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リターン  作者: 乾 澪
63/74

Ep53:相談

少し間が空いてしまいました。

そして悲しいことに今回全然話がすすまねーです。ごめんなさい。

ハルくん思春期過ぎて泣けてきた\(^o^)/

ぐっだぐだに悩みまくってますね。今回は悩み相談回です。

…うん。ただ単純にガイとメイカが書きたかったというのもあったんだ。


あと。

今回のくだりでいくらか「お前にはがっかりだよ!」といわれそうな部分がありますが、仕様というか元からそのつもりでしたので、ご了承ください。

 ごとん、ごとんと重たい車輪を引きずりながら進むガルー車の音を聞くともなしに聞きつつ、俺は嵐のように過ぎ去った一ヶ月間を振り返っていた。

小さな窓越しに見える風景は、學園周辺の栄えた様相から、高級住宅街の落ち着いたそれに姿を変えつつある。目的地はもうすぐだろう。

…しかし、こうして振り返ってみると、ここ一ヶ月は本当に怒涛の一ヶ月だった。

そもそも帰ってくるきっかけになった事件がすさまじい。

クロアとの婚約云々や改名のこともあるが、やはり思い出されるのはヴォートンの歪な笑顔。

アイツなりの愛国心とかがあってのあの行動だったのだろうが…たやすく許せる所業ではない。

アイツのことを思い出せば今でも腹の底が落ち着きなくムズムズする。

記憶をいじられたことで否が応でも思い出させられた、兄貴の最期。

俺にとって最大のトラウマであるそれを弄繰り回された気分は最悪だ。

その上、というかこっちが一番重要なわけだが、アイツは俺の大切な人を傷つけた。

メイカさんとクロアだ。

守りきれなかった自分にも腹が立つし、傷つけようとしたヴォートンに対しては腹が煮えくり返る思いだ。

俺は本質的に度量のでかい人間じゃない。

自分の大切なものだけは守りたい。あとのことは、正直どうでもいい。

だから、アイツを本当に許せるようになる日は、恐らく来ないだろう。


んで、その次がなんだ。…あぁ、対策部移転かなぁ…。

おかげで学校の休日はお仕事三昧である。

しかし、なんだかんだで一回もライナス少尉とは学内であってない。

一応臨時講師として学内にもぐりこんでいるらしいのだが、あいにく俺の授業は受け持っていない。

その上、俺が軍の仕事をするため対策部に行くときは大抵軍本部に帰っている。

ライナス少尉が部内きっての問題児かつ部長であるアリア少佐(先生)の代わりに副長として軍本部との連絡係を担っているのだから仕方ないともいえるのだが。

あの人とは苦労性同士気が合うので、近々腰をすえてお話をしたいところだ。うむ。



――――――あとは、まぁ、言うまでも無く、第二夫人立候補事件。

「ハァ…………」

意識せずともため息が漏れる。俺の幸せの大半はため息で消費していることだろう。

いや、正直なところ、男として「奥さんになりたい」と言って貰えるのはうれしくないわけじゃない。

男だったら誰だって一度くらいはハーレムを夢見る。

あくまでも夢見るだけだが。

そこが、俺との差。

実際その夢が叶いそうになると腰が引けてしまうものだ。

だってそうだろ?

そもそも俺のことを良く知りもしないで立候補している女の子が何人いるのだろう。

そしてそんな半端な覚悟の子達まで囲うほど俺は大した男ではない。

大した男ではないどころか、恐らく欠陥だらけだ。

旦那としてお勧めできない。

……だけど、そんな俺を、目下4人の人が本気で好いてくれているみたいだ。

………いや、3人、か。



『―――――なぁんてね!ね、驚いた?驚いた?私的にはすごくマジっぽくいえたと思うんだけど、だまされた?』



………以上、先日のエミリ先輩の台詞の続きである。

俺は基本的には女性には手を上げない主義なのだが…さすがに、少し懲らしめておいた。

本当に冗談だったのか、そうでなかったのかは俺には分からないが、今の状況であの嘘は勘弁して欲しかった。

そこらへんの、ミーハーな女の子がその嘘を言うならいい。

笑って流せるから構わない。

だけど、エミリ先輩がそれを言うとなると話が違ってくる。

笑って流せない。真剣に考えないといけない。

人一人をきちんと受け止めるには、それ相応の覚悟が必要だからだ。



「…て、言ってもなぁ…。それでも後3人いるわけだけど」

一人目はもちろん、正当な婚約者であるクロア=キキ=ランバルディア。

クロアとの婚約は…最初はもちろん戸惑った。

だけど、嬉しくない、わけじゃなかった。

むしろ嬉しかった。

アイツが俺のことを小さな頃から慕ってくれていて、ほの甘い感情を向けてくれていることには気づいていた。

ただ、それを自ら問いただす勇気はなかったけど。

(一度幼馴染のこと不幸せにしてる身だし)

だからアイツが望むなら、他の立派な男との恋路だって応援するつもりだった。

…けど、アイツは、俺との婚約を、涙を流して喜んでくれた。小さな頃から変わらない笑顔でアイツは笑っていた。

それを喜ばない人間がいるだろうか?

変わらずずっと自分のことを愛してくれている人間を、愛さない人間がいるだろうか?

(俺だってクロアのこと、好きだ)

だから、俺はクロアとの婚約を受け入れた。できる限り幸せにしようとも誓った。

―――――――故に、問題なのは残りの二者だ。

アリスと、アゼリア先輩。

どちらも俺にしてみればとても好ましい人たちだ。

女性的魅力も十分すぎるくらいだし、好きだといってもらえて有頂天になるくらいには嬉しい。

だけどやっぱり俺の精神性は日本人的だ。

女をたくさん侍らせることに一抹の罪悪感を感じるし、それに、そんなにたくさんの人を俺の手で幸せにできる自信が無い。

伴侶とする以上幸せにしたい。これ以上ないというくらいに幸せに。

好きな人には幸せになってもらいたい。いつでも輝く笑顔を浮かべていられるくらいに幸せに。





では、はたして俺や彼女達に、そんな未来を相手に託す覚悟があるのだろうか?





一時の「好き」という感情だけでは判断できない。

クロアと過ごした「時間」がアリスやアゼリア先輩とは欠けている。

幸せにしたい。

だけど自信が無い。

気持ちに応えたい。

だけど余裕が無い。

「………堂々巡りだ」

どこにも辿り着けない問い。

俺は割と小さなことでぐるぐると悩み続けてしまう性質だ。

どこかでクロアのような思い切りのいい人がバシ!っと言ってくれないとどうにもならなくなってしまうときがある。

だから、


「…家にまともに帰るのって、いつぶりだろうな……」





入学式から約一月。

秋の香りが立ち始めたウルの月の最初の休日。

俺は、実家へと帰省することにした。

一人で頭抱え込んで悩んでも分からない。

なら、誰かに相談するしかないだろう。

ま、つまりはそういうわけである。









家に着くや否や俺は出迎えたメイドに連れられて応接室へと通された。

「それではご主人様をお呼びいたしますので、こちらでお待ちくださいませ、ハル様」

メイドはそう言うと、一礼して退室しようとする。

その去り際、

「…ハル様。元気、出してくださいね!」

と言われた。

ファイト!とでも言うかのように握りこぶしまで作られてしまった。

…なんだ、俺はそんなに疲弊した顔をしていたのか?

困ったものである。


数分後。

応接室の扉は気配も無く突然に開いた。

もちろん、開けたのはこの家の主人、ガイアス=ヴォリック=ランバルディア。

さすがである。足音一つしなかった。

今でこそ戦闘の前線に立つことはなくなったが、一時は「朱染めの白獅子」とまで呼ばれていたそうだ。

鬼のように強かったらしい。気配を殺すことなど造作も無いことなのだろう。

そして、ガイの後ろから付き従うように現れたのは、ティーセットを乗せたプレートを持つメイカさん。

いつもはクロアや俺の世話係である彼女だが、俺たちが學園に言っている間はガイ専属メイドとなる。

そのため振る舞いは洗練された瀟洒なもの。

俺たちと一緒に居るときのような温かみのある隙は見せない。

つん、と済ました表情が印象的である。

「忙しい中、俺なんかのために時間を作ってくれて本当に感謝しています」

向かい側の椅子にガイが腰掛けたのを確認してから、話を切り出す。

「あぁ」

ガイは返事をしながらも、すっ、と一瞬で俺の全身をくまなく見渡した。

まるで品定めされている気分だ。

(少しは、子ども扱いから抜け出せたってこと、かな)

子供ではなく、婿として。

ガイは俺を推し量っているのだろうと思う。

…そんな中、こんな情けない相談をするのも気が引けるのだが…。

それこそ、クロアとの結婚にも関わってくるのだ。聞いていただくしかない。

「それで早速だけど、今日話したいことっていうのは――――」






「最初に言っておこう」

一通りの話が終わったところで、カップに入った紅茶を一口飲んでから、ガイは口を開いた。

「お前がランバルディア家の婿となる。そしてランバルディア家を継ぐ者となったお前が複数の夫人を持つことはなんらおかしなことではない。恐らく相手方ももろ手を上げて喜ぶだろう。ぜひにと娘を進めてくるはずだ」

ガイが手に持つカップをソーサーに戻す。

食器がかちりと音を立てた。

「現状考えられる人物としてはアリセリス=リーンとアゼリア=ロックハートの二名、だったな?」

「はい」

「ロックハートという家名は知らんが、リーン大佐とは面識がある。同じ作戦に関わったこともある。軍人としても、人間としても優秀な人物だ。リーン家は貴族でも、大勢力軍閥の幹部でも無いが、今まで素晴らしい軍人を輩出してきた家系だ。不正、汚職の経歴もない。故に私としても異論は無い」

「い、異論はない、って、どういうこと?」

「…ふむ。どういうこと、とは、どういうことだ?」

ガイアスは目を細め、片方の口角だけを吊り上げて意地悪く微笑む。

ゆっくりと足を組みなおして俺をじっとりとその灰色の目で見つめてくる。

机の上にひじをつき、口元を組んだ手で隠しながらガイは言葉を続けた。

「今話しているのはお前の婚約についてだ。そして私はこういった。お前が嫁をクロア以外に持つことを禁じない。ロックハートという子は知らないが、リーン家にはある程度のなじみがある。そして、現当主であるファルコン=リーン大佐は素晴らしい人物だと思っている。そして、私に異論は無いと。…さて、ではハル、お前に問おう。私は、何について異論が無いのだと思う?」

―――――そんなこと、考えるまでも無い。

答えはとうに出ていた。

だけど、信じたくなかったんだ。

その答えを、俺は否定して欲しかったんだから。

「…ハル。人は、孤独な生き物だ。どれだけの人に囲まれていたって究極的には一人だ。何かに悩んで誰かに相談したところで、結局答えは自分の中にしかない。逆に言えば、答えは常に自分の中にある。だから、言わなくても分かるだろう?」

「……………分かってる。けど、」

「けど、は無しだ。もう結論は出ている。――――――結局は、お前が彼女達をどう思っているか、だ。私はランバルディア家当主としてお前の婚約を否定しない。お前には彼女達を受け止めることを許される能力と環境がある。さて、残るのはなんだ?…お前の、気持ちだけだ」

「…………………………………」

「…世間がどう思うかとかは、気にするな。世間の評価など取るに足らない瑣末事だ。家名がどうとかも気にする必要は無い。もとより我が家は軍人だ。貴族のきらびやかな皮を剥いだところで、戦場で戦う一振りの剣であることになんの変わりも無い。家名があろうが、なかろうが、そんなことはどうでもいい。大事なのはお前の気持ちだ」


―――――――――だから、良く考えなさい。お前の気持ちは、お前にしか分からない。










そしてガイは席を立った。

来たときと同じように静かに部屋を出て行く。

その後に続くように、今まで部屋の隅で控えていたメイカさんが出口へと向かう。

が、出る直前で立ち止まり、言った。

「これは、誰に言うでもない、つまらない独り言ですが。…誰かさんが思っているほど女は弱くありませんよ。男に守られなければ立ち上がれない、男が居なければ口もきけない、そんな愚鈍ではありません。誰かの隣りに立とうというのなら。その意思があるのなら。誰かに愛されたいと思うのなら。愛したいというのなら。まず、その人を良く見なさい。その人は、本当に誰かさんが思うほど、弱い人ですか?…片意地張らないで下さい。守ろうと頑張りすぎないで下さい。誰かさんを愛する人はみんな、誰かさんに守られたいから愛しているのでは、無いのですから」

言い終わったと同時に、ばたん、と扉が閉じる音がした。

そして今、この部屋には俺一人。

…一人で良く考えろ、ということなのだろう。

『答えは常に自分の中にある』

ガイはそういうが、では俺の中の、どこに答えがあるのだろう。

それを俺は、見つけ出せるのだろうか。


『大事なのはお前の気持ちだ』


「…俺の、気持ち」

それは一体、俺の、どこにあるのだろうか。













「――――――メイカ」

「、はい」

ふいに。

自分の数歩先を歩く主人に名を呼ばれた。

考え事をしていたので僅かに返答が遅れた。

こんなことではいけない。優れたメイドたるもの、気を引き締めなくては。

「ハルの部屋を整えておきなさい。今日は泊まらせて、明日學園に帰せばいいだろう」

「かしこまりました。ご夕食はいかがなさいますか?」

「共に取る。料理長にそう伝えておけ」

「はい」

頭の中の予定を組み替える。

お嬢様とハル様の世話係主任として、ハル様の部屋の掃除は第一優先課題だ。

優先順位の低いものは他のメイドに任せてしまおう。

「…あぁ、それと」

「なんでしょう?」

「……夕食後には、ルナリーフのお茶とビビットの氷菓子を出すように。…アイツの、好物だっただろう?」

「………ぷっ」

「こ、こら!笑うな!いや、さっき少しばかり厳しいことを言ってしまったから、せっかく家に帰ってきたときくらいリラックスさせてやろうと思っただけのことでなぁ!」

「わ、分かっております。了解です……ククっ」

「く、くそぉ……」

…そうだ。

なんだかんだいって、この人も、どっぷりだるんだるんに子供達には甘い方なんだ。

何も私が気を張る必要は無かったみたいだ。

あぁ、全く。

この家の男はみんな甘い人ばかり。

(だから、奥様や、お嬢様や私や他のメイド達が苦労するんですけどね)

そんな苦労を愛おしいと感じていることを、野郎達は分かっていないのだろうな、と今日のハル様を見て分かった。

「私は結構、あぁいう弱ったハル様に甘えられるの、好きなんですけどね」

「お?なんだ、お前もうちの婿に嫁入りするか?」

「―――――――――それも、ありですね」

「ん、いや、メイカ?…え?マジでか?」


婿の一夫多妻制を認めたのはあなたでしょうが。

責任とってもらいますよ、旦那様?

ふふ、ふふふふふふふふ……!










というわけで。エミリにはフラグ立ってますん。誤字にあらず。

私がハーレムものを書く上で最初から貫いていることとして、「フラグ立てることなく惚れさせるべからず」です。つまり、ただ単純に主人公モテモテひゃっはーにはしたくなかったのです。

なので、エミリが突然ハルの嫁にはなりません。期待した方がいらっしゃったらごめんなさい。

でも、ここで一応エミリの為の別フラグが立てたつもりなので、いずれ回収できたらと思います。

…いつになるのかなぁ…(;・∀・)

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