ノーラのたーん の3
「今日はお誕生日のお祝いかしら」
ふたつ並べたテーブルの一番前の席にニコニコ顔のリベルが座っている。
所謂お誕生日席ね。
リベルと同じテーブルには両親、奥のテーブルにリアとその両親が座る。
奥のテーブルはリアの家のものを持ち込んだようだ。
くっつけて並べたテーブルにはいつもよりちょっと豪華な食事が並ぶ。
「こういったお祝いはどちらの世界でも同じですね。あの頭の上のはこの辺りの風習ですか?」
お誕生日席に座ったリベルは、頭に赤いとんがり帽子を載せている。
「ええ、天照さま。真っ直ぐに育って欲しいとの願いを込めて、毎年誕生日の子供に載せるんです」
それほど長い風習ではないが、このあたりでは子供が生まれるととんがり帽子を作り、毎年誕生日に頭に載せる家が多い。
子供が成長しても同じものを使いつづけるので、被るというよりは頭に載せて顎紐を結ぶタイプが主流だ。
これっていつから始まったんだっけ?
確か始まりはそんな大した切っ掛けではなかったような気がする。
まあ風習って大体そんなものなんだけど・・・
でも帽子を載せてニコニコのリベルがっ!
何て素晴らしい風習!
今日から私公認です!
ええ、公認しますとも!!
もちろん今日は終日ブックマーーーク!
『リベル、お誕生日おめでとう。今日からリベルは何歳になったのかな?』
『2・・・じゃなくって、えーっとぉ・・・ん、3さーい!』
『『『『『3才おめでとーーーっ!!』』』』』
始まったようだ。
みんな笑顔だ。会話が弾み、食事も進む。
こんな幸せな世界がずっと続いていって欲しい。
「魔王さえ・・・」
無意識に口に出していたようだ。
「そうね、ノーラちゃん。でも、私たちにこれ以上干渉することはできないのよね。残念だけど」
「ええ本当に。神が干渉できるのは創世記までで、それを過ぎてから大きな干渉を行うと世界が不安定になる。神のジレンマというものですね」
「どれくらいの干渉までが大丈夫かもはっきりしないところが困るのよねー」
「全く手を出さないと滅びが始まってしまいますし、やり過ぎると世界のどこかで反動が起きてしまう。」
「そうなんですよね、天照さま。小規模な地震や風雨くらいで済めばいいんですけど、大災害レベルの反動が起きる場合もありますし・・・」
「魔王クラスへの干渉だと、私たちが世界を滅ぼす事になっちゃいそうねのよねー」
幸せな光景の横で神々が嘆く。
こんな時、つくづく感じる。
本当に、神とは不自由な存在だと・・・