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初めてのお手伝い

「リベルー、そろそろ起きなさーい。朝ごはんよー」

台所からムウンの声が響くと、布団の中のリベルがもぞもぞと動き出す。

「んんーーー」

小さくのびをするリベル。


――生リベルかわいいっ!!


すっかりお姉ちゃんのエイミースである。

その横をベッドから降り寝ぼけ眼でよたよたとリベルが台所に向かって歩いていく。


――見えていないのにキレイに真横を通っていったわね。

――最初から名シーンの予感っ!!


「おかーさん、おはよー」

「おはよう、リベル。ご飯の前におしっこ済ませて顔洗ってらっしゃい」

「はーい」


朝食がならんだテーブル。

席についた母子が食事を始める。


「「いただきまーす」」

パン、サラダ、ベーコン、スープ。

貴族などではないので豪華さはもちろんないが、バランスとれた良いメニューと言えるだろう。

そして当然味も、

「おいしー!」

である。


「おとーさんはもう森に着いたかなぁ?」

「そうね、もう狩りを始めてるんじゃないかしら。今日は昼までに狩りを終わらせて午後は家でのんびりするって言ってたから」

「じゃあお昼ご飯は一緒に食べられるね」


「んんーーー」

「どうしたの?」

何やら考え始めたリベルにムウンは声をかける。

すると「ピコーーン」となにかを思い付いたリベルが、


「僕もいっしょにおとーさんのおひるごはん作る――!!」


ムウンはニコニコと、

「まぁ、分かったわリベル。じゃあお昼ご飯はいっしょに作りましょうね」

「やったー!おとーさんにおいしいごはんを作る――!!」

こうしてリベルの初めてのお手伝いは食事のしたくに決まった。


――ああっ、交代してすぐにこんな素敵イベントがっ!

――マイヤ・マイヤ様、ノーラ・ノーラ様、感謝いたします。


当然、このような事で女神の介入などあるはずは無いのだが。

良いことがあれば神に感謝するのが基本スタンスなのである。


天使なので。



「今日はおかーさんといっしょにお昼ごはんを作るんだ」

「すごーい、リベルってごはん作れるの?」

「作ったことないよ。初めてごはんのお手伝いするんだー」


今日はリベルが リアの家に来ている。


最近はほぼ毎日、日中はどちらかの家で一緒に過ごしている。

こどもにしたらいつも一緒にいられて嬉しいし、親としては一日おきにでも家事や仕事に集中できる時間ができて助かる。


まさに全員ハッピーのwin-win状態。

自然とこれが当たり前の日常となっていた。


「リベルーー、そろそろおひるごはん作るわよーー」

外からムウンの声が聞こえる。

「あ、おかーさんだ、じゃあまたあとでね、リア」

「うん、がんばってね、リベル」


「ただいまー、おかーさん」

「おかえり、リベル。まず手を洗ってこようね」

手を洗ったリベルは台所に来ると、

「あらってきたよ。ぼく何をしたらいい?」


「そうね。リベルは野菜を食べやすい大きさにちぎってくれる?」

ムウンはリベルの前に洗った葉物野菜をいくつか並べた。

「いつもの食べやすい大きさでお願いね」

「わかったー」


リベルは野菜をちぎり始めた。

リアの家で採れた新鮮な野菜だ。

肉と野菜はほぼ両家の共有食材のようなもの。

これもまた、超win-winな関係である。


野菜をちぎるリベルの真剣な表情を見て、ムウンは微笑む。

「さて、と」

根菜、トマト、昨日ゴウンが狩ってきた鳥の肉などを細かく切り、スープを作る。

メインとなるのは肉と野菜がふんだんに入った炒め物。

これにリベルのサラダを加えたのが今日の昼食メニューである。


「できたー」

「ありがとう、リベル。上手にサラダが作れたわねー」

リベルは野菜をちぎることだけ意識していたのだが、それが皿に盛られると何とサラダになっていた。

それを見たリベルは大興奮だ。


「このサラダ、ぼくが作ったの!?」

「そうよ、このサラダはリベルが作ったの。リベルがひとりだけで作ったサラダよ」

「すごい、すごい、すごいーーー!!」


跳び跳ねるリベルを見るムウンも嬉しそうだ。

「はやくおとーさん帰ってこないかなーー」


とそこへ、

「ただいまー、今帰ったぞー」

「おかえりなさい、あなた」

「おとーさんおかえりー」


「今日は鳥とウサギが獲れた。隣にはもう置いてきたから、これはうちの分」

「ありがとう。後で捌きましょう。丁度お昼ができたところよ」

「このサラダ、ぼくがつくったんだよ、ひとりで!!」

「なにっ、それはすごい。すぐに昼食にしよう!!」


獲物をおいたゴウンは急いで外で汚れを落としてから奥で着替え、席につく。

「「「いただきまーすっ」」」

「サラダおいしーぞ、リベル」

「ええ、とってもおいしいわ、それに大きさも丁度よくって食べやすいわね」


両親の感想を聞いて、リベルは顔を真っ赤にして喜ぶ。

「ぼく大きくなったらごはん作るひとになる!!」

「あら素敵ね」

「そうだな。リベルなら立派な料理人になれるんじゃないか」



見えないということは幸いである。



そんな幸せ一杯の食卓の横、リベルを見る両親の視線のすぐ向こうには。

一連のリベルの可愛さにあてられた一人の天使が、とろけそうな表情でくねくねと身見悶えているのだから。




とはいえそれは地上界でのこと

このシーンは当然ノーラ・ノーラのブックマーク対象となるだろうから、このエイミースの姿もリベルの成長の記録と共に永久保存されることは間違いない。


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