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朝に弱い

「ん?あれ、いつの間にか朝ごはんができてる。これは魔法?」


「あははっ!僕のお姫様はずいぶんと朝に弱いらしい。起こしてもすぐ寝ちゃうし、顔を拭こうとすると威嚇するし、着替えの途中も寝ようとするし、ここまで来るの結構大変だったんだよ?」


どうやらローゼが散々お世話してなだめすかして食堂まで連れてきたらしい。


「えっと、お手数おかけしてすみません。」


「全然?むしろいつもしっかりしたマリアが甘えてくれてるみたいで嬉しかったよ。僕は君の父親なのだから、こんなことで謝らなくていいんだ。」


「はい、ローゼ。」

私が初めて愛称で呼ぶと彼は心底嬉しそうに破顔した。




「おはようございます、マリア、ローゼ。」


リリが食堂に入ってくる。

栗色の髪はまだセットされていないのか前髪が下りていていつもより幼く見える。

彼の神秘的な瞳が隠れてより穏やかな印象を与えた。


「おはようございます。」

「おはよう。」

私とローゼが返事をすると彼は座っている私の高さまで腰をかがめて頬に軽いキスをする。


「僕にキスはないのかい?」

「ふふ。あなたはマリアからもらってください。」


「マリア!」

ローゼが期待するような目で私を見る。

どうやら私がキスをする流れのようだ。

仕方なく肩を引き寄せてかがんでもらうと、ローゼの白い頬に口をつけた。


「ありがとう可愛いマリア。」

ローゼはお返しのように私の頬にもキスをした。


「マリアは頬へのキスの意味を知っていますか?」

私達の様子を見守っていたリリが尋ねる。


「知りません。」

「頬へのキスは親愛の証です。主に家族や親しい友人にします。この国では一般的な挨拶ですが、そうでない国もあります。それに、この国の人でもこのスキンシップが嫌いな人もいます。マリアは嫌ではありませんでしたか?」

「はい、嫌じゃありません。」

「ではこれからも続けることにします。」


リリの声は落ち着いていて穏やかで聞き惚れてしまう。

彼の静かな雰囲気に包まれるような気分になる。


「さあ、食事にしましょうか。」

その声に我に返ると眼の前にはすでに食事が取り分けられていた。

ローゼが取ってくれたようだ。


「ありがとうございます。」

「いえいえ、むしろ光栄です。お姫様。」

いちいちキザったらしいのもこの国の文化なのだろうか。

それともローゼがキザなだけだろうか。


「さあ、目を閉じて。食事の前はお祈りをしますが、言葉は私が言うのでマリアは目を閉じて私とローゼの手を握っていてください。言葉の内容は神様に感謝します、といった意味です。」


「大丈夫。またマリアが泣いてしまっても涙が止まるまで抱きしめていてあげるからね。」


「なっ!昨日が変だっただけで、今日は泣かないから!」


広い机なのに手がつなげるほど近くに座った私達はクスクスと声に出して笑うのをこらえて、神様に感謝した。









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