ノーラのたーん の1
「やあっと追い付いたーー!!」
魔王対策に時間を割かれたせいで滞っていた管理業務だったが、勇者を送り出してからひたすらこなし続け、ついに!
ある程度は各担当者が進めているとはいえ、私の決裁や実務が必要な案件も相当数ある。
それらを一つずつ終わらせている間にも追加案件が次々と舞い込み、残務が減っているのか疑問に思う日々。
長い戦いだった・・・
それもすべて、かわいいあの勇者の成長を見守るその時間を作るため。
それだけを心の支えに今日まで頑張ってきた。
うん、私頑張った。本っ当に頑張った。
マイヤ・マイヤさまと食べたコンビニスイーツ、もう何年も前のような気がする・・・
「って、あれから4年経ってるぅ!!」
暦を見て愕然とする私。
いや確かに未だかつてない集中力を発揮していた気はする。
気はするが、しかし・・・4年!?
まさか日本で天照さまの言ってたアレ?
部屋を見回し不審なものがないことを確認し、来訪者がないか入口を注視しつづける。
だが、ヘルメットをかぶって「大成功!」のプラカードをもったあの人が現れる気配はなかった。
・・・まあ当然よね、ここ神界だし。
「はあ、少し休もう」
疲れと驚きのせいか、あまりにしょうもない事を考えてしまった自分にショックを受ける。
もちろん睡眠をとる必要はないのだが、気持ちをリセットするために少し横になることにした。
そして
・
・
・
「よし、わたし復活!」
落ち着きを取り戻した私は、これからの事を考える。
「まずはマイヤ・マイヤさまに報告しないとね。そしたらいよいよ・・・」
「勇者の4年間を一気見よ!」
拳を握り高く突き上げた私。
無意識に顔がニヤけていることに気づいたが、もう止められない。止めるつもりもない。
取り戻した落ち着きは一瞬で吹き飛んだ。
・・・周りに誰もいなくてよかった。
「マイヤ・マイヤさま、ノーラ・ノーラです。今よろしいでしょうか?」
「入っていいわよー」
マイヤ・マイヤさまの許可をいただき、マイヤ・マイヤさまの部屋に入る。
「失礼します」
そこには、可愛らしいテーブルセットに座るマイヤ・マイヤさま、そしてその向かいに・・・え?
「天照・・・さま?」
「久しぶりですね、ノーラ・ノーラさま」
久しぶりの天照さまの微笑みが眩しい。いや、そうじゃなくって・・・
「お久しぶりです、天照さま。先日は大変お世話になりました」
よし、いきなりで驚いたけど不自然さを出さずに挨拶を返せた。
「こちらにいらしているとは思いませんでした。もしかして何かあったのですか?」
「いえ、そういうのではないんですよ。あれから時々マイヤ・マイヤさまとお茶するようになって、今日もご招待いただいたんです」
なにそれずるい・・・
「そうだったんですね。知らなかったのでちょっとびっくりしました」
「ふふふ、『ドッキリ大成功』ですね」
ぶっ!!
ヘルメットでプラカードな天照さまが脳裏うぉ・・・破壊力っ!!
「それでノーラちゃん、今日はどうしたの?もしかしてお仕事片付いた?」
おっと、仕事モード仕事モード。
キリッとした表情をつくり、
「はい、魔王対策で滞っていた業務がようやく片付きましたので、その報告に参りました」
「またそんな堅苦しい言い方して。ねえ天照ちゃん、堅苦しいわよねえ」
「いえいえ、真面目で好ましく感じますよ?」
よしっ
「そお?でもほんとはこんな感じじゃなくってもっとかわいいのよ。そうそう、この前なんか・・・」
「ちょストップ!!天照さまに何言うつもりママ!!」
「ね、かわいいでしょう?」
必死に止めようとする私を指差して微笑むママ。
「そうですね。この姿も大変好ましく感じますよ」
うう、やっちゃった・・・