ノーラのたーん の5
「エイミース、おかえりなさい。そして4年間お疲れ様」
「ありがとうございます。ノーラ・ノーラ様」
「それで、どうだったかしら?リベルは」
「ええ、それはもう可愛いのなんのって。できれば連れて帰りたいところでした」
「それはやめてちょうだい。本末転倒になるから」
ほんとは是非とも連れて帰ってきて欲しいところだけど。
魔王の件が片付いたら一度連れてきちゃおうかしら。
「それでですね、実はお土産があるんです」
「お土産?」
「はい。こちらです」
何かしら?これは紙?って・・・
っ!!!!
「どうです?リベルが書いたんですよ。すごくよく描けてますよね」
そう、これは私の絵。いや正確に言うと私の立像の絵。
これは教会で描いたのかしら?いや、それにしてもなんでこんな上手なの?
「リベルったら5歳のときから絵を描き始めたんです。そうしたら見る見る上達して、6歳の頃にはこんなに上手になったんです」
「6歳の絵じゃないわね」
「ええ、どうやら見たものをそのまま絵にする技能が身に着いたようです。しかもその場ではなく後から描く様子も見受けられました。もしかしたら何らかのスキルとして発現したのではないでしょうか」
直接そんなスキルに発展する加護は与えてないはず。強いて言うなら「理解力」と「記憶力」だけど、それだけだと足りない気がする。
それに第一、加護にはロックがかけてある。このロックはかけた私自身にしか解除できない。
リベルが10歳になったときに私がこの手で解除するんだから。ああ待ち遠しい。
「後で記録を見て確認しましょう。それでこの絵ですが、まさかあちらから持ってきてしまったの?」
「その点は大丈夫です。これはコピーですので」
「そう、なら大丈夫ね、ってエイミース、あなた実体化能力なんて持ってないでしょう?」
実体として具現化するには、創造に連なる能力が必要となる。
「はい。実は先程マイヤ・マイヤ様にお願いして私の記憶から実体化していただきました」
「じゃあ安心ね。私の所に来る前にマイヤ・マイヤ様の所に行った点についてはともかくとして」
若干ジト目でエイミースを見る。
ふふふ、分かりやすく居心地悪そうにしてるわね。
まあ私のためにしてくれたことだし、これくらいで許してあげようかしら。
「それにしてもエイミース、あなた神力使いすぎよ。教会に行くたびに接続してくるんだもの。リベルの祈りの声が聞けるのは嬉しいけど、地上に影響が出ないか心配になったわ」
実際、エイミースはまだ交代する予定ではなかったのよね。
本人には言わないけど、日常からあれだけ神力駄々洩れだったから、ちょっと地上に影響が出始めてた。地域によって長雨とか干ばつとか。被害が出るほどじゃなかったけど。
「エイミースってずいぶんリベルが気に入ったみたいね」
「はいとっても。だって可愛いじゃないですか。でも私としてはノーラ・ノーラ様のほうが不思議なんです」
「私?」
「はい。直接ご自分で勇者郷から連れ帰って転生させたこともあるでしょうけど、それにしても妙にリベルに肩入れされているっていうか、気持ちの揺らぎが大きいように見えます」
「ああ、その事ね。それには理由があるの。リベルの魂を連れ帰るときにね、リベルと死に別れることとなったあの子の母親と話をしたの。そしてね、その時に彼女のリベルへの想いをすべて私の中に受け止めたのよ。でね、あの子の世界からあの子の記憶が消去されるとき、その反動で私の中にその想いが定着したの。だから今の私のこの想いは、私の想いでありあの子の母親の想いでもあるのよ」
「ああ、そのような事があったのですか・・・。だからまるで人の親のような感情を示されているんですね」
「そう。でもこれは決して不快なものではないわ。むしろ嬉しいの。子供に対する母親の愛情、そんな素晴らしいものが私の中にあるのよ。そのことがすごく嬉しいの」
私の言葉を聞くエイミースも嬉しそうだ。
やっぱりこの子、いい子なのよねー。残念なところも可愛いしね、あと残念なところも。
「カタロースとの引継ぎは問題なかった?」
「はい。現地にて恙なく。ただカタロースって無駄に大きいから、リベルの家が狭くなっちゃって。あちらのご家族に迷惑かけなきゃいいんですけど」
「まあ見えてないから問題ないわよ。ぶつかることもないしね」
むしろあなたが迷惑をかけてなかったか、この後記録を見るのがちょっと心配よ、私は。
「他に何か報告事項はある?」
「そうですね、あれはリベルが5歳になるちょっと前のことだったんですけど・・・」
そこから始まったのは報告と言うよりリベルの思い出話。
途中からは語りだけじゃ足りなくって記録映像も見ながら。
ものすごく長い報告?だった。大長編だった。
エイミースの4年分の迸りがもうっ!
迷惑?とんでもない!すごく楽しくって幸せな時間だったに決まってるじゃない!!
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