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初めての街 の2

「エクレール都民ゴウンと息子のリベルだ」

「では都民証をこちらに」

都民証は領都エクレールの民である証。

壁の外で農園などを営む者も含む全ての都民に発行され、毎年の納税時に更新される。

そこには家長であるゴウンとその家族全ての名前が書かれており、身分証明書としての役割をもつ。


「確かに確認した。入ってよし」

「おじさん、ありがとう」

リベルの言葉に思わず表情が緩む門衛たち。

仕事柄硬い表情を保つ必要があるが、彼らも家に帰れば子を持つ父親である。


「お父さんの手伝いか。えらいな、えーとリベルだったか」

たった今確認したばかりの都民証に書かれた名前を思い出しながら応える門衛。

「うん、リベル、5さいです」

「お、ちゃんと名乗れてえらいな。中は人が多いからお父さんとはぐれないように気を付けるんだぞ」

「ありがとう、おじさん。行ってきます。」


手を振るリベルに笑顔で手を挙げる門衛たち。

後ろで番を待つ入場者たちもつられて笑顔になるリベル入場の一幕。

「よし、では次」

再び表情を引き締め、プロフェッショナルの姿に戻る門衛たち。

家に帰る際に再び門をくぐるであろうリベルとの再会を楽しみに、その後も業務に励むのだった。



「うわーー、人がいっぱい!家もいっぱい!みち広ーい!いろんなお店!なんか焼いてる!いいにおーい」

「あのひとすごいたくさん荷物もって力持ちー。あのおねえさんすごいきれい。いっしょにいる人剣をもってるかっこいい。あ、馬車きた。くだものいっぱいのせてる」


目に入る何もかもがリベルの興味を引く。

思わず口を出る言葉はまるで実況中継のようだ。

それでもゴウンの手をしっかりと握って離さないあたりはさすがリベルというべきか。


そんなリベルの姿を微笑ましげに見るゴウン・・・と、エイミース。

当然彼女がリベルのそばから離れるはずはない。

道中のリベルの姿を堪能し、門衛とのやり取りに感動し、街を歩く姿に見悶える。

今日も安定のエイミースである。


――はあぁぁぁ・・・イイッ!いいわリベル!初めて尽くしで最高に楽しそう!見てるこっちも最高にハッピーになりそうよっ!

いつにも増してテンションが高い。

もう少しでウザさの境界線を飛び越えそうだ。

落ち着け。



当然自分の後ろをついてくるそんな姿の天使になど気が付かないリベル。

本当、気づかないというのは幸せなことである。



「さあ、この店だ」

「ここは何のおみせ?」

「この店でムウンの作ったのを売ってるんだ」

「ふへえぇぇ、お母さんの・・・」

思わず変な声が出るリベル。

「ああ、そうだ。中に入るぞ」


店に入るゴウンとリベル。

「いらっしゃいま・・・ああ、ゴウンさん。いらっしゃい」

「やあ、どうも。新しいのを持ってきた。」

「丁度よかった。そろそろ在庫が寂しくなってきたところだったよ」

ゴウンはムウンから預かった袋をそのまま店主に渡す。


「ええーーっと、これとこれが10個ずつ、こっちが15個で、これが・・・」

ゴウンの目の前で検品が始まる。

状態と数量に問題がないことを確認し、

「今回もいつも通りだね。はい、じゃあこちらもいつもどおり25万ジェンだよ」

「ああ、確かに」

このやり取りも、リベルには興味深かったようだ。

一連の流れをキラキラした目で見つめていた。


「さて、じゃあ次に行くか」

「うん」

「また次回もよろしくー」

店主に見送られ店を出る二人。

街での用事はまだ終わらない。


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