4/4
―結―
「変な夢だったな……。あれっ?」
コキコキと関節を鳴らしつつ、男がフラフラと起き上がると、なぜかプリンターは全ページの印刷を終え、最終ページの上には、夢に出てきたタバコの箱のようなものが乗っかっていた。
*
結論から言えば、男は転職に成功し、所得も余暇も増えた。
「まさか、ホントに塾長が改心するとは思わなかったな。いや、講師全員に退職金を渡して塾を閉めたから、元塾長か。ハハッ」
ほろ酔い気分の男の顔には、半年前には無かった生気がみなぎり、長押に掛けたハンガーには、真新しいスーツがある。
「新しい職場近くに広めの良い部屋が見付かったら、このアパートともおわかれだな。さらば、独身の日々よ!」
そう言うと、男は電灯の紐を引き、明日の内見に備え、夜も早い日付変更前に布団へと潜り込んだ。
*
漢字の「幸」と「辛」は、たった横棒一画の違いでしか無い。
男の夢に出た女は、本来ツライ目に遭うべき高慢不遜な族から、本来シアワセになるべき愚直朴訥の民に、一本の線を移動させたに過ぎないのである。
すべての不遇な人間に幸あれ。




