さあ勇者転生だ の3
自分の部屋に戻った私は、勇者を転生させる準備を始める。
まず決めなければならないのは、転生させる種族。
日本で一度人間として生まれるはずだったのだから、こちらの世界でも人間として生まれるのがこの子にとってもっとも自然だろう。
ならば次はどの国に転生させるか。
健やかな少年時代を過ごすには、5大国の中で最も平和で文化的なジェーン王国がいいだろうか。
他国と同様に王政ではあるが、この国には王族・貴族ともに穏やかな気質の持ち主が多く、全てではないが平民にも学問を学ぶ場が用意されている。
よし、ジェーン王国に決めた。
次は転生先の身分だ。
身分は、王族・貴族・平民のいずれか。
しかしここは平民一択だろう。
王族や貴族は身分的に有利な反面しがらみも多く、かえって自由に動けなくなる可能性も決して低くはない。
このジェーン王国ならば、平民だからといって将来を縛られるようなことにはなるまい。
平民の中からこの子の両親となるのにふさわしい夫婦を探すとしよう。
そして見つけたのが・・・
王都から少し離れたエクレール領、その領都エクレール郊外に住むゴウン、ムウン夫妻。
新婚で夫のゴウンは腕のいい狩人、妻のムウンは服や小物を作って商店に卸している。
ふたりの住む家の隣には、中々の規模の農園を営むゴウンの兄夫婦が住んでおり、互いの関係は非常に良好である。
ゴウンの狩ってきた獲物と農園で採れた野菜の交換など日常的に行っており、2世帯での共同生活と言ってもいいだろう。
これなら毎日の食事の栄養バランスも当然良好。
しかも、同じ年に生まれる予定の従妹は、非常にかわいらしい少女に成長する。
閑静な住宅に優しい両親、毎日のおいしい食事にかわいい幼馴染。
これ以上はない、最高の物件と言えるだろう。
最後は加護。
与えすぎてもいけないし、足りないのはもっと駄目だ。
魔王に対抗できるまでに成長でき、しかも人としての範疇から逸脱したようには見せないような加護。
複数の基礎能力の向上を加護の軸として検討、そこから色々とシミュレートした結果、次のような組み合わせで加護を与えることにした。
強靭でしなやかに動く肉体を作る、「体力」と「運動能力」
強力な魔法を行使できるよう「魔力」と「魔法能力」
そこに「器用さ」を加えればその双方に良い影響があるだろう。
脳筋となるな、賢くあれ。「理解力」「記憶力」「発想力」
そしてこれは私からのプレゼント。「幸運」と「成長力」
これら全て、ひとつひとつの能力を程々の強さで与える。
一見ただの器用貧乏になってしまいそうだが、これらすべてが相互に作用しあい、その結果かなりの強さを総合的に得ることができるはずだ。
よし、我ながら完璧なプランだ。