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エルアラメインの魔女第二話(2つの月の昇る夜)

俺は魔法戦士、魔法がへたくそな魔法戦士だ。ただ、剣の腕前はかなりの物だ。魔法使いの証である青のマントの他、皮の鎧、ミスリル銀のロングソードを装備する。


一方、フェンディは魔法が得意な魔法戦士だ、独学で魔法を学んだ為、魔法使いの証である、青いマントを持たない。魔力強化されたショートソード、皮鎧を装備しているが、筋はいいのだが剣の腕前には若干不安が残る。。


魔法使いの証である青いマントを装備するが、魔法が苦手な俺、青いマントを持たないが魔法が得意なフェンディ、面白い組み合わせだ。


エルアラメインでフェンディと再会した後、俺達は早速エルアラメイン近くの森でモンスターハンターに勤しんだ。


そこでお互いの長所と短所は良くわかった。フェンディは魔法の方が得意な様だ。剣技は確かに優れているが、実際の実戦ではやや甘さが目立つ。誰にでも短所があるものだから仕方が無いとも思ったが、やや不可解だった。だが、ここではっきりしたのは、剣は俺が主に、魔法が主にフェンディが担当する事になった。


ひとしお戦いの実戦訓練を行ったが、2人とも同じ意見が出た。


「やはり、僧侶が必要だね。」2人の声が重なる。


「確かにそうね。エルアラメインの森はこの近くの森より強いモンスターがいるから、魔女の居城に付く頃には2人ともぼろぼろよ。回復魔法が使える僧侶が必要だわ。こんな時、兄さんがいてくれたら。」


兄さんとはフェンディと一緒に王都で遊んだフェンディの兄の事だった。彼は僧侶の魔法を取得すべく教会に入ったのだ。俺がフェンディの元から去った時より随分前のことだった。


俺たちは一旦エルアラメインに戻り、僧侶のいる教会へ向かった。誰か僧侶をスカウトする為だった。


僧侶とは唯一神ヤーベに使える者達で元々アルナロックに古くから存在した。ヤーベは幻の大陸アメリカから伝わったと言われている神だ。彼らも魔法が使えるが彼らのそれは俺たちの魔術とは大きく異なったものだった。ヤーベの魔法は傷を回復したり、魔法防御でアーマークラスを上げたりといった事が得意だった。もちろん攻撃的な魔法も使えるが、魔法使いより貧弱だった。


しかし、長旅での作戦では、傷をおったり、モンスターから毒をもらったりする事が多く、これらを癒してくれる彼らの存在は大きかった。傭兵隊でも彼らは重宝したが、圧倒的に数が少なく、契約する事は難しかった。


2人で教会へ向かい、交渉したが、やはり適当な人物はいなかった。そもそも彼らは博愛主義者が多く、殺生をこの好まず。傭兵隊に入るものは少なかった。


とりあえず、宿に帰ったが、そこで以外な伝言が入ったいた。魔法ギルドのおやじからだった。


伝言は「もう一人仲間が増えるぞ」との事だった。


「しかし、魔法使いや魔法戦士がこれ以上増えてもなあ」


「確かにね。今必要なのは僧侶だわ。でも、一度魔法ギルドに顔を出す必要があるんじゃ無い?」


「そうだな、あのおやじ、以外といいやつだから、無視するのも不義理だな。」


こうして2人は再びギルドを訪れた。


「やあ、久しぶりだな。仲良くやっているかお二人さん。まあ、二人きりを邪魔する様で悪いんだが、多分困ったいると思ってな。いい僧侶がいるんだ。」


「僧侶?」


俺たちは互いに顔を見合わせた。不思議な話だった。何故、魔法ギルドに僧侶がいるのだ。そんな話は聞いた事が無かった。


「まあ、とにかく、会ってみたらどうだ。」


俺たちはおやじの言う通り会ってみる事にした。


例の客間で1人の僧侶にあった。彼は青いマントを羽織っていた。


「おやじ何処に僧侶がいるんだ?彼は魔法使いじゃないのか?」


「いや彼は事実上僧侶だよ。あんたと同じで昨日仕事を探しに来たんだ。」


「どうゆうことだ?」


「もしかして、基本的にはガウディと同じじゃ無いの?ただ、彼は、青の魔法だけで無く、白の魔法が得意なんじゃないの?」


青の魔法とは青の大陸から伝わった魔法で俺たちの使う魔法の事だ、一方、白の魔法とは僧侶の魔法の事だ。


「いや少し違うんだ。僕は元々白の魔法が使える僧侶だったんだ。でも、ちょっとした理由で魔法学校に入って卒業したんだ。もちろん、お察しの通り、青魔法の才能は貧弱だよ。」


「何故僧侶が魔術学校に入ったんだい?」


「僕の家系は代々僧侶だ。父は厳格で厳しい人間だった。ありがちだけど、父親と衝突して家出して、魔法学校に入ったんだ。まさか、これ程、青魔法の才能が無いとは思わなかったけど。」


彼は俺同様屈折した人間の様だった。だが、俺よりはましな人格に思えた。


俺は彼を俺達の傭兵隊に迎えようと思った。どこか、自分と重なるものを感じたのは事実だ。


「フェンディ、彼を仲間に入れようと思うんだけど、君の意見はどうだろう?」


「もちろん賛成よ。やっと、私達の傭兵隊に僧侶が来たのね。良かったわ」


「わかった。じゃ、君、いや、まだ名前を聞いて無かった。君名前は?」


「僕の名前はベルファーレ。よろしくお願いします。」


こうしてベルファーレは仲間になった。俺ははやる気持ちを抑えられず。直ぐに3人でモンスター狩りに行きたいと心から思った。


「じゃ、3人で早速モンスター狩りに行こう」


「駄目よ。」


「なんで?」


「何故ですか?」


「今日は収穫祭の日よ。こんな日の夜にお仕事なんて駄目よ。今日はお祭りを楽しみましょう。」


『収穫祭』、長く忘れていた事だった。


子供の頃は本当に楽しみにしてた。何時の頃からだったが、自分とは関係無いものの様に思い込んでいた。


俺達は3人で収穫祭を楽しんだ。


フェンディは屋台のお菓子を食べまくっていた。後で、ダイエット始める事になると思う。


ベルファーレはとは途中ではぐれてしまった。宿泊先はわかっているので、又、明日合流だ。


気が付くとフェンディがお酒に興味を示した様で、じーとその泡が出る発泡酒を見ていた。


「私も大人だから、挑戦してみようかしら」


一度も飲んだこと無いんだ。


「まぁ、少し位ならいいだろ」


俺は発泡酒を2杯買い求めた。


フェンディは以外とお酒は平気だった。ちょっと、よこしまな考えもあったので、ちょっと、がっかり。


フェンディの顔は少し赤くなっていた。酔ってもフェンディは綺麗だった。好きな女性だから、ひいき目はあるかもしれないが大半の人はそう思うだろう。こんな娘と一緒に収穫祭を楽しめる事に幸せを感じた。


「河原にいかない?蛍がいるらしいよ。私、見た事が無いのよ。」


もちろん断る理由も無く、俺達は河原で蛍を鑑賞した。


風がフェンディの髪を撫でる。


蛍を見るフェンディの瞳がとても綺麗だ。


いつの間にかフェンディは俺の肩に寄り掛かって来た。平静を装っていたが、本当は心臓はバクバクだった。


俺は意を決してフェンディの唇を求めた。フェンディは拒まなかった。


夜空には2つの月が登っていた。蛍達が舞う中2人は唇を重ねた。


風が吹いている。そう、あの時もこんな夜だった。俺はフェンディの唇の感触が初めてでは無い事を思い出した。15歳の時、俺はある日の夜、そう、あの時も収穫祭の夜だった。フェンディとファーストキスをした。


あの時は突然、俺がフェンディに口づけをした。フェンディは拒まなかったが、震えていた。


そうか、フェンディが俺に好意を持ってくれる理由。それは、俺がファーストキスの相手だったからなのかもしれない。俺は卑怯な不意打ちでフェンディの特別な人になった。俺は罪悪感を覚えた。あの事がなかったら俺達はただの幼なじみなのかもしれない。フェンディは奇麗になった。俺なんかにはもったいない。


この国には未だ優しい風が吹いていた。

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