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第7話 オーシャンの健康診断

 俺は息を潜めて、トラッシュとオーシャンの会話を聞く。

 オーシャンは、トラッシュの格好を見て、疑問を抱いていた。


「ふーん、あんたがトラッシュか……。

 スカイが気に入っているらしいからどんだけ可愛いかと思ったら、顔も見られないほどの完全防御とはね……。

 女の子という割には、そんなに可愛くないのかい?」


「いえ、この『王宮ロイヤルガーデン』には、人工太陽があるので、日焼けしたくないだけです。


 多少人体に有害にならないようにしていると言っても、多少の紫外線は出ていますからね。


 他の人達や犯罪者達でも、この格好で農作業するように勧めています。

 まあ、今の所は、大した被害も出ていないようですけどね」


「ふーん、地球とかいう星は、自然の太陽とオゾン層で養われているが、ここでの植物を育てているのは、人工太陽に頼り切りというわけか。


 永久機関の発明には成功しているようだから、なんとかこの星を維持させることができているというわけか。


 王族というのも大変な仕事だね。

 華やかな生活の陰では、地道な作業で国民を維持しているわけだ……」


「あなたは、『島(二スィ)』地区の者ではありませんね。

スィネフォ』地区の者ですか?

 そちらの地区では、ここでは考えられないような犯罪が頻発していると聞きます」


「まあ、そうだね!

 多少はキツイ目にも遭っているかもね!

 労働と窃盗で食い繋いでいる現状だ。


 でも、まあ、あんたらには感謝しているよ!

 まず、巨大なビルの主要なドアを、空気が漏れないように設計して、施工してくれたようだね。


 そのおかげで、何万人かは生き残っているよ。

 あれが無ければ、今頃は全滅していた。

 今も、必要な物資は供給しようと努力している。


 まあ、そういう仕事をしている郵便配達員を狙って、空賊なんかが襲っているんだけどね。

 私は、あんたらを傷付けるつもりはないよ!」


「そうですか、それは嬉しいですね!

スィネフォ』地区の中には、私達を敵視して攻撃して来る人しか知らなかったので……。


 援助をしようと努力しているつもりですが、王宮が裕福な暮らしをしていると考えて、郵便配達員などを集中攻撃して来たりして来ると聞きました。

 その為、スカイなどは戦闘訓練を受けたりしているようです!」


「その様だね!

 今日も早速戦闘に巻き込まれていたよ。


 ナイフを持たせれば、バケモノ並みの強さだった。

 まあ、私の射撃には敵わないけどね!」


「ほう、射撃もできるのですか?

 私達は、物資を消費するのは避ける為、なるべく接近戦用の武器で戦う様にしている様ですが……。


スィネフォ』地区では、銃などの武器は多いのでしょうか?

 まあ、訓練していない者なら、スカイに敵うはずはありませんが……。

 一瞬にして、敵に懐に潜り込みますから……」


「うーん、地域自体は大きいからね!

 まだまだ独自で空気を生み出す技術を使って生活している人はいっぱいいるよ!

 天地が逆転するまでに、多少の時間は有ったからね。


 あんたらが準備した空気補給システムを利用している奴らも多いよ!

 約8割は、あんたらの空気補給で賄われているようだけど、少しは独自で空調循環システムを開発している奴らもいる」


「本当ですか?

 会ってみたいです!

 私達も開発に努力していますが、植物の光合成までには遠く及びませんから……。


 なんとか作物を作り出して、その光合成で酸素を作り出しているのが現状なのです。

 なので、永久機関の人工太陽が無くなって仕舞えば、この星に壊滅的な打撃になりかねないのです!」


「やっぱ、かなり無理をして、この星を維持している様だね!

 まずは、あんたにプレゼントだよ!


 紫外線を防ぐシステムくらいなら、私でも多少は知っている。

 あんた自身や農作物を作っている奴らのために使いなよ!」


「ありがとうございます!

 それで、今日はこちらにお伺いに?」


「いや、実は……」


 彼女達が話していると、俺が彼女達に合流した。

 俺の存在に気が付き、オーシャンもトラッシュも黙る。

 内容が分からなかったので、俺は何を話していたかを聞く。


「何、何を話していたの?」


「いや、今日、私がなぜ『島(二スィ)』のここへ来たかを……」


「ああ、ヤマネコのウンチを貰うために、こいつのウンチが出るのを待っているんだ!」


 俺がトラッシュにそう説明すると、トラッシュが不思議に思っていた。

 オーシャンの方を向き、こう尋ねて来た。


「ウンチが欲しいの?

 匂いフェチ?

 まさか、私のウンチも欲しいの?」


「ウオーい!

 私が欲しいのは、ウンチじゃないの!

 欲しいのは、ヤマネコが食べちゃった宝石!

 私の宝物なのよ!」


「ああ、なるほど。

 そういう事にしておきますよ!

 たとえ、本当は匂いフェチだとしても……」


 トラッシュがそう言ったので、俺も本気にする。


「じゃあ、洗わずに新鮮な物を渡した方が良いのかな?

 出たウンチは、全部オーシャンさんに渡すよ!」


「洗って!

 綺麗で清潔な状態で渡して!

 むしろ、出たばかりの物は見たくないよ!」


「え、良いんですか?

 独特の匂いがするかもしれませんよ?

 ヤマネコなんて、滅多にいませんからね!」


「うー、そう言われると、気になるけど……。

 じゃあ、健康診断だ!

 ヤマネコの体調も同時に見てあげるよ!


 こう見えても、いろいろ医学の知識があるからね!

 動物の便を診て、健康かどうかを判断するくらいならできるよ!」


 オーシャンの思わぬ博学に、トラッシュと俺が反応する。

 健康を事前に分かるとか、この星では奇跡に近い知識だった。

 病気になる事が事前に防げるなら、ぜひお願いしたい!


「そう言われると、私の健康も診てもらいたいですね!

 最近、腸の調子が良くない気がするんですよ……」


「俺もしてもらいたい!

 これから仕事をするから、自分の健康状態が知りたいです!」


「ふっ、もうなんでも来いって感じ?」


 オーシャンは、半泣き状態でそう言った。

 どうやら検便だけでなく、血液検査もできると言う。


 俺達は、『王宮ロイヤルガーデン』に泊まり込んで、健康診断をする事にした。


 トラッシュは、俺とオーシャン、それぞれに違う部屋をあてがう。

 3人は一緒に健康診断をしたり、遊んだりして時間を潰していた。

 楽しい時間はあっという間に過ぎて行く。


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