人は見かけによるときもある5
もうすぐ夏が終わる。
リリの誕生日から始まって、ローゼのいない日々を過ごした夏。
その終わりはローゼと共にやってくる。
「ああ、マリア。君に会える日をどれほど待っていたことか!私の可愛いお姫様。もう片時も君を放さないからね!」
夏の終わりのもの悲しさなど吹き飛ばす、騒がしい男が帰ってきた。
「ろ、ローゼ。いきなりはびっくりします。」
玄関ホールでローゼを待っていたら、馬車の到着とともに凄い速さで何かが近づいてきた。そしてあっという間に私を抱き上げる。
いきなり視界が上がってかなり驚いた。
「ああ、ごめんね。マリア。君が望むならどんな罰でも受けよう。」
「ば、罰?いや別にそこまで怒ってないです。」
「マリア!相変わらず君はなんて心優しいお姫様なんだ!ではこのまま君を抱き締めて、側にいることを許してくれるかい?会いたかった。会いたかったよ、マリア……」
相変わらず息をするように出てくる芝居がかった大げさな言葉は、段々切なさを帯びてきた。
泣いているのかと思って首元に埋められた顔をのぞき込むと、さすがに泣いてはいなかった。しかし、相当にしょんぼりした顔である。
そのあまりの切なさに、心臓がギュッとした。
ローゼの背に回した手に力が入る。
「おかえりなさい。」
「ただいま、マリア。」
「ふふ。すっかり2人だけの世界ですね。」
「ああ、リリ。君もこの世界に入るかい?」
「ええ。では失礼して……おかえりなさい、ローゼ。」
「ああ、ただいま。」
しばらくローゼとハグしていたが、ここにはリリもいたのだった。
忘れられて拗ねた様子もなくただただ微笑ましそうに見ていたリリは、快くローゼを出迎える。
ローゼは私を片腕に危なげなく移動させると、開いた手でリリとハグをした。
「マリアは背が伸びたね。」
「もしかして重いですか?」
「ううん、羽のように軽い。」
「それ、ほんとに言う人いるんですね。」
「じゃあ、羽のように軽くなくて良かった。風に飛ばされず、僕の腕の中にいてくれる。」
「うわ、久しぶりに聞くとすごいです。」
私が定番のセリフを気に入らなかったと思ったのか、変化球で甘くささやく。
あまりに甘いセリフに背筋がムズムズする。この感覚も久々だ。
耳を赤く染めた私に気づいたリリが微笑む。
ちなみにリリの優しい視線は首元がくすぐったい感じがする。
どちらにせよお父様たちの言動に平然と対応できる日は遠い。




