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貴族≠パリピ3

リリの誕生日まであと3日。

私は再び使命感に燃えていた。

誕生日といったらプレゼントをあげなくては!

中途半端に前世を覚えているせいで、プレゼントをあげた記憶はないけれど、そういうものだとは知っているのだ。

しかし、私は財力もなければ常識もない無力な幼女なので、なにを上げればよいかなんて見当もつかない。


「ローゼ、リリへのプレゼントはどんなものにすればいいんでしょうか?」


困ったときは保護者に聞けばよいのだ。

幸い彼らは仲がよく、付き合いも長そうだから良い案があるに違いない。


「それはマリアがリリに送るプレゼントってこと?」


ローゼは顔にかかっていたブロンドヘアーを耳にかけて、盤上から顔を上げる。

ローゼに相当手加減してもらいながら昨日のボードゲームをやっていたのだ。


「はい!」

「うーん。相談にのってあげたいけど、女の子がプレゼントを送るなんて聞いたことがないからわからないな。ごめんね。」


珍しくバッサリ断られた。

女の子はプレゼントを送らないなんて、これが文化の違いというものだろうか。

きっとこの世界には日本のようなバレンタインデーも存在しないのだろう。

でも毎日がマンネリ化しがちな幼女にとしては、プレゼント選びなんて楽しいイベントを逃すわけにはいかない。


「私が贈り物をしたら変ですか?」

「相当変わっていると思うよ。」


ローゼが考えを整理するように手の中のコマを弄ぶ。

私が次に何を言い出すのかと身構えるようにこちらを見た。


「子供から親に贈り物をするのは?」

「まあ、男の子ならそういうこともあるだろうね。」

「どうして女の子はダメなんですか?」

「だめというか、本当にそういう文化がないんだよ。」


だったらそういう文化を作ろうじゃないか。

私の暇つぶしのために。

もちろんリリは大好きだし、単に贈り物をしたいのも本当だ。


「じゃあ、私と一緒にどんなプレゼントにするか考えてください。」

「……わかったよ。ただし、あげるのはパーティーの後にしようね。はー、感動しすぎて暴走するリリが目に浮かぶようだよ。」


なんでため息なんてつくのさ。

ローゼのときにも何か用意するつもりだから、気落ちしないでほしい。

父親差別はしないのである。


「でもどうしましょう。私があげられるものなんて手紙くらいしか思いつきません。それに紙もインクもリリが買ったものだし……。」

「手紙だって!?」


今日はなんだか落ち着かないローゼである。

そんなに声を荒げるようなことを言っただろうか。


「手紙はダメですか?」

「いや、……ここは仮にマリアを男の子だと仮定しよう。男の子が、父親の誕生日に、手紙を送る。……うん、素晴らしい案だと思うよ!紙とインクは僕が買うよ。」


女性は手紙も送らないのか。

まあ、いいや。

どうせ私は異世界の記憶を持つ女。

ちょっとおかしくてもしょうがない。


「あとは花束とかですかね?あ、でも庭の花もリリの物か。」


お金がないので手近なもので済ませたいがそもそもこの屋敷のものはほぼ全てリリの所有物なのだ。


「じゃあ、ポプリなんてどうだい?お風呂に入れようと思って僕が個人的に花を乾燥させたものがあるんだ。」


なんと、あのお風呂のポプリはローゼが作っていたらしい。

父の女子力が高すぎて娘としては驚くしかない。


「でも、それってただローゼのものをリリに横流ししているだけなのでは?」

「香りを組み合わせるのはマリアだから、そんなことはないよ。」


「じゃあ、リリのプレゼントはお手紙とポプリにします。」


幼女らしいちょっとチープだけど愛嬌のあるプレゼントなのではないだろうか。

私は大変満足してニンマリと笑った。




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