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リアとお絵かき の3

「ちかくは大きい、とおくは小さい」

「ちかくは大きい、とおくは小さい」

呪文のように唱えながら、リベルとリアは地面に絵を描く。


二人は、朝から昨日もらった風景画と家の前の景色を見つづけた。

交互に何度も見比べた。

絵を見て、景色を見て、絵を見て、景色を見て・・・そして、とうとう気づいた。

同じ種類の木でも遠くにあると小さく見える!

農園で働くリアの両親も、離れたところから見ると小さく見える!


今まで当たり前のように見えていた景色。

今までそこに何の疑問も感じたことはなかったが、絵にしようとして見るとこんな不思議が隠れていた。

見ているからと言って視えている訳ではない。

ふたりがそのことに気付く、最初のステップになったのかもしれない。



「描けた!」

リベルが声を上げる。

「わたしもできた!」

そしてリアも。


お互いの絵を見て、

「「景色になっている!!」」

ついに縦並びではない、奥行きのある絵になったのだ。


もちろん遠近法としては初歩の初歩で、バランスも整っていない。

消失点など無い風景だから大小と配置だけでの表現である。

何度も描き込むことで、これから上達するに違いない。

あとは、街に向かう街道を描こうと思ったときに次の気づきが得られるかもしれない。


「ねえリベル、わたし紙に描いてみたい!」

「うん、ぼくもそう思った。これなら紙に描けそうなきがする!」


――あら、芸術家の卵さんたち、ついに紙に描くのね。


久しぶりのエイミースである。

リベルが絵を描くようになってからは、ただその姿を見守るのみ。

優し気な微笑みで見守るその姿はまるで守護天使。

一心に絵を描くリベルに対して妙なリアクションのしようもないだろうが、実にらしくない。


――誰かに天使であることを否定されたような気がするけど、きっと気のせいね。それよりもリベルよ。昨日は街に行く可愛い姿を記録できたけど、それまではずっと地面に絵を描く姿しか記録できなかったから、あとでノーラ・ノーラ様にクレーム付けられたらどうしようってずっと心配だったのよね。真剣なリベルは可愛いけど。上達する絵はずっと見てきたけど、描く場所が地面だったし、上手に描けてもすぐに消えちゃうし。リベルは可愛いけど。でもこれで大丈夫、紙に描くようになればきっとノーラ・ノーラ様も楽しくご覧いただけるに違いないわ。


独白が長い。何かが重い。

やはりエイミースはエイミースであった。


さて、家に入ったリベルとリア。

「お母さん、リアとお絵かきするからお絵かきセット出して」

「あらリベル、お絵描きするの?すぐ用意するからちょっと待っててね」

そう言って奥からお絵かきセットを出してくるムウン。

何やら木の板も一緒に持ってきた。


「はいこれ」

「ありがとうお母さん。この板はなに?」

「ふふふ、絵を描くときにこの板を紙の下に敷くと描きやすいわよ」

さすが小物や生活雑貨の作り手、実に細やかな気配り。

ゴウンは紙と炭があればもうそれで描けるものと思っていたが、柔らかい紙に炭を押さえつけるのだから平らな下敷きが必要となることにムウンは気づいていたのである。


「そっかー、お母さんすごいね。ありがとう」

「どういたしまして。はい、こっちはリアの分ね」

「ありがとう」

こうしてお絵かきセットに画板が追加された。

今は板だけだが、そこに首から下げるための紐が付くのはもう間もなくだろう。


庭に出た二人は、いつものお絵描きスポットに移動した。

そこでどうやって描こうかいろいろ考えた結果、小さな木箱を持ってきて、そこに座って描くことにした。

いつもより少し視点が下になったが、これまで毎日描き続けてきた二人にとっては大した問題ではなかった。


それよりも、真っ白な紙に向かう緊張感。

初めての紙と炭に手が震える。

頭の中は目の前の紙よりも真っ白になった。


それも暫くすれば落ち着いてくる。

ふうとひとつ呼吸したのち、いつものように描き始める。

最初は炭の硬さと紙の柔らかさに慣れずに線の太さや濃さが定まらなかったが、徐々に慣れてくる。


慣れさえすれば、土に描くよりも圧倒的に描きやすく、また表現の幅が広いことに気付く。

ひととおり思うがままに炭を振るったリベルとリア。

描き上げた絵を眺めると、描き始めのころのアラや全体のバランスの狂いがとても気になる。


次はもっと上手く描いてやると、無言で2枚目に取り掛かる二人。

そうして日は暮れていった。


「凄いじゃないリベル!」

「ああ、まさかいきなりこんな上手に描けるとは思わなかったな」


夕食後に両親に絵を見せたリベル。

反応は素晴らしいものだった。

誇らしげな顔から嬉しさ一杯の顔へと変わるルベル。

一方でゴウンとムウンは驚きの顔から嬉しさ一杯の顔に変わる。


それはリアの家でも同じで。

この素晴らしい絵をどこに飾ろうとか次は何を描くとか、弾む話しと幸せにあふれた両家族であった。

そろそろ例のアレお願いしてもいいでしょうか?

ポイントが欲しいんです。というか面白いと感じてもらえているって実感が欲しいんです。

続きが読みたいって方がいらっしゃいましたら、ポイント入れてもらえると作者が大喜びします。

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