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領主の妻の夫

リリーさんは私の前に契約書をおいた。


「これがマリアが養子になるための契約書です。文字は読めますか?」


そう言われて契約書を覗き込むとさっぱり読めなかった。

契約書には絶対に日本語ではない文字が書かれている。

しかし、話している言葉は日本語だったので期待していたのだが。


「ここには、マリアをリリー・ブーケットとロゼッタ・ブーケットの子とする。と書かれています。」


「あの、一つ聞いても良いですか。」


「なんでしょう?」


「いつの間にリリーさんもお父さんになろうとしてるんですか?というかそれはありなんですか?」


「ええ。保護者二人以上の署名がなければ養子を取ることはできません。私とローゼは同じ妻を持つ夫同士ですから最も無難な組み合わせと言えるでしょう。」


「同じ妻を持つ……、はっ!そういえばリリーさんの妻の夫がロゼッタさん?え?どういうこと?」


さっきは聞き流していたけど、よく考えたらロゼッタさんの説明は意味がわからない。

だって、それはつまり


「マリア。もうずっと昔から、女性は何人ものの男性と結婚できるのですよ。忘れてしまいましたか?」


やばい世界に転生してしまった。

忘れたも何も、こんなぶっとんだ常識知らない。


「怖がらなくても大丈夫だよ。忘れていても僕たちがいくらでも教えてあげるからね。マリアはまだ幼いんだし、焦らずゆっくり覚えていけばいいんだ。」


ロゼッタさんが優しく私の頭を撫でる。

私の顔がこわばっているのを、記憶がないことを不安に思っていると勘違いしたらしい。

まあ、たしかに私の体は5歳くらいに見えるので、結婚なんてまだ先の話だろう。

とりあえず子供時代を生き抜くために父親が2人という状況に納得しなければならないようだが、まあ、2人とも優しいしイケメンだし大事にしてくれそうなので良いだろう。


「あの、契約します。」


「ありがとう、マリア。」

「では、マリア私とローゼの手を握ってください。」


2人が私に手を差し出す。

若々しく整った顔立ちの2人はとても父親には見えない。

いつかこの人達を心からお父さんと呼べる日がくるのだろうか。


まるで子供のような不安を少しだけ感じながら、私は手を重ねた。

リリーさんが呪文のようなものを唱えると契約書が青く光る。

体がポカポカしてきて不思議な感じがする。


「これで終わりです。」


リリがそう言うと契約書は光るのをやめた。


「マリア、絶対幸せにするからね。」

ローゼが私を抱き寄せて目元をぬぐう。


ポカポカと温かいのが幸せで、誰かと繋がっているという感覚が嬉しくて、私は泣いていたらしい。

せっかくローゼがぬぐってくれるのにいつまでも涙は止まらなくて、リリが頭を撫でる手が優しくて、私はいつの間にか眠ってしまった。



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