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狼の紋章 第五話(ベルリンの街にて)

あの悪夢の宴会の後、俺達は一晩、出発が遅れた。アンドレアスが二日酔いで動けなかった為だ。

今日、ようやく彼は復活し、出発が出来る事になった。


彼は2人の人物連れていた。2人共俺が知っている人達だった。


1人は俺の剣の師、ヤンベルグシュタットだ。もう一人は俺の魔法の師、クルトオルフ二ルソンだ。

2人共、魔法学校の教師だ。


俺はまず、クルトオルフ二ルソンに挨拶した。彼は魔法学校の校長だったからだ。又、俺の魔法の才能を見いだしたのも彼だ。最も、俺に才能は無かったのだが。


「お久しぶりです。先生。」


俺は感慨深いものを感じた。彼は俺の面倒をよく見てくれた。孤立していた俺に最も言葉をかけてくれたのは彼だ。


「久しぶりだな。ガウディ。わしはお前に謝らなければならない。わしは確かにお前から強い魔力を感じた。それは事実なのだ。しかし、お前は十分に魔法が使えなかった。わしにも理由はわからん。お前には確かに強い魔力があるはずなのだ。」


「先生、それはもう昔の話です。私はサムライです。剣に生きる人間です。それに、最近は少し、青魔法のレベルもあがったのです。」


「何、青魔法のレベルが!それは良かった。お前は使えさえすれば、強力な魔力で、絶大な威力を発揮するからな。本当に良かった。」


「先生には感謝しています。俺がサムライとなれたのも魔法が使えたからです。それは魔法学校を出たからです。先生のおかげで魔法学校を卒業出来ました。それは、とても感謝しています。」


「おお、お前がサムライとはな、年月の経つのが本当に早い事よ。」


俺はクルトオルフ二ルソンに感謝の言葉を伝えると次ぎに剣の師ヤンベルグシュタットに挨拶した。


「ヤンベルグシュタット、今ならあなたに剣で勝てるかもしれない。5年前は惜しいところで負けましたが、今なら。」


「ガウディ、俺もこの5年間成長しているぞ。それに、あれが俺の本気とでも思っていたのか?お前も妖刀ムラマサを持つ者だ。いづれ判るときが来る。いつか、又、あの続きをやろう。今度は俺を倒してみろ、俺は強いぞ。」


「望むところです。俺の剣はあなたから学んだものです。今迄、剣で遅れをとった事は一度もありません。」


「油断は禁物だ。ハーンのバンパイヤロードは剣の達人と聞く。俺でも勝てるかどうか。仲間の力を借りるのだ。フェンディ王女様を頼む。我ら臣下からの頼みだ。」


「わしからも頼む。いや、お前達の為にも。」


「ありがとうございます。」


彼らは餞別を持ってきていた。


俺とアルフィンにミスリルプレートを、フェンディとベレファーレにはミスリルチェーンメイルだ。


フェンディのチェーンメイルは王家から譲り受けた物だった。美しい装飾の鎧に赤いマントが映える。


「お前達が満足な鎧を身に付けていないのでは無いかと思ってな。防御も大切だぞ。達者でな無事帰還する事を望む。」


俺達は2人達に別れを告げると北の国ハーンを見ざした。


マリアフリンタにもここで別れを告げた。彼女はこれ以上、西の森の塔を離れなれなかった。


5人はハーンの王都ベルリンを目指した。途中、ベレファーレはアンドレアスに白魔法を学んだ。


フェンディとアルフィンは俺から剣を学んだ。


ハーン迄2週間かかって、やっと到着した。


俺達は早速、ハーン王に謁見した。


ハーン王はかなり参っているらしく、落胆していた。その為、謁見は挨拶程度で終わった。しかし、彼の息子ヨランが代わり、バンパイアに魅いられた姫ジュリエッタの事、ハーンの東に住むバンパイアロードの事を話してくれた。


最も、その前に一悶着あった。何故なら、ヨランは例のエロ王子だったからだ。


フェンディがヨラン王子を見るなり、大声を出す。


「エ、エロ王子」


「お前だって、暴力王女だろうが」


「なんですって。」


「まぁ、積もる話はあるだろうが、ここはまず、ミッションの話をしよう。」


アンドレアスが仲裁に入る。


「積もる話なんか無いわよ。」


フェンディはご機嫌斜めだった。


ヨランも同様の様子だ。彼は毒づく。


「この女のおかげで俺はすっかりエロ王子のレッテルを貼られてしまった。嫁の来てもありゃしない。」


それは自業自得だろう。


「まぁ、とにかく、ミッションの話だ。東のバンパイアロードは2度このベルリン城に浸入した。最初の浸入以来、妹の姫ジュリエッタの様子がおかしくなった。


我国ハーンの博士達の話しでは100年前にも同様な事件が東方の国であり、その時は街娘が3度目の訪問でバンパイアに噛まれ、バンパイアの花嫁となった。


花嫁はバンパイアに連れ去られ、その後、誰も見ていない。


バンパイアロードは東に居住を構える。ベルリン城近頃には彼しかバンパイアロードはいない、まず、彼が犯人としか思えない。


バンパイアロードに釈明を求めたが、回答はなかった。


長い道、彼は人間と共存してきた。この国の質の悪いバンパイア撲滅にも協力してくれていた。彼ら300年間誰も噛んでいないんだ。


アルナロックに古代魔法の術者を依頼したのはバンパイアロードを滅ぼす為だ。我が国にバンパイアを永遠に消し去るデリートの術者はいない。その為に君達を招聘した。


既に、バンパイアロード殲滅の部隊は複数編成された。俺達も明日にも出発する事になる。」


「俺達?ヨラン王子もバンパイア殲滅に出撃するのですか?」


「当たり前だ。アルナロックの客人にもし何かあったら、国際問題だ。


王族自ら警護するのが礼儀だ。


俺はこの国のバンパイア殲滅部隊の長でもある。」


こうして、俺達は北の国ハーンの東のバンパイアロードの城を目指し、旅する事になった。旅にはハーン王家よりヨランが随伴する。


アンドレアスはベルリン城で別れる事になった。彼はベルリン迄の案内人だ。バンパイア討伐には参加出来無い。女王の許可は無かったのだ。


季節は秋から冬へと変わりつつあった。風は以前より冷たい。

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