第3章~セミが捕れなくなって
てつや君が、3匹目のセミを捕まえたところで、
「ゴーン、ゴーン、ゴーン」
と、夕方の5時を知らせるお寺の鐘が鳴りました。
すると、のりお君が慌てた様子で、
「僕、もう帰るね…」
と、言うので、てつや君がすかさず、
「ねえ、君はどこに住んでるの?」
と、聞くと、
「あっちの方!」
と、言って、墓地の高台の方を指差したと思った瞬間、奥の方に走って行ってしまいました。
仲間のまさのぶ君が、
「なんだあいつ!変なのっ!」
と、言うと、てつや君が、
「俺達もそろそろ帰ろうぜ」
と、言ってきました。
その日は、それで解散になりましたが、自分は帰り道で子供の幽霊の噂を思い出しました。
「…もしかしたら、あれが噂の子供の幽霊かな?」
と、思いましたが、
「そうだとしても、一緒に遊んでいて楽しかったなぁ…」
とも、思いました。
その週の水曜日、よしひこ君と話しました。
「実は、墓地に行って仲間とセミ捕りしていたら、夕方の4時を過ぎちゃってさぁ~」
「ふ~ん、それで」
「そしたら、オレンジ色の服の子が、話しかけてきて、一緒にセミ捕りしたんだよ」
「えっ、本当に!」
「もしかしたら、あれが噂の子供の幽霊なのかな~?」
…と、話したところ、
「えっ!見たの、それが僕が言っていた、子供の幽霊だよ!」
「やっぱり!4時過ぎにいきなり現れたから焦ったよ」
「僕も最初は驚いたんだけど、1回だけ一緒に遊んだんだ」
「じゃあ、うちら全員1回は見たんだね」
「だけど、その後は1回も会わないんだよな~」
「でも、次は会えるかもしれないね。」
「今度、僕も一緒にセミ捕りに行くよ!」
と、いう話になりました。
自分は、その話を聞いて、何でよしひこ君が子供の幽霊の事を知っていたか、理解しました。
要するに、先客だったわけだ。
翌日、自分と仲間3人とよしひこ君で、午後3時過ぎに、いつものルートで墓地に侵入しました。
そして、セミ捕りをしたのですが、その日に限って1匹も捕まえられない…。
時期的にも、夏休みの後半になっていたので、セミの声がいつもより小さく感じました。
そして、夕方の4時を迎えた時に、のりお君が話しかけてきたのです。
「ねえ、セミ捕りして遊ぼうよ」
そう言うと、よしひこ君が、
「やあ!久し振りだね~、もう会えないかと思ったよ~」
と、答えました。
その後、仲間3人が口を揃えて言いました。
「もう、セミはなかなか捕れないから、墓地を下って行って、お寺の境内で鬼ごっこしようよ」
と言うと、のりお君は一瞬嫌な顔をしましたが、皆と遊びたいからか一緒に境内に行くことになりました。