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リターン  作者: 乾 澪
67/74

Ep57:本命

やっとなにやら秋めいてまいりましたね。リターン更新のお時間です。

最近外部からのストレスがパないですが、何とか生きております。

えぇ、ポケモンやったりアマガミみたりうたわれるものやったりシュタゲやったりけいおん!!で泣いたり荒川二期に興奮したりで忙しいったら。超多忙です。

うん。まぁ、忙しいのは本当ナンデスヨ?

リターンもそろそろ最終ステージに突入すっかな、とか思ってたり思って無かったりでしばらく入らないと思いますが、なにとぞよろしくお願いします。

 オリビア=シャーローン。

俺が指導舎へと編入したあと、追いかけるように魔力覚醒。

そして何の事情があってか(俺と違って一般入学だからだろうか?)、指導舎には来ず、別のところで魔法指導を受けたらしい。

現在六年生。

この世界では珍しい黒髪に、深い青色の瞳。そしてめったに崩れない鉄壁のポーカーフェイス。

そんな容姿から、「氷のお姫様」と呼ばれている…俺にとっては、ただの意地悪な先輩だ。

いまや俺の肩くらいまでしか背の届かないこの先輩に、口で勝てる日はいつか来るのだろうか、いや来ないだろう。と、反語で否定したくなるような方だ。

そんな人に、あんな場面を見られた。

あんな場面……そう、あんな場面。


『大丈夫だよ。犬に舐められたと思っとけばいいんだからね!』


「ぐおおおおおぉぉぉぉぉぉ!!!!」

ベッドの上で枕を抱えてもんどりうつ。

悲しいのは、回想に出てくる、こちらにウィンクを飛ばしながらそう言うニコル先輩が普通に可愛いことだ。可愛いんだよ、本当に。

でも、悲しいけどあの人、男なのよね。

(加えて俺の本命は別にいるっつー、ね)

「……………ハァ…………」

ついでにその本命にあのキスシーンみられてたっつーね。

もうね。なんだかね。

あれよね。本当にね。全くね。


「神様の馬鹿野郎おおおおぉぉぉぉぉぉ!!!!」

「へぶしっ!!!」

抱えていた枕を珍しくも机に向かっている同室人に投げつける。

伊達に鋼鉄の肩、音速の玉と球技の時間に恐れられた俺ではない。

無論顔面クリティカルヒットである。

「………~~~~」

数秒間痛みで崩れ落ちてから、立ち上がったククリが叫ぶ。

「何するっスか!?どういう神経してたらラブレターを必死で書いてる親友の顔面に枕という名の凶弾を投げつける気になるんスか!!?」

「おうおう馬鹿野郎はここにもいたのか!お前こそどういうアホみたいな面して馬鹿そのものな脳みそしてたらファーストキス奪われてダウナーな親友の前で反吐みたいなピンクオーラ発してそんなもん書いてられるんだよ!!!」

「悪口が過ぎるっスうううぅぅぅ!!!」

半泣きのククリ。

ククリは多少体術の面ではマシになったが、相変わらず言葉攻めに弱い。

軍人として良くない傾向である。

「うるせぇ黙れ、ぴーぴー囀るな豚野郎」

「ぶっ?!」

故に親友の俺は毎日少しずつ親友の心を言葉で痛めつけて、鍛えてやっているのだ。

軍人たるものいつ何時拷問されるような場面に陥るか分からないのだ。

その程度のメンタルでは心配でならない。

――――という名目での八つ当たりである。

「も、もう怒ったっスよ!!」

「お?」

と、ここで怒り猛った様子でククリが怒鳴る。

珍しいことだ。

こいつは、よく言えば温厚、悪く言えば気弱で、割と姑息で悪いことを考えるくせにビビリだ。

だから、普段余り今みたいに真っ向から俺に立ち向かってくることは少ないのだが…。

(…ま、三年もあれば、人も変わるか)

俺の背が伸びたように。俺の声が低くなったように。

当然、ククリだって背が伸びた。声も多少低くなった(それでも少年と呼んで差し支えないソプラノボイスだが)。同じように、中身だって変わるだろう。

いつまでも俺に従うククリではない。…そういう、ことなのだろう。

「…で?怒って、どうするって?」

だからこそ、次の反応が気になる。

変わったククリはどうするのだろうか。勝てないと分かっている俺に、勝負を挑むだろうか。

俺に勝てるほどではないが、ククリとて成長している。勝機など探せばぼろぼろ出てくるはずだ。

無謀とは言えない。だからこそ、挑んでくるかもしれない。

それを期待しながら、問う。

「俺とやるか?俺は、構わない。どうせ明日は実践訓練は無いんだ、多少怪我したって平気だろ。…どうする?」

「……………」

無言のまま、ククリは俺を睨み付ける。

その目を見て、ぞくり、と肌が粟立ち、思わず体を起こす。

恐怖してではない。

強いて言えば、

(狂喜して、かな)


俺は、嬉しかった。










「オリビア先輩に言いつけるっス!!!」







失望するのは早かった。


「…………は?」

「俺、知ってるっス。ハルがいっちばん苦手なのは、オリビア先輩っス。…まぁ、違う意味でニコル先輩も苦手になったっぽいっスけど、それはまぁ置いといて。オリビア先輩はハルの天敵といっても差し支えないっス」

「ぅぐ」

……それは、確かに。

アリア先生とも違う(色仕掛け担当)、ニコル先輩とも違う(恐怖担当)、そして女子3人とも違う(ストレス担当)、あの人に対して俺は独特の苦手意識がある。

嫌いとか好きとかいう次元じゃない。好きか嫌いかで言えば確実に好きだ。

だけど、どうしてもぬぐいきれないこの苦手意識は、きっと格闘タイプとエスパータイプの相性みたいなものだ。どうしたって勝てない。

無論前者が俺である。昔々、空手とか習ってたしね。


「故に!!…よくハルが故にって言ってるから、言ってみたかったっス」

ククリは仕切りなおすように大きな声で言う。

「俺からのハルへの仕返しは、オリビア先輩へのチクリで決定っス!!」

そして言うや否や、そそくさと身支度を整えて玄関へと向かうククリ。

「で、ついでにこのラブレター渡してくるっス」

「…そっちが本題だろ?」

「当たり前っス。安心しろっス、ハルの話も茶請け話くらいには話しておくっス」

「いらねぇよ。いらねぇ気遣いだよ」

「じゃ、いってきますっス!」

「おぉ、いってら」

手を振ってククリが部屋を出る。

そして少し間を空けて、ばたんと扉が閉じる。

その音を聴いてから、体を再びベッドに投げ出す。

今から数時間。

夕食の時間まで予定もない。

提出期限の差し迫った課題もない。

訓練をする気分でもない。魔法訓練も、相手をしてくれるアゼリア先輩がここ数日俺を避けているのだからどうしようもない。

……………さて。どうしたものか。






――――――コンコン

部屋に響く、小さなノックオン。

「…?どうぞ?」

肩肘ついて体を起こしながら返事をすると、静かにドアが開いた。

僅かな隙間から見えたのは、見慣れた顔の、見慣れた表情。

「……あの、ね。もうそろそろテストじゃない。…ちょっと、数式学について、聞きたいことあって…」

なにか不味いことをした後。喧嘩をした後。

俺たちの関係が少し気まずいときに浮かべるその表情で、腕に教科書とノートを抱えたクロアが、そこにはいた。









「―――――だから、ここの値がこうなって……」

「…………」

「……クロア?」

「…………」

「…………」


『数式学を教えて欲しい』

そういってこの部屋に来たクロアだが、勉強開始から約30分。

ローテーブルを挟んだ向かい側で、俺の枕を膝の上に抱えて座るアイツからはどこをどうみたって勉強する気など見当たらない。

第一アイツは俺より成績がいい。数式学に関してはどっこいどっこいといったところだが、別に格段俺よりできないわけじゃない。

むしろ数式学に関しては、俺もアイツも苦手分野といっていいだろう。

つまり、俺に聞きに来るだけ無駄。どうしてもというなら、エミリ先輩でも紹介してやる。

(ということは、だ)

……別の目的で尋ねてきた、と考えるのが妥当だろう。

「…………はふぅ……」

で、この様子から考えて、その「目的」とやらの内容も知れる。

十中八九、俺が思い悩んでいた件に関することで相違ないだろう。

まぁ、その件に関すること、ということまではわかっても、そこからどうするつもりなのかはあずかり知らないがな。

「クロア、お前、勉強する気あるのか?」

しかしいつまでも向かい合ってため息ついていても仕方ない。

勉強する気など無いことは承知のうえで、そう尋ねる。

「うぇ!?」

「勉強する気はあるのか、と聞いたんだ」

「あ、あるある!あるに決まって…」

「ん?」

「………うぅ~……」

うなって、顔を枕にうずめるクロア。

そしてそのままもごもごと何か言っている。

「……………わる……」

「あ?なんて?聞こえないっつの。顔上げろよ」

「…………」

…黙り込みやがった。

なんだこれ。どうしたいんだよ。

「ハァ…」

もう、本格的に勉強する感じじゃなくなったな。

とりあえず鉛筆は机の上に置く。

そしてこっちも沈黙。

しばらく様子を見ようかと思う。


………

……









「だらっしゃあああぁぁぁぁーー!!!!」

「きゃあああぁぁぁーー!!??」

俺の堪忍袋の緒は思ったより短かった。

余りに無意味な沈黙に、思わずちゃぶ台返しを決めてしまった。

ローテーブルは実に綺麗な円を描いて、元の場所に荒々しく着地する。

無論、ノートやら鉛筆やらは散乱したがな。

「きゅきゅ、急にな、何なのよ!?」

「それなら今の時間こそなんなんだよ!?確かに俺は暇だったが、無為に過ごすほど暇なわけじゃない!!!」

それに、「きっと例の件で来たんだろうな」となまじわかっている所為で妙に緊張して困るのだ。

クロアが俺の寿命を縮めるために闇の機関から派遣されたエージェントでないのであれば、ぜひともそろそろ本題に入って欲しい。

「何か俺に言いたいことがあるならさっさと言ってくれ!」

「い、言えるわけないでしょそんなことぉ!!いえるならこんないじいじしてないでいってるわよ!!!」

興奮の余り俺が立ち上がると、それに習うようにクロアも胸に枕を抱えたまま立ち上がる。

怒りからか興奮からか、頬を紅潮させて涙目で俺を見てくるものだから、すこし罪悪感…。

「いじいじしようがしまいが結論は一緒だろ!?それにいつまでもこんなことで時間取ってたらいつククリが帰ってくるか分かんないし、夕食の時間になっちまう!!」

「~~~~っわ、わっかったわよ!言うわよ!!言ってやるわよ、ハルのバカぁ!!!」

「おぉ、言ってみろっつぅんだアホクロア!!」












「私にキスしなさいっ!!!!」

「っ、それはすこし予想斜め上だなあああぁぁぁぁ!!!!」





ちなみに予想してたのは「どうして私にはキスしてくれないの」でした。

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