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犯人はエイミース

教会で受付をすませると、横に立つ神父が声をかけてきた。

もちろん今日このために本部から再来した神父である。

「リベル君は君かな?この間参加した子供たちにはちょっとそのときの事を聞いてるんだ。すぐ終わるから、向こうの部屋で少しだけお話ししていいかな」


「あはい、わかりました。リア、ちょっと待っててね」

「となりの席はとっておくから。ご用が終わったら来てね」

「リアちゃんもすみませんね。じゃあリベル君はこちらへどうぞ」



神父とリベルは奥の部屋に向かった。

当然リベルの後ろにはエイミース。今の彼女は神気を一切漏らさず反射もしない、完全ステルス状態である。


「じゃあこちらに座って」

リベルが椅子に座ると対面側の椅子に神父が座る。

「リアちゃんを待たせているから早く終わらせてあげないとね。じゃあさっそく始めよう」

「はい」



「まず君とご両親の名前から聞かせてくれるかな」

「僕はリベル、お父さんはゴウンでお母さんはムウンです」

「お父さんとお母さんはどんな仕事を?」

「お父さんは狩人で、お母さんは小物を作る仕事をしています」

「リベル君に兄弟はいるかな?」

「双子の弟と妹がいます。名前はフラーニとルミニーです」

「みんな仲良しかな?」

「はい、お父さんもお母さんもすっごく優しいです。弟たちはまだ小さいので目がはなせません」

「うんうんそうですか、いいご家族でよかったですね」

「はいっ」

「リアちゃんは従妹だったね。家は近く?」

「となりの家で農園をやってます」

「リアちゃんのご家族もとっても優しそうだね」

「はい、いつもすっごく良くしてくれます」


神父は、内心ではここまでのリベルの応答に舌を巻いていた。

打てば響くどころではない。こちらの質問に対し、その前にうけた質問から回答を先回りして返してくるのだ。6歳の子供が。

話し方や言葉遣いは6歳の子供相当だろう。ただし教育を受けた子供の、だ。

だが会話の流れは、まるで高度な教育を受けた大人とのもの、そんな印象。


「うん、ありがとう。じゃあリベル君、ここからは前回のお話について教えてくれるかい」

「はい」

「この間のお話のとき、部屋の中が急に明るくなったり暖かくなったりしたって話を聞いたんだ。リベル君はなにか感じたかな?いつもと違って感じた事とかでもいいんだけど」


リベルは前回のことを思い出しながら考える。普段と違っていたところ?

「別にいつもと同じだった(・・・・・・・・・)と思います」


「そうか、特に違いは無かったか・・・、じゃあ女神様のお話について何か思ったこととかはあったかな?」

「すっごくおもしろかったです。世界を作るなんて、女神様ってすごいんですね」

「そのとおりです。教会には他にも女神様の色々な話が伝わってるんですよ」

「へえー。こんどほかのお話も聞いてみたいです。それに女神様にも会ってみたい!」


「女神様にお会いするのは難しいかもしれませんね。大昔は常に我々の隣で導いて下さいましたが、世界が安定してからは我々にこの世界を任せて神の世界にお戻りになりました。しかし女神様はいつでも私たちを見守って下さっています。ですから、私たちは女神様に恥じることのない・・・」


途中からいつもの説法に入ってしまった神父。これも一種の職業病というか職業癖?だろう。


「おっとすみません。リベル君にはちょっと難しい話になってしまいましたね。さて、訊きたかったことはすべて聞く事が出来ました。じゃあリベル君、リアちゃんと一緒に最後まで参加してください。もう少ししたら始まりますよ」

「はい、ありがとうございました」




リベルが部屋を出ていくと、奥からこの教会の神父がやってきた。

「いかがでしたか?」

「そうですね、彼が女神様に愛された子供かは分かりませんでした。前回の奇跡も感じ取っていなかったようですしね。ただ、6歳とは思えない賢さを感じました。正直あれほどしっかりした子供というのは他に見たことがありません」


「彼には特別な何かがあるのでしょうか?」

「今は何とも。今回の会の中でもなにか変化が起きるかもしれませんから、判断はその後としましょう」

「わかりました。それでは早速始めてきます」



一方こちらはリアの元に戻ってきたリベル。

「どんなお話だったの?」

「えっと、お父さんはやさしい?とか、この間の会はどうだった?とかきかれた」

「なんだったんだろうね」

「うん、よく分からないや」

まあ大人びたところはあるがやっぱり6歳児である。




しばらくして、神父の話が始まった。

リアは若干興奮気味に、二度目となるリベルも興味深げに聞いている。

そしてエイミースは、前回がロケハン代わりになったのか、今回はおとなしい。

その後、話は何事もなく終わり、女神へのお祈りが始まる。


「さあ皆さん、このように両手を合わせて女神様に祈りを捧げましょう。いいですか、何かお願いするんではなく、女神様に感謝を捧げるんです。『無事に6歳になる事が出来ました。ありがとうございました』と」


神父の言葉を聞き、その通りに祈りを始める子供たち。そして後方ではその両親も。

教会内は物音ひとつない静謐な空気に包まれる。



――さて、ここでついに私の出番です。ノーラ・ノーラ様、今エイミースがこの祈りをお届けします!


ついに彼女が、エイミースが動き出す。いや、動き出してしまった。

前回のミスを取り戻すべく、そして更にノーラ・ノーラを喜ばそうと。

彼女は何と、ノーラ・ノーラに直通パスを繋げ、リベルの祈りを転送したのだ!



その祈りはノーラ・ノーラに届き、そして当然その様子は神父たちに伝わる。

「これは・・・まさか祈りが天に?」

「おお、女神様…私は今奇跡に立ち会っている!」



祈りが終わった。

目を開けた子供たちが見たのは、目の前で涙を流して立ち尽くす神父の姿。

「すみません皆さん。皆さんの真摯な祈りに感動してしまいました。皆さんの祈りが女神様に届きますように。それではこれで終了です」




誰もいなくなった会場で話す二人の神父。

「大変なことが起きましたね」

「ええ。あの祈りは間違いなく女神様の御許に届いていたのでしょう」

「やはり、リベル君ですか」

「その可能性が最も高いと思います」


「ではリベル君は?」

「いや、仮にそうだとしても、彼が教会から離れたところで生活しているというのは、きっとそれが女神様の御意思なのです。であるならば我々の役目は彼を教会に引き入れることではなく、彼を見守る事なのでしょう。本部へはそのように報告します」

「分かりました。では私も彼と接する際には他の子供と同じように」





そして天界では。


「ちょ、エイミースってばやりすぎよ!嬉しいけど!嬉しいけど!」

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