表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リターン  作者: 乾 澪
1/74

Ep1:日常

「行ってきます」

台所に立つ母親に声をかけてから家を出る。

ジリジリと照りつける太陽は今日も健在で、背中からじわりと汗がにじむのを感じる。

あぁ、今日も何も変わらない。いつも通り。

つまらない1日が、始まった。







自転車で走り始めてから10分ほど。

辺りにもチラホラ同じ制服を着たヤツらが現れ始め、みんな煩わしそうにシャツの袖を捲ったり汗を拭ったりしていた。

「よっす」背後から聞こえた声に振り向くと、俺と同じように自転車に跨った茶髪の男がいた。

「坂本か、おはよう」

「はよー。京本は今日も一段とアンニュイだなー」

俺が挨拶をすると坂本はいつもみたいにヘラヘラ笑いながら俺にそういった。

「お前、アンニュイの意味分かっていってんのか?」

「んー、いまいち?」

「ハハッ」

ぶりっこするように小首を傾げる坂本を見て、思わず笑ってしまう。

「あ、ウケた!」

「お前マジでキモい!!」

「なにぃ!?」

そんな風にふざけながら校門を通りすぎ、駐輪場で自転車を降りる。

「一時間目て数学?」

「物理じゃない?」

「うぎゃ、最低…」

坂本がうなるように声を上げて空を仰いだ。

「あー早く舞ちゃんの現国になんねーかなー」

俺も真似て空を見上げる。

真っ青な夏空。友達との楽しい会話。刺激は薄いけど、それなりに居心地の良いクラス。

(…でも)

ぼっかりと中央にあいた穴を、俺は見逃せない。そんな俺を、ギラリと輝く太陽が照りつける。

(……………あー……)

「京本ー?いくぞー」

いつまでも空を見上げている俺にしびれを切らして、少し離れた位置にいる坂本が声を上げる。

「今行く」

坂本のそばへ行くと、ワックスで固めた茶髪をいじりながら

「何考えてたん?」と尋ねられた。

「…別に、大したことじゃない。つまんねーこと」

「は?お前いつもつまんねーじゃん」

「うるせーよ!!」

否定しながら心の中で頷く。

そうだ。俺はつまらない人間。だから俺の世界もつまらない。




(そんな世界に太陽が墜ちて焼き尽きてしまえばいいのに)



「で、結局なに考えてたん?」

「だから、本当につまらないこと」

俺は笑いながら坂本に言った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ