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天使たちの引き継ぎ

リベルが4才の誕生日を迎えてから数日が経ったある日。

早朝、もうあと一時間ほどすれば両親のどちらかが起床し家族の一日が始まるであろう、そんな頃。


リベルのベッドの横には、微笑ましげにリベルの寝顔を見つめる秘書とメイドがいた。

シリースとエイミースである。


「代わってくれてありがとう、シリース」

「当初の予定より少し早まりましたが、そろそろ最初の報告をするのにいい頃合いです。丁度よかったですよ、エイミース」


その言葉を聞いてほっとするエイミース。

交代はもうあと1~2年先の予定だったが、早くリベルを側で見たいエイミースがシリースに交代を打診したのだ。


シリースが了承した理由は先ほどエイミースに伝えた言葉のとおり。

ノーラ・ノーラがそろそろ残務を終える頃だろうと推測したからだ。

このあたりの読みはさすが有能な秘書と言ったところか。

記録の提出だけでなく直接報告できるのであれば渡りに船と判断し、二つ返事で了承したのである。


「それでどうだった?あなたの目から見た勇者クンは?」

「そうですね、全体感としては『良い感じに普通』といったところでしょうか」

「?」


よく分からない風のエイミースに軽くうなずきながらシリースは続ける。

「知力や体力など、将来性は感じさせますが、普通の子供の枠から逸脱してはいません」

「また、魔法にしても同様に特別目立ったところはありません。これならばもう少し成長するまでは普通の子供として暮らしていけるでしょう」


「なーるほど、だから『良い感じに』なのね」

納得顔のエイミース。

「それでそれで?なんだか冷静に言ってるけど、生まれてから4年も側で見てたんだから、かなり情もわいたんじゃない?」


「そうですね。正直に言うと名残惜しく感じています」

そう言ってリベルの寝顔を見るシリース。

本人は自覚がないようだが、端から見たその表情は、孫を見るおじいちゃんそのものだ。


「そーかぁ・・・、じゃあ最後にここまでの成長の記録を一緒に見ましょうか。そのほうが申し送り事項も分かりやすいしね」

「それは何とも素晴らしい案です」


そうして、時間圧縮と超高速再生によりリベルが起きるまでの約2時間、シリースとエイミースはこれまでの4年間の記録を見ることとなった。

シリースにとっては振り返り、エイミースにとっては初めてのリベルである。



「おお、今のはもしかしてしゃべった?」

「初めての言葉は『むぅん』でしたね。母を呼んだのか父の言葉を真似たのか、一体どちらでしょうか・・・」

「両親のはしゃぎっぷりがすごいな」



「ここでいよいよ手を離しますよ」

「おお、とうとう掴まり立ち卒業かぁ」



「歩いた!!初めては3歩かぁ。ペタンと座り込んでからのぉ、なんてきれいなドヤ顔!!」

「少し前に戻してもう一度見てみましょう」



「この子が従妹のリアちゃんです」

「これが初対面だね、二人ともキラッキラした目をして」



時々シリースの解説が入り、いいシーンは視点を変えて何度か見返し、一時停止ありスロー再生ありと、お互い徐々にヒートアップ、それに伴いかなり濃い観賞会(引き継ぎ)となっていく。



そして4年間の全てを見終わった。

おじいちゃん目線のシリースによる魂のこもった引き継ぎで、すっかり感化されたエイミース。

そんなエイミースがリベルを見るその表情は、まさに年の離れた小さな弟を見るお姉ちゃんそのもの。



ここに天使たちの引き継ぎは完璧に成されたのである。


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