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最終防衛ライン

「いーーやーーでーーすーー!!」


私は珍しく全力で拒否していた。

所謂駄々をこねていた。


「マリア。可愛い僕のマリア。そんなにお風呂が嫌いならシャワーだけでもいいよ。」

「本当ですか?それなら私一人で入ってもいいですか?」

「それはダメだね。」

「いーーーーやーーーー!!」


ご飯をあーんされるのも、着替えを手伝われるのも、やたらと抱っこされるのも、頬キスされるのもなんとなく異世界だし、幼女だからこんなもんか、と思っていた。

だが、風呂に一緒に入るのは何が何でも阻止しなければならない。

大人の精神を持つものとして死守しなければならない領域である。


私ははしたなくも床に寝てジタバタする。

そんなことをしたら汚れるのでローゼはさらに私を風呂に入れようとする。


究極の悪循環が誕生した。


けれどやはり190センチは超える長身の細マッチョに勝てるはずもなく、最終的に俵のように担がれて強制連行される。


未来の乙女に対してひどい所業である。


「可愛いマリア、君は小さいから溺れたら大変だろう?誰か大人が見ていないとお風呂には入れてあげられないよ。」

そう言って足早に廊下を歩く彼はどうせまた、甘えられて嬉しいとか思っているんだろう。顔がにやけている。


この世界のお風呂は脱衣所とお風呂場が一体化したような感じだった。

服を脱ぐところとお風呂場の間は植物の蔦で編んだような素材の仕切りで区切られている。

人が1人余裕で生活できそうな大きさのお風呂場に思わず遠い目をしてしまった。


テキパキと私の服を脱がしてくるローゼに「私は幼女。私は幼女。」と心の中で唱えるしかない。

確かに前世の記憶でも世の子供はある程度大きくなるまでは大人と一緒にお風呂に入っていた。

だからこれは仕方ないことなのだ。

たとえ精神的に大人でも、身体的に1人で入浴するのは危ないのだから。


そうやって自分に言い聞かせていたのだが、最終的に薄いバスローブの袖と丈を切り落としたみたいな服を着せられて戸惑う。


「ローゼ、この服はなんですか?」

「ああ、これは入浴着だよ。家族だけだし、嫌いなら脱いで入ってもいいけど。」

「いいえ、嫌いじゃありません。大好きです。」

「?そうなんだ。」


いつの間にかローゼも入浴着とやらを着ていた。

ガッツリ太ももの中間まで足が出ているのに古代ローマの青年のようにシュッとしているのはさすがだ。

イケメンは生足も綺麗だと言いたいのか?ああん?

とはいえ、私も幼女らしい華奢な体型なので生足も全く問題ない。

ビバ、幼女の新陳代謝!動けば燃焼できる体!


ローゼに抱っこされて浴室の方に向かう。

浴槽は丸くて金持ちの家のジャグジーみたいな形をしていた。

床と壁は全面半透明のタイルが貼られていて、色とりどりのタイルが美しい模様を表現している。


ローゼは私を浴槽の前に下ろすと、手桶を使ってお湯をかけてくる。

ちょっとぬるいけど、刺激に弱い幼女にはちょうどよいくらいの温度だ。

そのままいい匂いのシャンプーで髪を洗われて、心地よくてぼーっとしているうちに体を洗うのも終わっていた。

私を洗うのと同時進行で自分の体や髪を洗うという職人技のような動きを見せたローゼに抱えられて湯船に浸かる。


「はっ!またやられた!」

ローゼの胸に背中を預けて、伸ばした足の上に座らされたところで我に返る。

この男は私をぼーっとさせているうちにさっさと世話を焼いてしまうのだ。


「ふふ。入浴のお供にポプリはいかがですか?姫。」

ローゼは浴槽のフチに置いてあった木の桶を引き寄せて私の目の前に浮かせる。

中には花びらが詰め込まれたポプリが何種類か入っていた。

やばい、この世界。

ポプリが浴槽の脇に常駐してるとか、女子力高すぎる。


「どれがどんな香りか全然わかりません。」

「見た目で選べばいいよ。」

そう言われてポプリをじっくりと見比べる。


「これがいいです。」

「……マリア、いい子すぎて食べちゃいたいくらい可愛い。」

「やっぱりこれにします。」

「ああ、それはドロドロに甘やかしてほしいというおねだり?」

「……こっち。」

「愛しい人。君が求めてくれるならいくらでも。」

「あーっ!これ!これにする!」

「マリア、僕にとどめを刺すつもりかい?」


「全部ハズレとか聞いてないんですけど!?」

私は大量の砂糖で煮詰められてるような気分になってきて選ぶことをやめた。


ローゼは恍惚とした笑みを浮かべて、ドロドロした甘い目で私を見ている。

幼女に、壮絶な、色気を、振りまいては、いけません!








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