まずは勇者を探そう の5
赤ん坊を抱いた私は、そのまま天照さまのもとに転移した。
生まれたての魂はまだ世界との繋がりが弱く、体から離れるとすぐに輪廻の流れに流されてしまう。
そのためこの子の魂は体から離れたところをすぐに天照さまのもとへ送り、天照さまに事情を伝え保護してもらっていた。
「この子を連れていく準備はできたようですね」
「はい、いろいろとありがとうございました。天照さま」
天照さまは私の腕の中の赤ん坊を愛おし気に見やる。
「ではその子の体は私が預かりましょう」
「それなのですが、天照さま?」
「はい」
「生まれ直すとはいえ、一度はこの魂が宿った体。できればこの体も連れて行き、新しい体の礎としてあげたいのですが・・・」
「・・・できないことはありませんが、本当によろしいですか?魂だけの転生や肉体そのままの転移と違って、おそらくかなり強力な加護の受け皿となりますよ?」
「その点は私もどうなるか少し心配です。でもこの子の母親に強い子にすると約束しましたから・・・」
天照さまは頬に手を添えて少し考えるしぐさを見せる。
(あ、この感じ少しママに似てるかも)
なんて、ちょっと場違いなことを考えていると、
「わかりました。それではこの子が力にのまれずたくさんの幸せをつかめるよう、私の『祈り』をこの子に」
天照さまからやさしい光が降り注ぎ、この子の魂と体を包む。
これからたくさんの加護を受けるこの子のため、負担にならないよう「祈り」としてこの子を包んでくれた。
本当に、本当にやさしい方だ。
苦手なタイプかもなんて思ってごめんなさい。
「それではノーラ・ノーラさま、あなたの世界とこの子に幸多からんことを」
「天照さま、ありがとうございました」
そうして勇者を連れた私は日本を離れ、マイヤ・マイヤさまが待つ私たちの世界へと戻った。
そして思い出す。
「あ、コンビニスイーツ買ってなかった」