだ能力をひとつひとつ決めた通りの強さで魂に加えていく。
ひととおり加え終えたら、元の肉体の因子が加護に想定外の影響を与えていないか、隅々まできっちりと確認する。
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よし大丈夫、心配していたような極端な影響はでていない。
若干加護が強まる程度に収まったようだ。
ほっと一安心。
転生先にも問題ないことを確認してから、私は目の前に浮かぶ勇者の魂に話しかけた。
「あなたは覚えていないでしょう。こちらの世界に来る前、あなたのことをとても大切に思っている人がいました」
「転生するとき、あなたからはこれまでのすべての記憶が抜け落ちます。だからこそ、もう一度あのやさしい母親の記憶をあなたに戻します。今この時だけでも彼女のことを思い出してあげて下さい」
この子に出会ったときに母親から読み取った、この子が生まれるまでの母親の記憶。
そして私が持つこの子の母親との記憶と、この子自身が持っていたおぼろげな記憶。
それらを受け取った勇者の魂は、別れた母を想い、ふるふると震えた。
しばらく震え続けていた勇者の魂は、やがて強く輝いた。そう、なにか大きな決意をしたかのように。
それを見て私はゆっくりと頷き、再び話しかける。
「あなたはこれから人間として生まれます。優しい両親のもとで慎ましくも幸せに成長していくでしょう」
「あなたが10歳になった時、私はあなたに会いに行きます。そして、あなたが勇者であること、魔王から世界を救って欲しいということをあなたに伝えます」
「あなたがどうするのかは、その時のあなたの決断にお任せします。これは強制ではありませんし、何よりあなたの人生ですから」
「ただ願わくば、あなたを含むこの世界のすべてがいつまでも幸せでいられますように・・・」
そして転生の瞬間が訪れる。
「さあ、お行きなさい。素晴らしき人生を。わたしはいつでもあなたを見守っていますから」
勇者の魂はひときわ強く輝き、そして魂はこの場から姿を消す。
そう、転生は無事完了した。
しかし、この時私は気づかなかった。
転生の瞬間、マイヤ・マイヤさまから漏れ出した創造神の力が、勇者に「創造力」を与えたことを。
そして、転生の中で消えゆく母親の記憶とその想いが天照さまの祈りと融合し、勇者の中で「百期百会」の能力として芽生えたことを。
そしてそして、それらによって活性化した肉体の因子が、受け取った全ての加護を大きく底上げしていたことを。
私は気づかなかった・・・