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最早お絵かきとは言えない

リベルはもうすぐ6歳になる。

フラー二とルミニーも当然リベルと同じ早さで年を取り、今では1歳半となっていた。

ふたりとも活発に歩き回り、それぞれがそれぞれの思い付きで、周囲の思いもよらない行動をとるようになっている。


もう一時も目を離すことができないお年頃であるふたり。

リベルの住む家は子供でも簡単に外に出ることができてしまうため、常に側について目を光らせている必要がある。


万が一にも事故を起こさないため、双子の動きが活発になりはじめたころから、ムウン隊長とリベル副隊長による協同監視体制となっていた。

おそらくこの体制はあと1年ほどは継続するだろう。


そしてもう一人、誰も知らない監視者がいる。

そう、我らがエイミースである。

エイミースはフラー二とルミニーそれぞれにタグをつけ、どこにいるのか常に把握できるようにしていた。


エイミースの本分はリベルを見守ること。

双子がリベルと一緒にいるうちは問題ないが、(はぐ)れてしまった場合でもエイミースはリベルの側を離れる訳にはいかない。

場所と状況は把握しておいて、誰かをそこに誘導できるよう準備してあるのだ。

最近忘れられがちであるが、彼女はできる天使なのである。


さて、そのような状況であるので、最近リベルは絵を描く時間をあまりとれない。

では腕が錆びついているのかといえば、実はそうでもない。

それは何故か。


リベルの絵画の腕前は、約1年にわたる経験を経て、写実に特化したものとなっていった。

見たものをそのまま絵にすることができるようになっていたのである。


実は、絵を描くうちにリベルにはある能力が発現していた。

それは、絵に描こうと意識したシーンをスナップショットのように脳裏に記憶する力。

名付けるなら、「スナップショット」能力といったところであろう。

その記憶をもとに、後から絵にすることができるのだ。


リベルの奥底には、転生時に与えられた加護の力が眠っている。

それらは本来、10歳となりノーラ・ノーラとの再会を果たしてから能力として発現することになっており、それまではロックがかかった状態となっている。


だが、長きにわたる絵画の創作活動により加護の力はリベルの中で刺激を受け続けた。

その結果、「理解力」「記憶力」「創造力」のロックに一部緩みが生じ、そこから「スナップショット」能力として早期に発現したのである。


発現したばかりのころは、細かいディテールは正確に記憶できておらず、絵画にも再現し切れていなかった。

しかし、何度も繰り返すうちに記憶の粗さは消え、ほとんど見たままを絵にすることができるようになっていった。


ではリアはどうか?

リアは、リベルとは違った方向性で著しい進化を遂げていた。


リアの絵は写実をベースとしているが、完全に見たままを描いてはいない。

そこにリアなりの解釈が入っており、それが絵に隠されたリアのメッセージとなっている。


ふたりの絵の違いとは・・・

現実そのままを写し取るリベル。これはいわば記録であり写真である。

それに対するリアの作品は絵画である。つまりリアが生み出したのは、芸術作品と呼ぶべきものなのである。


今から数か月前、二人の絵はリアの家に仕入れに来た商人の目に留まった。

商人は、リアとリベル、その両親から話を聞き、即座に絵の購入を持ちかけた。

そして、画材を販売してリベルとリアの絵を何点か購入もしていた街の炭屋とも話を付け、正式に自分の取り扱い商品として仕入れる事にしたのである。


そして商人からの絵の販売先だが・・・


リベルの絵は、研究機関に売られていった。

風景画よりも、動物や植物、虫などの絵が中心である。

細かい部分まで正確に描かれているため、研究材料や資料として非常に有用だったのだ。

商人が次に描く絵の対象を研究機関から要望を受け、それをリベルに伝えるというのが、売買の流れとして定着して現在に至る。


リアの絵は、新進気鋭の天才芸術家の作品として、芸術に素養がある貴族たちが中心に購入した。

特に一部の貴族たちからは熱烈な支持を受けており、「パトロンになるから紹介してほしい」といった打診もいくつかの家から受けている。

商人はリアの素性を完全に隠しているため、貴族たちは天才芸術家が6歳の少女であることをまだ知らない。


現在、パトロンとなることを希望する貴族の間で話し合いが行われている。

そこで権利を勝ち取った貴族が、リアとその家族に正式に打診して話し合うことになる予定だ。

リアも彼女の両親も、そのことをまだ知らない。


ここがジェーン王国だから、このように穏やかで理性的に話が進められているが、もしこれが他所の国だったら力のある貴族に強制的に召し抱えられていたところだ。

この点をとってみても、ノーラ・ノーラがこの国を転生先に選んだことは正解だったといえるだろう。



こうしてお絵描きを始めて約1年、6歳のリベルとリアは、絵のプロと呼ぶべき存在になっていたのであった。


東束は面白いと感じてもらえているって実感を欲しています。

続きが読みたいって方がいらっしゃいましたら、ポイント入れてもらえると大喜びすること確実です。


天照さまがお好きな方、カクヨムで彼女がメインキャラの一人として登場するお話をやってます。

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