Ep50:開戦
少しハーレム成分増加中です。
っていっても女子達が修羅場ってるだけなんですけど(^q^)
間あく割には話が進まなくて申し訳ない。
あと、今回すこし行間を空けてみました。
これで読みやすくなってたりしますでしょうか?
以前のほうが良かったとか、この方が良いよ、とかご意見ありましたら教えてください。
失敗は成功の母。
敗北は勝利の父。
人は恐れる生き物だ。
恐れを知らずして強者にはなりえない。
強者とは、恐怖が何たるかを知る者だ。
恐怖に怯え、恐怖に惑い、恐怖に戦き――――そうして恐怖を制した者のみが、強者となれるのだ。
失敗を知れ。敗北を知れ。恐怖を知れ。己が弱きを知れ。
さすれば見えてこよう。
――――――――――――勝利の道が。
「四年前の雪辱、今日こそは晴らさせてもらうぞハル=ライザック!光の名を冠し、白き獅子の牙を得た我が宿敵よ!!!」
「暑苦しい上に厨二病極まりない二つ名を勝手につけるなあああぁぁぁぁ!!!!」
俺達は今、体育館にいる。
…そう。
今日は、新学期恒例の体力測定の日。
なんだかんだいってこの暑苦しさ極まりない男、リオール=ヴォルガノと仲良くなったのは、四年前のこの日だった。
どうやらリオールは四年前俺に敗北したのを未だに悔しがっているらしい。
暑苦しいだけじゃなくて相当粘着質だ。その上几帳面だから、旦那にはしたくないな。
「そして、お前も四年前と変わらず、ってことか?」
「ぐぇっ!」
忍び足でどこかへ行こうとするククリの襟首を掴む。
レオン少佐にいたぶられた所為か、非常に目覚しい成長率を見せた俺の身長に対し、ククリの方はあまり芳しくないのか俺が襟首を掴んだだけで首が絞まるらしい。
正直、「ざまぁwwwww」…である。うむ。
「べ、べつに今年も自分の友達を賭けに一儲け狙ってなんかないんだからね!?」
しかし尚も逃げようとするククリ。
じたばたと足を動かして俺の手から逃げようとする。
「…そういうのは、肩にかけた襷を外してから言おうな?」
まったく…何が「一口500Zから!小金稼ぎの小市民も大穴狙いの大馬鹿野郎もよっといで!」なんだか。
大馬鹿野郎はテメェのほうだろうが。
「このアホ」
「いってぇ!っス!」
とりあえず拳骨を一発ククリのひよこ頭に落としておく。
「おい。あまり殴りすぎると馬鹿になるぞ?」
そこにリオールが心配そうに口を出してきた。
が、
「既に馬鹿なんだから180度回れば少しはマシになるだろ?」
「…それもそうだな」
「な?」
「んなわけねーっス!お前ら馬鹿っスか、ってごめんなさいぃぃぃ!!!」
反発してきたのでもう一発。
みんな、動物って言うのは最初のしつけが肝心なんだ。
そういう意味で言うと俺は最初にコイツをしつけ損ねた。その結果がこれだ。
だから再教育をするわけだ。
再教育は簡単じゃないけど、俺は頑張る。
友のためにな!
「というわけで俺を出汁に使う以上、利益の半分は俺に流せよ」
「ついでに僕がもう半分だな」
「俺の収入はどこにいくっスか!?」
「あるわけ無いだろ」
「あると思ってたのか?」
「…………しくしく……」
うなだれるククリ。
ウィナー・俺。
うんうん。賭けの対象にされるのはあまり気分が良くないが、それで臨時収入が入るのなら儲けもんだな。
…ていうことは胴元の稼ぎが多いほうが俺達の稼ぎも多くなるってわけだから、俺が負けたほうが結果的に収入は増えるのか…?
「…俺、わざと負けるのとかは嫌だからな」
「は?君は何を馬鹿なことを言ってるんだ。当たり前だろう。それに、どうせ実力勝負でも僕が勝つからな。君が八百長のようなことをしなくても大丈夫だよ」
「ほっほぅ…よくぞいってくれましたなぁリオールくん…!」
これはますます負けられん。
久しぶりに魔力強化も何もなしに純粋な勝負だ。
レオン少佐のチートみたいな身体強化が相手じゃないんだ、勝ち目は十分だろう。
「でも、本当に今回の賭けの対象はハルたちじゃないっス。そりゃ確かにハルたちのも一枠設けてはいるっスけど、メインの賭けはハル達の対決じゃないっス」
「あん?」
いつのまにか復活したククリ。
…俺達の勝負がメインじゃない?
「僕達の対決以上に面白い勝負があるっていうのか。…それはなかなか、見過ごせないな」
リオールも食いついてきた。
なんだかんだいって俺達ってのは結構似たもの同士なのかもしれないな…負けず嫌い的な意味で。
「ま、身体能力的な意味で言ったらハルたちのほうがよっぽど面白いっス。ふたりとも怪物みたいな記録たたき出しそうだし、2人がどのくらいの記録を出すかっていう賭けも結構盛り上がってるっス。ちなみにピタリ賞の方には特別にサービススナップが付いて来るっス」
「…で、メインの方は何が売りなんだ?」
「ていうか誰と誰の勝負なんだ」
「誰と誰、っていうか、誰と誰と誰と誰と…うん。参加者は随時増加中っスけど、メインは三人の女子っスね」
「は?」
「…あぁ、なるほど」
何か納得した様子のリオール。
「おい、なに納得してんだよ。どういうことだ?」
「だから、あぁいうことっス」
ククリがそういってとある方向を指差した。
「あっちは女子会場だ………………ろぉ……?」
ククリが指差した方向は、体育館の中央で区切られた向こう側、つまり女子の体力測定会場…であるはずだった。
――――しかし今、俺の目に映っている”アレ”は何だろう。
黒い。なんか、黒い。
影とかじゃなくて、アレは闇だ。
特殊な磁力場のようなものが俺には見える。
そしてその中心には、
「まったく。貴女たちってひとは本当に往生際が悪いわね!もう私とハルは婚約してるの、許婚なの、フィアンセなの!もう勝負はついてると思わないの?」
「クスクスクス…クロアちゃんったら、意外にピュアなんですね?婚約ぐらいで安心するなんて…ゲロ甘ちゃんですよ」
「げ、ゲロ?!」
「あぁ、ゲロ甘だな。まぁ、例えお前とハルの婚約がいかに堅固な契約であろうが、アイツは私の後輩であり、生徒会の部下だ。会長である私の意に反した行為は断じて認めん。…ふ、ふふふ……婚約など、私の涙で一刀両断にしてくれるわ!!!」
「ちょ、調子に乗るんじゃないわよ!?アンタ達こそあんまりふざけたことばっか言ってると魔力弾で吹き飛ばすわよ!!」
「……なに、あれ?」
ククリに尋ねる。
するとククリはニヤニヤと笑いながら、
「女の戦いっス。いやぁー、ハルとクロアちゃんの婚約が公になってから、なんかアリスもアゼリア先輩も自分の気持ち隠すのやめたらしいっスね!すがすがしいくらいにオープンマインドっス!!」
「少しは隠せえぇぇぇ!!」
乙女の恥じらいは!純情は!!どこへ行った!?
「君みたいな鈍感相手に気持ちを隠していたらいつまでたっても報われないことこの上ないだろう。彼女達が正しい」
「お前は誰の味方だぁ!?」
「僕はいつだって僕だけの味方だ」
どこかで聞いたことのあるような台詞をほざくリオール。
「世間知らず!」
「貧乳!」
「釣り目!」
「鳩胸!」
「銃刀法違反!」
「まな板!」
「ていうかさっきから私の胸についての悪口ばっかり言ってる奴誰よ!?」
そして女子間で飛び交う低レベルな悪口の応酬。
ていうかクロア!お前一応貴族の一人娘なんだから少しはつつましくだなぁ!!
「ちょっとそこぉ!いつまでふざけてるの!もう体力測定開始の時間よ、さっさと動きなさい!!」
と、そこでピリリリリ、と笛の音が女子の言葉を遮った。
おぉ…あの低レベルなやり取りの割りに纏うオーラがすさまじすぎてどの先生も遠巻きにしていたのに、それをまさか女の先生が止めるだなんて……。
………あぁ?
「…………アリア、少佐?」
「あん、今はアルフィリアせんせい、って呼んでちょうだい、く・ろ・ね・こ・ちゃん♪」
「アルフィリアせんせい、ライザック君が気絶しましたー」
「あらあらあら…」
「ていうか前生徒会長…何なさってるんですか…」
全くである。