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きのこの森

目を開けると、天蓋付きの豪華なベッドに寝かされていた。

自分の手足を見ると信じられないほど小さくなっている。

いつもより更に短くなった手足を使い、ふかふかのベッドから下りようともがいていると体が浮き上がった。


「おはよう、マリア。私の天使。」


そう言って私を抱き上げたのは目もくらむほどのイケメンだ。

金髪に青い目で顔が整っているなんて人生勝ち組でしかない。


「え、誰?ここはどこ?」


「まだ混乱しているのかな?君は昨日、森で倒れているところを拾われて、僕の娘になったのだろう?」


絵本の王子様みたいなイケメンに微笑まれて、私はそうだった、と思い出す。


そうだ、私は昨日から異世界に転生したのだった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

学校の屋上から落ちたと思ったら、次の瞬間には森に幼女の姿で転生していたときの気持ち、考えたことある?


「なにこれ?私死んだ?ここは死後の世界?」


やばい、学校の屋上から転落とか自殺だと思われそうだな。

あれ、そもそもなんであんな状況になったんだっけ?


夢の内容を忘れていくように、先程まで覚えていたはずの記憶がどんどん薄れていく。

名前、出生、親の顔、友達の顔、それらがどんどん思い出せなくなる。


恐怖はない。

ただ先程までの記憶が本当に夢だったような気分になるだけだ。

しかし、前世の常識が消えてくれるわけではない。

私の常識が3階建てのビルくらい背が高いきのこが群生する様子に拒否反応を起こしている。


え、ありえないよねこんなきのこ。

私の知識が乏しいだけで、アマゾンの奥地にはこういうきのこが生えてるとかそういうのないよね。


「と、とりあえず人里に下りたい。」


どう見ても異世界な森の中で知識なくサバイバル生活はご遠慮したい。

しかし、人里といってもどちらに行けば良いのかもわからない。

この小さくなった(ような気がする)体でむやみに歩き回って体力を減らすのも得策とは思えない。


「誰かいませんかー!!」


結局叫ぶことにした。

大声を出すのも体力を使うがまあ歩き回るよりはマシだろう。


「おーい!!」


「やっほー!!」


大きなきのこが壁となって声を反響させ、私の声があたりに響き渡る。

意外といい案だったのではないかと自画自賛していると遠くからガサガサガサガサっという音がした。


やばい。

私は何かが近づいてくる音に焦る。

大型の野生動物だったらどうしよう。

ここが異世界だとしたらモンスター的なものもいるかもしれない。

もっと考えればよかった。

人間以外にも人間の叫び声に反応する動物はいるのだ。


私はどうか人間でお願いします、と神頼みをした。

もしくは今すぐなんらかの力に目覚めさせてください。野生動物やモンスターを余裕で倒せるような。もしくはテイムできるようなものでも可。


「大丈夫、落ち着いて。僕はロゼッタ・ブーケット。この屋敷に住んでいる者だよ。」


頭を抱えてうずくまる私を落ち着かせるように穏やかに話しかける声。

そろり、と顔を上げるとまばゆい金髪の美男が目に入る。


「屋敷?ここは屋敷なのですか?」


「ああ、ここはブーケット家の屋敷の庭だよ。」


庭に巨大きのこを群生させるなんて、変わった趣味である。

しかし、青白く光るきのこは幻想的に見えなくもない。


「すみません。不法侵入しておいておこがましいのですが、このあたりのことを教えてくださいませんか?私、遠いところから来たばかりなうえに道に迷ってしまってわけがわからない状態で……。」


「それは構わないけど周りに保護者らしき人は見当たらないし、一緒に来た大人たちとははぐれてしまったのかい?」


一緒に来た大人なんているのだろうか。

しかし、ここで変に否定するとますます不審な子供だと思われてしまう。

とりあえず、頷いておこう。


「は、はい。おそらく。」


「わかったよ。とりあえず屋敷の中に入ろう。君の保護者もちゃんと見つけてあげるからね。」


「ありがとうございます。」


ロゼッタさんがスマートに手を差し出してくるので、思わず手を重ねる。

うわ、私の手本当に小さいな。












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