Ep55:接吻
サブタイトルが今までに無く酷い件について。
謝罪はできますが、訂正はできかねます。だって私にはタイトルセンスが皆無ですから(・∀・)
そしてキャラ崩壊が今まで以上に酷い件について。
歯止めが利かない。だれか私の歯止めになってくだしあ。
オス!おら、ハル=ライザック!
超肌ぴちぴちで水も弾いちゃう、今をときめく15歳☆(多少の詐称あり)
…と、先日今生トップ5に入るくらいの大決心をして、自ら茨のハーレムルートを選んだ俺だが、「茨の」とは何も誇張表現ではなく。
「ハールくんっ♪おっはようございます!貴方の愛しき私、貴方の愛する嫁、貴方のアリスが朝のお目覚めをお手伝いしに来ましたよー♪」
「まずどうやって男子寮に入った!?」
「きゃあー!エッチー!!」
「テメェは黙ってろククリぃぃぃぃ!!!」
「ほら、あーんは?アンタの大好きなココットのポタージュでしょ?あーん」
「……いや、その、クロアさん…?」
「…あ゛ーん?」
「あーん!!!!」
「よし、今日は久しぶりに魔法込みでの戦闘訓練を行おうと思う。ちなみにアルフィリア少佐のご尽力により、機密保護等は十分に行われているから思う存分魔法を使ってくれて構わない」
「了解です」
「………魔力の漏洩防止はもちろん、防音、防振、外部からの視覚阻害魔法もこの陣式に組み込まれている」
「そうなんですか?ずいぶんとまぁ、厳戒態勢ですね」
「あぁ。…つまり、どういうことか、分かるな?」
「…?」
「私が…じゃなくて、お前が私に何をしても…外部には一切分からないということだっ!!」
「な、な、なんだってぇぇぇぇぇ!!!!」
…まぁ、最後のアゼリア先輩とのやり取りは大いにふざけているわけだが。
それにしたってあの日以来、三人の積極性が半端無いことこの上ない。
一本ネジが取れたら全てが瓦解した感じだ。我慢の限界的なものが。
正直なところ、ね?分かるよね?
俺だって一介の一般男子だ。かわいいハイスペック女子に言い寄られて体摺り寄せられてうれしくないわけないのですよ。
ぶっちゃけ嬉しいのですよ。
だけどさ、何も考えずにがっつけるほど俺も愚かじゃないわけで。
つまりは何が言いたいのかといいますと。
そろそろいろいろげんかいです。
「時は満ちたわ」
授業終了の鐘の音と共に立ち上がる。
ぶっちゃけ今の授業中はこれから行う作戦の構想に没頭していたからほとんど聞いていなかったけど、問題無い。
戦争史は普通科との共通科目だからハルに教えてもらえば問題ない。それどころかおつりが来る。
それよりも目下重要視すべきは「ハルの我慢限界水域」だ。
先日のハーレム解禁からずっと、ハルはありとあらゆる色仕掛けを私達3人から受けてきた。
……………何が卑怯って、あの生徒会長、例の無駄な脂肪でハルをたぶらかしてることよ。
なによあれ。あんなのただの肉塊じゃない。大きさで何が変わるって言うのよ。
必要なときに必要な機能を果たせばいいのよ。それがなに?何であんなに無駄に大きいわけ?
あぁ、そういえば前生徒会長且つアリスの姉であるアリア=リーンも大層なものぶらさげてたわね…。
…ていうことは何?今は普通サイズのアリスも、いずれはああなる見込があるってこと?
冗談じゃないわよ。なぁにが巨乳よ!巨大な乳ってなによ!大きけりゃなんでもいいってわけじゃないのよ!!?
「っあぁ!腹立ってきた!!」
思わず廊下の壁を殴りつける。
「ひぃ!!?」
すると、ゴンっ!と壁が陥没する音に紛れて悲鳴が聞こえた。
振り返ると、青のネクタイを締めた、いかにも一年生っぽい子が怯えた目で私を見ている。
「…ねぇちょっとそこのお嬢さん」
「すみませんごめんなさいこんなところを私なんかが歩いていてごめんなさい!」
「…?何言ってるのか分かりませんけど、一つお伺いしてもよろしいかしら」
「どうぞなんなりと貴女様の仰ることなら何でも致します!!」
「そう?…まぁ、たいしたことでもないのだけれど…ここって、普通科棟?」
「へ?」
「貴女、普通科の生徒よね?」
「は、はい。ここは普通科棟の、二階ですけど…」
「…そう。教えてくださってありがとうございます。それでは」
聞きたいことは聞けたので、さっさとその場を離れることにする。
さっきの女子生徒いわく、ここは普通科棟の二階。
…いつのまにそんなに歩いてきたのだろうか?…ていうか私、今まで何考えてたんだっけ?
「とにかくすごいイラついてた記憶だけはあるんだけど…ま、いっか」
思い出せないということは、その程度のことだったのだろう。
「それよりさっさとハルを見つけ出さないとね!」
私の予測では、今日の放課後。
それがハルの限界水域突破地点なはずだ。
故に、今からの私の任務はただ一つ。
「なんとしても他の2人より早くハルの身柄を確保すること、及び―――――――」
「―――――ハル君のファーストキスは私の物です」
元より、既に正妻の座を射止めているクロアちゃんには一歩も二歩も先を行かれている。
ここらで私がアドバンテージをとらないと、今後増えていく可能性すらあるハル君の嫁達の中で私みたいな地味キャラは埋没してしまうに違いない。
私はこれといって特徴もないし、前面に出るタイプでも無いからこそどこかで個性なり強みなりを見せ付けておかないと駄目だ。
だからこその、
「ハル君の、ファーストキスの奪取」
―――――そう、この際奪うことさえ厭わない。
ハル君だって拒みはしないだろう。
だって、だってハル君は私のことが……。
「……ふふ、うふふふふふ……♪」
私のことが、好きなんだから。
「ふふふふふふ…」
「お、おい、アリス…?」
「はい?」
名前を呼ばれたので立ち止まる。
きょろきょろと辺りを見渡すが、人影は…。
「後ろだ、後ろ」
「あ、リオール君」
振り返ると、眉間に皺を寄せたリオール君が、教科書を丸めたようなもので肩をぽんぽんと叩きながらため息をついた。
む、なんですかそのため息。人の顔見るなり失礼な人です。
「何ですかリオール君。私、いま少し忙しいんですけど」
「あぁ、別に君の邪魔をする気は毛頭ないんだが…その、やはり学級委員としても、君に一言言っておく必要があると思ってだな」
「…なにをですか?」
尋ねると、リオール君の眉間の皺が一層深くなる。
皺、残っちゃうから気をつけたほうがいいですよ。
「…あまり、薄気味悪い笑い声を出しながら廊下を闊歩しないで欲しい。同輩、後輩、先輩はもちろん、教員の方々すら恐れている。君は気づいていなかっただろうが、君が歩いてくると人が道を作るんだ。君を避けて」
「うぅんと…覚えが無いのでよく分からないんですけど、ごめんなさい?」
一応謝っておく。
謝ることは得意ですよ?なんていったって、姉様がしでかした後謝るのは大抵私かライナスさんでしたからね。
「……あぁ。反省してくていればいいんだが。君は、ハルが関わらない時は至って真面目で他者を慈しむ素晴らしい人だということは、俺も分かっている。…どうせ、今回もハル関連なんだろう?」
「そうでした!」
って!そうです!こんなことをしている場合じゃないんです!!
「すいませんリオール君、私、いまハル君を探してて忙しいので!……」
「分かった。引き止めて済まなかった」
「……なので」
「ん?」
目の前の腕を掴む。
両手で、力をこめて、絶対逃がすまいと。
「…え、ちょ、あの」
「手伝ってくれますよね…、優しい、私のお友達のリオール君…?」
「ぃ、ィイエスッ・マム!!!」
空いた手で敬礼するリオール君。
ふふ、いい返事です。
目的対象はもちろん、ハル=ライザック。
捕獲方法は不問。
ただし、何があろうと、他の2人よりも早く――――――――。
「ハルを返していただきたい」
―――――――他の2人よりも早く、ハルを捕まえる。
それが今日の私の最重要課題だった。
そして今、その目標人物たる私の想い人は、私が予想したとおりに生徒会室へと逃げ込んでいて、私が予想したとおりに後輩の男子生徒と女子生徒とお茶を飲んでいたようだった。
…そう、そこに、予想外のイレギュラーが居ただけのこと。
それだけでここまで私の予定を崩してくれるのだから、この人は本当に厄介だ。
尊敬している。好意も抱いている。
優秀で、したたかで、美しく、慈愛に満ち、悪賢く冷血だ。
矛盾するようなそれらを矛盾することなく抱く彼女は、私にとって目下目標としている人物である。
だがしかし。
こういう場面に置いて、特にハルが絡んでいる場合は。
厄介且つ迷惑極まりないとしか表現のしようがない。
この、アルフィリア=リーンという人は。
「え~?どうしてクロネコちゃんを返さないといけないの~?」
「理由が必要ですか?明らかに本人が嫌がっている。それに、貴女は彼の教師だ。必要以上の身体的接触は避けるべきだと考えますが」
「本人が嫌がってる…?そうかしら?」
そういうと、アリア少佐は少し体を動かして、より密着するような形で背中から抱きしめるハルをより強く胸の中に引き寄せた。
「ぅぐぅ…」
「…ハル…?」
妙な声が聞こえた。
思わず腰に差す“涙”に手をかける。
「い、いえ!大丈夫です全然興奮してません全然抱きしめられて嬉しいとか思ってません全然この状況ヒャッハーとか思ってません!!」
「ハル…お前は嘘をつくとき必ず左腕を擦る…その癖は直さないとなぁ?」
「うそぉ!?」
ハルがあせったように私を見る。
本当のことを言うと、必ず、というわけではないから真実ではない。
だけど比較的動揺しているようなときにハルがそういった仕草を見せることは確かだ。
…なんにしろ、今の彼が興奮―――もとい、動揺していることは火を見るより明らかだが。
以前からどうにもハルはアリア少佐に多少気があるような感じだからな。要注意人物だろう。
「…いずれにしろ。私はハルに用事がある、それは2人きりの場で行いたい。となれば、ハルを開放していただきたいという私の要求は至極当然のもののように感じますが?」
ひとまず“涙”にかけた手を離し、頭は冷たく心は熱くお話をすることにする。
あくまでもお話だ。肉体言語は使用しない方針で。
そうだ、私だってもういい年だ。生徒会長という自負もある。やたらめったらあちこちで喧嘩を振るような真似はそろそろ慎まなくてはな。うん。
「…………そういう理屈、軍にいるみたいでつまんない。没ね。不許可。認めません。クロネコちゃんはアタシのものですぅー。ね、クロネコちゃん♪」
そういって、ツンと顔を背けるアリア少佐。
ついでに「ぎゅむ」と胸をハルの背に押し付けたのを私は見逃さなかった。
…………。
「…そうですか」
「え、いや、アゼリア先輩!?何を納得したの、どこに納得したの!??駄目駄目駄目、KOOLになろうぜ先輩!!!」
「そそそそそうですよぉ先輩!アリア先生が突拍子も無いこと言うのはいつものことですし、い、いちいち目くじら立ててたら頭がパーンしちゃいますよ!?だから、ね!!」
「……………うるさいのはイヤ、デス……」
ハルや後輩達の制止の声も聞こえるが、もはやこの手を止める気は無い。
「貴女がそう出るなら、私にもやり方があります」
“涙”に手をかけるのは今日で二度目。
そして今度はためらい無く抜き放つ。
シャリン、と軽やかな音を立てて鞘から現れた煌びやかな銀色。
戦場であってもその目を奪いかねない美しさを纏った“涙”は、久しぶりに鞘から放たれたことを喜んでいるように見えた。
「これが、今日でなければ良かった。今日でさえなかったのなら、まだ見過ごせた。……だが、今日だけは駄目だ。ニコによる事前の身辺調査でハルの現状はほぼ完璧に掌握している。そして正に今日は千載一遇のチャンス。今日だけは逃せない。今日だけは…負けられない」
足を肩幅に開き、“涙”を握る両の手以外は脱力させる。
この長刀を振り回すのに無駄な力は要らない。
“涙”に必要なのは、刹那駆ける速さのみ。
「……貴女は私の恩人であり、敬愛する人です。…そして私は今日、貴女を越える。峰打ちにして差し上げますから――――――降参するならさっさとしてくださいよ!!」
そして一歩踏み込む。
その時
「いたーーーーーーーーーーーー!ていうか魔法科棟いたとか灯台下暗し過ぎる!!!」
「目標対象発見。…ふふ、ハル君ったらこんな日にこんなに私に手間取らせるなんて……て、あら?姉様?…そう、姉様も私の前に立ちはだかるんですね…うふ、うふふふふ…!面白いわ、この勝負、乗って差し上げます!!!」
「………ねぇねぇアスハ君アスハ君」
「…なん、デス…?」
「なんだか面白いことになってきたねぇ。…ちょっと私も戯れに参加してみたりして……」
「………自殺志願者…?」
「ですよねー」
ハル=ライザックのファーストキス争奪戦の火蓋は、こうして切って落とされたのであった。
果たして勝者は――――――?
To be continue・・・?
て、続きますけどね(^q^)
続きますけど、今の更新速度維持するのが割りとぎりなので、ごめんなさい。
遅いのは知ってるんだ…遅筆で駄作なのは重々承知なんだ……誰か、誰でもいいから、私に一日48時間と煌く才能をくれ……さい。