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さあ勇者転生だ の2

この世界は、ひとつの大陸とひとつの島から成り立っている。


大陸の大部分は広大な未踏の地であるが、中央付近から海へと流れる大河を中心に、5つの大国と7つの小国が存在している。

そこに住むのは人間たちだ。


一方で島には人間たちとは姿かたちが若干異なる様々な種族が住んでおり、ひとつの国を形成している。

彼らのうち数が多いのはエルフ族、ドワーフ族、獣人族で、その他いくつかの少数種族たちとともに穏やかに暮らしている。


国の名はアニユラ。各種族の代表たちの話し合いにより運営している、非常に平和な国だ。


ちなみに人間を含むすべての種族は、マイヤ・マイヤさまがこの地を創造するにあたり、他世界の創造神さまたちと共通のテンプレートから選定したらしい。


テンプレートを使うかどうかは各創造神さま次第だが、テンプレートを使った世界の間では、今回のような魂の交流を行うことができるようになるそうだ。


日本からの転生者を迎えているのは、どこもこのテンプレートを使った世界ということなのだろう。



さて、今回私たちが勇者を召喚したのは、近い未来にこの世界でおこる最悪な出来事を防ぐため。

その出来事とは、このアニユラを発端とした世界そのものの崩壊だ。



今からおよそ10年後、この国に突如として魔王が出現する。

その者は、その瞬間までこの世界のどこにも存在しなかった。

しなかったはずなのだ。


マイヤ・マイヤさまのお力で何度も感知を試みたが、現れる瞬間を捉えることは未だにできていない。

神の力をもってしても未知であり謎である存在、それがこの魔王なのである。


その後に起きる出来事から判明した魔王の特性、それは魔力の吸収だった。


魔王は、出現から数年をかけてアニユラに住むすべての種族の支配を進めていった。

そして彼らや周囲の生き物の魔力を吸収して己自身の体内に蓄え、その力をもって大陸に攻め入る。


さらに広がった支配地域の地脈や生き物からも魔王は魔力を吸収し続け、果ては世界を巻き込む魔力暴走を起こす。

その魔力暴走により魔王は肉体も魂も消滅し、世界は荒れ狂う魔力に耐え切れず崩壊することとなる・・・


そのような未来は到底承服できない。

世界を破滅から守るため、マイヤ・マイヤさまと相談して出た結論が勇者召喚だった。


どの世界でも、勇者とは魔王と対になる存在。


では、この世界に突如として現れた、未知であり謎である魔王と対になる勇者とは、どのような存在であればよいのか?


私とマイヤ・マイヤさまは考えた。


ふたりきりのブレインストーミング。

ーあの魔王、初めから消滅以外の道筋を持っていない。

ーあれではまるで爆弾ではないか。

ーそもそもあれは本当に魔王なのか?

ー属性を見ると確かに魔王だ。

ーだったらどんな勇者なら・・・



長時間の議論の末に出たその結論は、「神の目でも将来を見ることができない」特性を持つ勇者。


出現の方法や理由や目的、何もかも全く不明な魔王に対し、これからどのような成長を遂げるのか全く予知・感知できない勇者。


そのような特性を持つ者が見つかれば、きっとそれは謎の魔王と対の勇者となりうる。

それこそが、この世界を救う可能性を秘めた勇者。

それが私たちの結論だった。


将来が見えないというのは不安な点ではあるが・・・


それから私は勇者を探し続けた。

部下の天使たちにも情報を集め続けさせた。


そして赴いた日本。

そこで見つけた数々の候補たちは、特性を確認する前に消えてしまった。

その未来も見えていなかったのだから、彼らにも十分可能性はあったのだが。


しかし!だがしかし!その末にとうとう巡り合うことができたのだ。

あの子に。


でも、だからといって勇者に過剰な干渉をすることはできない。

勇者だって人間だもの。


あくまで人として健やかに育ち、そののちに自ら勇者として立ち上がらなければならない。

この世界はすでに創世期を過ぎ、神の手から離れているのだから。


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