ノーラのたーん の4
リベルが4才になったところで記録が現在に追い付き、報告の検収は終了した。
「よかった。あの子がこちらの世界で幸せに暮らしている姿をみることができて安心しました」
「そうねー、わたしも安心したわ。それにずいぶんと入れ込んでる可愛らしいノーラちゃんも見れたしねー。このあと部屋で見返すんでしょう?」
うう・・・、バレてる。
「それにしても、これだけの期間一人の子だけの成長を見続けたことって今まであったかしら?なんだか人の親になったような・・・新鮮で不思議な感覚です」
天照さまがつぶやく。
ええ、ええ。私も激しく同意です、天照さま。
天照さまの言葉にうんうんと大きく頷いていると、マイヤ・マイヤさまが応える。
「そうね。親と違って直接導くことができないけど、ここからあの子の幸せな人生を祈りつつ、これからも一緒に見守っていきましょう。きっとあの魔王からこの世界を守ってくれると信じて」
あれ?
これってもしかして、これからも一緒に報告見る流れ?
いや、まさかね。
お二方ともお忙しいでしょうし・・・、毎回って事はないでしょう、きっと。
部屋に戻ると、シリースが私を待っていた。
「ノーラ・ノーラ様、エイミースへの引き継ぎが完了し、勇者の見守りから戻りました」
「お帰りなさい、シリース。交代はもう少し先かと思っていたけど」
「当初その予定でしたが、エイミースが待ちきれなかったようで、急遽早めることになりました」
若干の苦笑いとともにシリースが答える。
「あら、そうだったのね」
まあ、何というか実にエイミースらしいと言うか・・・
「業務に悪い影響がなければ問題ありません。その辺りはあなたたちの判断にお任せするわ」
私も20パーセントほどの苦笑い成分を含んだ笑みで答える。
「記録は全て見ました。何事もなく何よりでした。それで、あなたの目から見たあの子はどうでしたか?」
記録だけでなく、現場にいた担当者の生の声を聞くのは当然の事。
「ご覧いただきましたとおり、普通の子供との違いは見られず、ここまで健康で健全に成長しております。加護の発現はまだ見られません」
ふむ、このあたりは私の見解と相違ないようですね。
「好奇心は高め、知力・体力は平均より多少高めといったところでしょうか。生活環境が良い影響を与えていると考えられます」
このあたりも想定どおり。特に問題はなさそう。
「ひとつ気になった点が・・・おそらく単なる偶然かと思いますが、目が合ったと感じたことが数回。現時点での能力的に、私の事が見えるはずはないので、たまたまリベルが向けた視線と私が重なっただけかとは思いますが」
「まあ、そうでしょうね。加護を与えたとはいえそれ以外は普通の子供。長く側にいれば偶然そう感じる場面に遭遇することもあるでしょう」
特に問題はなさそうですね。
「ご苦労様でした、シリース。通常業務に戻る前に休息を取ることを忘れないよう」
「はい、ありがとうございます。それでは失礼いたします」
「さて・・・」
シリースが部屋を出るのを見届けた私は、リベルの成長の記録の見返しとブックマークからの総集編作成を始めた。
部屋の入口に「重要作業中につき立入禁止」の立て札を掲げてから。