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エルアラメインの魔女第三話(教会の魔法使い)

3人はモンスター狩りで戦いの実戦経験を積みながらベルファーレの故郷オーシャスビークを目指した。オーシャスビークはエルアラメインの森の近くの街だ。ミッションの森の魔女済む魔女の塔攻略の拠点としてはもってこいだった。


フェンディは俺に青魔法を教えてくれた。フェンディの教えは魔法学校の教師より判りやすかった。

一方、俺はフェンディに実戦的な剣を教えた。剣は時には汚い使い方、良く言えば、狡猾な技が有効だ。

又、2人の剣の連携もたくさん実践した。


フェンディはベルファーレにも魔法の手ほどきをした。フェンディの話によるとベルファーレが魔法が苦手なのはベルファーレが元々白の魔法を使う僧侶であるからだそうだ。


白の魔法は唯一神ヤーベの力を頼る魔法で、青の魔法は天使の力を頼る魔法だという。この2つは似て非なるもので、両方を同時に学ぶと混乱するというのだ。


つまりベルファーレは白の魔法の要領で青の魔法を学ぶので、青の魔法を理解できない。


「理系と文系の違いか?」


「違う」


フェンディが冷たい。ちょっとベルファーレに優しすぎないか?ちょっとジェラシーを感じる。

ベルファーレは故郷に彼女を残してきているらしいので、安心しているのだが、俺は嫉妬深いのだろうか?



俺たちは5日間の旅でオーシャスビークに辿りついた。


ベルファーレは自宅に向かったが、俺達2人は宿に泊まった。


だが、ベルファーレは直ぐに戻ってきた。


「大変だ、アルフィンが、アルフィンが大変なんだ。」


「誰なんだアルフィンて?」


「ガウディの馬鹿、ベルファーレの恋人に決まっているじゃない。」


「なんだって、何があったんだ。」


「アルフィンが森の魔女にさらわれたらしいんだ。今朝、森に野草を取りに行って戻ってこない。

今月に入ってもう、3人目らしい。近隣の村でも何人も行方不明の人が出ているらしんだ。」


「行くしか無いな。」


「そうね。」


「ベルファーレ、西の森に向かうぞ」


正直、もう少し3人のレベルを上げてから行きたかった。しかし、そんな事を言っている場合では無い事は明白だった。アルフィンをさらったのは森の魔女としか思えなかった。近隣の村の行方不明者も西の森周辺で姿を消している。


俺たちは西の森に入っていった。そして最初のモンスターに遭った。それはスケルトン(骸骨戦士)だった。


「おかしいな。魔女の手下は黒猫かお化けと決まっている。何故スケルトンなんだ?」


「ガウディ今はそれより戦いよ。」


「判った」


俺はミスリル銀のロングソードを抜くとスケルトンに切りかかった。フェンディも同様に魔法強化されたショートソードで戦い始め、ベルファーレはアーマークラスを上げる(防御力を上げる)呪文を唱え始めた。


スケルトンは厄介な相手だ。何しろ生きていない。いわゆるリビングアンデット。生ける屍なのだ。

生命が無いため、止めを刺すのが難しい。生けるものがあり得ない状態でも平気で攻撃してくる。もちろん痛みも感じない様だ。


この様な戦いをしていたら消耗が激しい。

調度ベルファーレがアーマークラスを上げる魔法を唱え終わった。

俺たちの防御力は増している。攻撃力も上げたい。ここはフェンディの出番だ。


「フェンディ、魔法で俺の剣に炎の力を!。ベルファーレ、フェンディに代わってスケルトンと戦ってくれ!」


ベルファーレはショートソードを抜き、フェンディと位置を代えて前に出る。

フェンディは魔術詠唱を開始した。スケルトンは炎の属性に弱い特性がある、俺は魔法学校では学力だけは高かったので、スケルトンの弱点を熟知していた。


俺はベルファーレに注意を払いつつ戦った。


フェンディの魔術が完成すると形勢は一気にこちらのものになった。炎の属性を持った俺のロングソードは面白い様にスケルトンを滅ぼす。ほどなくしてスケルトンは全滅した。


ベルファーレにも剣を教える必要があるな。以外と素質がありそうだ。


こうしてスケルトンとの戦いに勝利した俺達だったが、先程俺が疑問に思った点がやはり、皆、気になる様だった。このあたりにアンデットモンスターが出るという話は聞いた事が無い、やはり森の魔女になにかあったと考えるのが適切だろう。


その後スケルトンやゾンビ等アンデットモンスターを次々と倒し、遂に西の森の魔女の居城に辿りついた。


「いよいよだな。」


「そうね。」


「ええ」


3人共気が引き締まった。魔女の居城には今迄より強力なモンスターがいる事が予想された。


居城の入るとより強力なアンデットモンスター、レイスが現れた。


「こんな上位のモンスターは初めてだ。レイスは炎の属性に弱く無い」


俺は迂闊にも、弱気な発言をしてしまった。リーダーとして失格だ。

しかし、ベルファーレが意外な事を教えてくれる。


「さっきから言おうとしていたのですけど、僕ら僧侶はアンデットモンスターには強いですよ。僕らの攻撃魔法はアンデットに対しては強力に効くし、剣に聖なる呪文をかければ攻撃力は倍増しますよ」


俺もフェンディも知らなかった。魔術学校では習っていなかったし、傭兵団では僧侶と共闘した事が無かった。


「ベルファーレ中心に戦うか。ベルファーレ俺の剣に聖なる力を。フェンディ、レイスは魔法を使う、魔力防御の呪文を頼む。」


フェンディとベルファーレが呪文の詠唱に入ると、俺はロングソードでレイスと戦いを始めた。


しかし、レイスには俺の剣が効かない。レイスは魂の物体で、その体は霊そのものだ。物理攻撃では霊体にダメージを与えられ無い。レイスは俺の攻撃を無視して呪文の詠唱を始めた。この魔法はおそらくファイヤラ。レベルの高い炎の魔法だ。フェンディ間に合ってくれ。


レイスの呪文詠唱が終わる前に、フェンディの魔術詠唱が終わる、俺達の体に対魔法の防御が備わる。


そしてレイスの呪文詠唱が終わぅた。ファイラの炎が俺達を襲った。激しい炎が俺達をくるんだ。

しかし、フェンディの魔法防御のおかげで、致命傷にならない、あちこち火傷をおったが致命傷は無い。


そして待ちにまったべルファーレの魔法が完成し、聖なる力が俺の剣に宿る。


形勢は逆転した。レイスは俺の剣に聖なる力が宿った事を悟ったのか俺の剣を避け始める。


次の攻撃からはフェンディも攻撃に参加する。フェンディのショートソードは魔力が宿る、レイスも只では済まない。


フェンディとの連携はばっちりだった。時には俺がおとりとなり、フェンディが、又はフェンディがおとりとなり俺がレイスにダメージを与えて行く。そしてこの間にベルファーレが魔法詠唱を始める、おそらく白魔法の攻撃魔法だ。


防戦一方になるレイスに対して遂にベルファーレの攻撃魔法が炸裂する。レイスは一瞬で消え失せた。


戦いは終えたが俺達はぼろぼろだった。火傷にレイスの瘴気に侵され毒となった。


ベルファーレの魔法で治癒されてようやく立ち直った。


更に進むと今度の部屋には棺桶があった。棺が開き始める。俺達は棺桶の中の住人が誰なのか察しがついた。そんな酔狂なアンデットモンスターは一種類だけだ。


棺桶からはバンパイヤが出てきた。レイスよりも強力なアンデットだ。しかし、俺には一計があった。


「フェンディ、ベルファーレ前衛を頼む」


「え?」

「え?」


2人共驚く


「頼む、俺を信じてくれ」


2人が剣で戦い始めると俺はライティング(光)の魔法を唱え始めた。


レイスの時と同じ戦い方では消耗が激しい。俺は以前の傭兵隊でバンパイヤと戦った事があった。

バンパイヤは耐魔法に強く、剣技にも秀出ている。このバンパイヤに比較的有効な魔法が一つある。


フェンディとベルファーレがバンパイアと戦っている間にライティング(光)の魔法の詠唱を終える。


光が炸裂し、部屋中を照らす。


この魔法は通常はただ、灯りの為に使われる魔法で、魔法学校を出ていない人々にも知られる最もポピュラーな魔法だ。俺は確かに魔法の上達は遅かったが、一つだけ長所がある。それは俺の魔法の威力が桁違いな事だ。


バンパイヤは一瞬で灰燼と化した。バンパイヤの唯一の弱点は太陽の光に弱い事だ。俺のライティングは太陽並なのだ。


「今の魔法は何なの?」


フェンディが聞く


「ライティングですよ。呪文詠唱する人は少ないですけど、僕も必要なので良く判ります。」


フェンディはライティングの呪文に呪文詠唱した事が無かった。この魔法はほとんどの人がそうだ。

俺やベルファーレの様に魔法の苦手な人間はきちんと詠唱しないと発動しないが、大抵の魔法使いは呪文詠唱しないで使うのだ。


「しかし、バンパイヤがライティングに弱いという事は初めて知りましたよ。驚いた。それに、こんなに早くバンパイヤを倒せるなんて信じられない。」


「俺も前の傭兵隊でたまたまこの魔法を使ったら、バンパイヤが灰になったんだ。目くらましに使っただけなんだけど、何故か俺のライティングはバンパイヤに効くんだ。」


「それに今のライティングの光の大きさは何故?あんなに強く光るライティングは初めて見るわ。」


「俺は使える魔法は少ないけど、効果は大きいんだ。スリープなんか味方も寝てしまうから、実戦では使えない位なんだ。」


「エー。」

「えー。」


俺はちょっと気分が良くなった。耐バンパイヤには自信があった。



ほとんど無傷だったので、この階でのダメージは全く無かった。

俺達は直ぐに上の階に向かった。


そこにはあからさまに怪しい剣が一本、部屋の真ん中に刺さっていた。

赤い、古代文字が描かれた剣は明らかにマジックトラップと思われた。


「おそらくアンデット系のモンスターが出て来ると思う。フェンディ、魔法防御の呪文を頼む。ベルファーレはアーマークラスを上げてくれ。」


2人の魔法詠唱が終わるタイミングを待って、俺はロングソードで真ん中の剣に切り掛かった。

すると、灼熱の炎と共に炎の魔人イフリートが現れた。


「アンデットじゃ無いわ。」


「炎の精霊系最強のモンスターイフリートだ。炎の魔法が来るぞ。フェンディ魔力防御の重ねかけを頼む。ベルファーレ俺と剣で攻撃だ。」


「我を目覚めさせたのは貴様らか?我が主に仇なす者は許さん。ここを通りたければ、我を倒せ。」


イフリートは上級モンスターだ。人格を持つ。しかし、イフリートは決してアンデットモンスターでは無い。

何故、突然ここで炎の魔人が出てくるのかは謎だ。だがそれを考える余裕は無い。

イフリートはバンパイヤやレイスより強力なモンスターだからだ。


熱い。魔力防御されてもイフリートの周りは10000度もの高温だ。剣を打ち込むと手には灼熱の温度が伝わる。そして、イフリートは炎の魔法を唱えた、炎の最上位呪文ファイガだ。

凄まじい高温が俺達を襲う、俺は魔法詠唱中のフェンディをかばった。

かなりの火傷を負った。すかさず、ベルファーレが回復の呪文を唱え始める。


俺は火傷に耐え、イフリートと戦い続けた。やがて、フェンディの魔力防御の詠唱が完了する。

そして、ベルファーレの回復魔力が俺を包む。何とか、体制が整った。

フェンディの魔法のおかげで炎の魔法への耐性は強くなった。何とか戦える。


俺は更にフェンディに頼む。


「フェンディ、俺の剣に冷気の魔力強化を頼む。」


フェンディは俺の剣に冷気の魔法をかける。炎の魔人には冷気の魔法が有効だ。


「ベルファーレ、剣でフェンディを守れ。」


ベルファーレはフェンディとイフリートの間に入り、フェンディを守った。


俺はひたすらイフリートに戦いを挑む。しかし、ダメージをたいして与えられない。


強い、今迄のモンスターの中では格段に強い。しかし、炎の魔人には弱点がある、この魔人は冷気に弱いのだ。


ほどなくしてフェンディの冷気の魔法が俺の剣に宿る。


俺の剣の攻撃は大幅にダメージを与えられる様になった。


炎の魔人はその後も炎の魔法を唱えるが耐魔法防御に阻まれたいしてダメージを与えられない。

しかし、魔法防御の魔法も何時までも続かない。俺は焦った、このままでは、俺達の傭兵隊が全滅する。


「フェンディ、冷気の魔法ブリザドを頼む。」


フェンディは遂に冷気の攻撃魔法を唱え始めた。

これで止めを刺せれば。


フェンディの冷気の魔法は発動し、魔人に大きなダメージを与える。もう少しだ、しかし、魔法防御の効果は薄れてきている。一気に勝負をかける必要がある。


「ガウディ、あなたも冷気の攻撃魔法をお願い。」


俺はベルファーレと顔を見合わせる。冷気の魔法の最も簡単な魔法はレベル3のブリザラだ。

しかし、確かにフェンディの言う通り、それしか方法は無い、俺の剣にかけられた冷気魔法強化呪文も効果が消えかけているのだ。


フェンディもあわせて2人で冷気の魔法を唱え始める。ベルファーレは剣で俺たちの援護に回る。


先ずはフェンディの冷気の魔法、ブリザドが完成する、そして俺のレベルの低い冷気の攻撃魔法が完成する。


魔人に強烈な冷気が襲いかかる。特に俺の冷気の魔法は魔人に止めを刺す。


「不覚」


魔人は負けを認めた。


「その位で止めてもらえるかしら」


突然魔人の後ろから,人の声がかかる。


「誰だ?」


「皆は私の事を西の森の魔女と呼ぶわ。」


俺達は焦った。既に俺たちは魔力も体力も使い果たし。とても森の魔女と戦う気力は無い。


だが、ベルファーレは叫ぶ。


「アルフィンを返せ!」


「アルフィンをさらったのは私じゃ無いわ。」


どういう事だ?


「あなたの言うアルフィンさんをさらったのも近隣の人々をさらったのも、私では無いわ。」


「でも、シュツッツガルト公からあなたが最近ここ周辺で悪さを始めたと聞いたわ。」


「確かに最近悪さを始めたのは事実だけど。人さらいはしていないわ。それに、悪さもシュツッツガルト公の依頼よ。」


「どうゆう事だ?』


「あなた達はだまされたのよ。彼の本当の依頼はあなた達の大事な人をさらった張本人を滅ぼす事よ。彼は真犯人討伐の為にあなた達を私の元に送り込んだのよ。ここに来る頃にあなた達は十分なレベルアップが出来ているという寸法よ。」


俺達は森の魔女から真相を聞いた。


「オーシャスビークの教会の司祭がビカムアンデットの魔法を使ったの。彼は魔導探求の為、不死者への道を選び、そして、彼は『リッチ』となった。この森のダンジョンに住み、何か魔導の探求をしているわ。おそらく最近の行方不明者は彼の仕業だと思う。私は彼を倒しいのだけど、一人ではさすがに『リッチ』に勝てそうに無いから。シュツットガルト公に相談したの。そしてあなた達が送り込まれたという訳よ。」


俺達は驚いたが、ひとつ気になる点があった。それはオーシャスビークの教会の司祭。それはベルファーレの父親ではないか?そう思った。それにベルファーレの顔面は蒼白だった。


「父はそんな人じゃ無い!」


ベルファーレは半狂乱になる。気持ちは判る。しかし、状況から森の魔女の言う事は真実に思えた。


「ベルファーレ、真実は自分で確認するしかない。」


「それにアルフィンさんを助け出さなきゃ。」


「アルフィン。そうだアルフィンを助けなきゃ。」


ベルファーレが落ち着いてきたので、俺達は前後策を練った。当然『リッチ』の討伐だが、幸い森の魔女は『リッチ』の住むダンジョンの場所を知っていた。それに『リッチ』討伐に参加してくれるそうだ。


「ベルファーレ、きっとアルフィンさんは無事よ。4人で力を合わせて、助け出しましょう。」


フェンディがベルファーレを励ます。そして、俺達は一晩、西の魔女の塔で宿泊し、あくる朝『リッチ』のダンジョンを目指した。



未だこの国に吹く風はこれでも優しい。

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