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恋多き人々10

「とまあ、男は結婚に夢を見るべきではないとよく言いますが、本当にそれを体現してしまったわけです。」


なんだその言葉は。本当によく言うのか?

まあ、それだけ夫たちに対する妻の愛情に格差があることは普通であるということだろうか。

リリも少し情けない笑みを浮かべているものの、現状に悩んでいるわけでもなさそうだ。


「ローゼとか3番目の夫を憎く思ったりしないんですか?」


彼らが結婚しなければリリへの愛情は続いたかもしれないのだ。

いくらリリが穏やかな性格だとしても、少しは邪魔だとか思ったりしなかったのだろうか。


「そうですね。あまり他の夫に対して嫉妬の感情を覚えたことはありません。そういう恋愛の形だったのか、それとも本当は恋など幻想だったのか、今になってもわかりません。」


リリは私の髪をとかすように頭をなでた。

大きな手が私の上を何度も往復する。


「マリアの実の親たちはよほど仲睦まじかったのでしょうか。私と妻のことでこんなに心配させてしまうなんて思いませんでした。」


おっとぉ。この言葉にはどう反応すればいいんだ?

私は現世の実の親なんているのかどうかもわからないし、前世のことを言う気はない。

リリとお母様の関係が気になったのはイケメン=愛されるという前世の一般論のせいだ。

前世の記憶があるなんてちょっとおませな子供の発言としての許容範囲を超えていることは平和ボケした頭でも分かる。

とにかくごまかせ。ごまかすんだ私。


「いや、あの、えっと、実の親のことは相変わらずさっぱりわかりません!けど、リリはカッコいいから、お母様が放っておくなんて考えられなかったのです!」

「……マリア!」


ヨッシャー。

相変わらずチョロすぎるぜ、お父様。

私は感極まったようにギュッと抱きしめてくるリリに心のなかでガッツポーズした。

もう私の実の親のことなんて跡形もなく忘れたに違いない。

今はもう娘にカッコいいと言われた事実で頭の中がいっぱいだ。


でも実際、こんなに格好良いリリに興味がなくなるなんて信じられない。

この声と顔でもって優しく愛を囁かれたら何度だって恋に落ちそうなものだ。

それを興味ないと切り捨てて、他の男のもとへ走るなんて。


改めて思うけど、異世界の男子、レベル高い。

生存競争が激しすぎる。


「マリア、私のことはあまり気にしないでください。あなたは女の子ですから、いくらでも夢を見ていいのですよ。」


リリは私が達観したような目をしていたのを、結婚に夢見る少女に仄暗い現実を突きつけてしまったと勘違いしたようだ。


「気に入った男性と好きなだけ結婚して、幸せを追い求めてください。」


おっと、どうやらこの世界の幸せな結婚像は私の思っていたものとは違うようだ。

確かに女性の方からすれば愛されるのは当然で、いかに良い男と結婚するかということのみが重要なのか。

いくらでも結婚できるから、合わなかったら他の男を探せば良いと。

そんなんだから、リリみたいな人が当たり前のように世の中に溢れかえっているのだ。


別に女性が悪いわけでもない。

女性が少ないこの世界で重婚をしなければならないという役割を引き受けている結果である。

違和感を覚えるのは私が前世の常識を引きずっているせいだ。


「私にそんなことができるでしょうか。」


あと何年すれば、私はこの世界に馴染むことができるのだろうか。

私が結婚するときには前世の常識など忘れて、現世を受け入れているのだろうか。


「まだ先の話です。それに、マリアは常識に囚われない柔軟な子ですから、人とは違う夢を見るのかもしれませんね。」


その言葉に少しだけドキッとする。

まるで私の中に違う結婚像(前世の常識)があることをわかっているかのようではないか。

けれど、見上げた先にあるリリの顔は娘への情で溢れていて、こわばった心はすぐに腑抜けに戻った。



そうだ、昔話のお礼に娘から父親に最大級の褒め言葉を贈ろうではないか。


「私、大きくなったらお父様みたいな人と結婚したいです。」


前世での常套句は異世界でも通用するに違いないという、安直な考えからの行動だった。

顔を上げてリリの顔を覗き込むと驚いたように固まっている。

たっぷり5秒固まった後、彼の顔が近づいておでこにキスが降ってきた。


「ありがとうございます、マリア。けれどその言葉を私以外のお父様に言ってはいけませんよ。」


リリは複雑そうな曖昧な笑みを浮かべていた。


「……どうしてですか?」


何か失礼にあたるとか?


「……マリア、世の中には知らない方が幸せなこともあるのです。」

リリは真剣な顔で諭してくる。

そんなことを言われたら余計に気になるではないか。


「ええ?今の言葉の何がそんなにいけないのですか?私は常識知らずだから教えて下さい。」

「……ダメです。大人になったら妖精に聞いてください。」


……薄々気付き始めていたけど、その妖精というやつは子供に聞かれたくないことを聞かれたときにはぐらかす決り文句だ。


「妖精なんていません!」

「いいえ、います。マリアは忘れてしまったのかもしれませんが、妖精は生まれつき見える人と見えない人がいて………………」


その後、バイオラさんが休憩から戻ってくるまでリリの妖精談義は続き、結局私ははぐらかされてしまったのだった。





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