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色々なドレス

人間は衣食住が揃っていればまぁなんとかなる。

私の場合ありがたいことに、食と住は揃っていた。

圧倒的に足りないのは衣服である。


というわけでリリは屋敷に商人を呼んだ。

さすが貴族、予想はしてたけど本当にそういう買い物の仕方をするらしい。


商人が来るまで、私はリリに散々言い聞かせられた。


「いいですか、マリア。商人の前ではできるだけわがままな子供を演じてください。先程の10倍くらいわがままを言ってください。さもないと、ブーケット家には天使のような性格の女の子が住んでいると噂されてしまいます。」


いやいや、リリさんや。

親ばかもそこまで行くと怖いから。

もはや狂気を感じるから。


まあ、しかし、昨日養子になったばかりで変わった子だと噂されるのは良くないと思うので精一杯アドバイス通りにしようと思う。



やってきた商人は狐のような糸目の男性と、小動物のように目がクリクリした少年だった。

なんとも顔の個性が両極端な2人である。


「「本日はお招きいただきありがとうございます。」」


きれいに声を揃えてお辞儀をする様子は息ピッタリだ。

なんだかやり手に見えてきた。


「はじめまして、お嬢様。本日はお嬢様のドレスをということでしたので、おすすめの商品をお持ちいたしました。気になる商品はございますか?」


目の前には色とりどりのドレスが並んでいた。

ドレスと言っても、パーティーで着るようなフォーマルなものから普段着るようなカジュアルなものまで色々ある。


なるほどさっぱり選べないな。

私は記憶がないのだから、自分がどんな色が好きだったかなんて覚えていないのだ。

好きな色なんて、経験によって裏付けられることがほとんどではないだろうか。

たとえば好きなキャラクターが赤いふくを着ているから赤が好きだとか、夏の海を思い出すから水色が好きだとか、黒が似合うと言われたから黒が好きだとか。

それなのに、私ときたら2日分の記憶しかないのだ。


どうしよう。

私はきっと何時間たっても選べないと思う。

どうしよう。こんなときわがままな子供はどうするんだろう。


「マリア?どうしたの?」


ローゼは固まって動かない私を不思議そうに覗き込む。

私は我に返ると商人に聞こえないように耳打ちをした。


「選べないの。好きな色、覚えてないから。」


「じゃあ僕たちがドレスを選んだら、どんな色のドレスでも着てくれるってことだね。」


ローゼは嬉しそうに笑うと立ち上がる。


「リリ、マリアは僕たちにドレスを選んでほしいそうだよ。」

「おやおや、私達のセンスを試すおつもりですか?」

「う、うん。そうだよ。」


そう言われると、自分がなんだかとても生意気な小娘のように感じてきた。

でも、これが彼らの言うわがままな子供なのだろう。


その後2人が持ってきたドレスが青と緑ばかりで笑ってしまう。

けれど、たった2日しかない記憶の中でラピスラズリの青とヘーゼルの緑が鮮明に色づいているのは確かであり、結局のところ私は好きな色のドレスを買うことになったようだった。

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