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第21話 オーシャンの爆弾処理

 俺は、自分の飛行艇を虚空に捨てて、アビス姫を救出していた。

 そうしなければ、彼女を救い出す事など出来なかっただろう。


 飛行艇を捨てての決死の特攻により、空賊が察知するよりも早く倒す事が可能になったのだ。


 俺は、空賊の飛行艇を操縦しながら、アビス姫の手当てをする。

 すると、彼女がオーシャンと無線で連絡して欲しいと言ってきた。


「どうした?

 オーシャンならば、きっとうまく爆弾を処理してくれているはずだ。

 何も心配する必要はないと思うが……」


「確かに、通常のオーシャンさんなら、爆弾を銃で弾き飛ばして、人工太陽にぶつけるなど簡単にできるでしょう。

 ですが、今回はこの星全ての命がかかっています。


 そう容易にできるような行為ではありません。

 きっと、緊張でガチガチになっているのかも……。

 そうなっていたら、最悪の事態が起こるかもしれません!」


 俺は、オーシャンが持っている携帯型の無線に連絡を取るように試みる。

 アビス姫の不安は現実の物になっていた。


 人工太陽の管理システムのところで爆弾を発見したは良いが、時間も無く、銃での破壊を試みている。


 普段ならば躊躇なく銃で撃ち壊す距離だが、場所が場所だけに緊張していた。

 銃を握る腕と指が震え、標準が定まらないでいた。


「くっそ、いつもなら一撃でどんな敵も倒して来たし、的としてもそこまで難しいレベルじゃない。

 だけど、時限爆弾だけを弾き飛ばさなければいけないというのは、結構難しいよ。


 更に、後ろの管理システムを傷付けてもダメとは……。

 自分の命だけなら、そこまで緊張もしないんだが……。

 この一撃を外せば、この星中の人間が死滅するのは避けなければ……。


 管理システムにも大きな改善策が必要だな。

 時間が迫れば迫るほど焦る……。

 絶対に外せないのに、こんな心理状態じゃ……」


 そう自分で言い聞かせていたが、次第に涙を流す。

 自分の命ならば危険に晒せても平気な彼女だったが、他人の命がかかると緊張して肩を震わせるほどの恐怖が込み上げて来るようだ。


「無理、無理だった……。

 私にしか出来ないというのは分かる。

 でも、代わって欲しいよ……」


 時限爆弾の表示が少しづつ減っていく毎に、彼女の恐怖心が増していた。

 額からの汗と涙が混ざり合い、拭っても止まらなくなっていた。

 涙と汗で目がくすみ、標準が定まらなくなる。


「落ち着け、落ち着け、落ち着け!」


 タオルで汗や涙を拭い、気持ちを落ち付けようとするが逆効果だった。

 息も荒くなり、精神状態もヤバイ感じになっていた。

 時限爆弾の表示は3分を切り、もう後がない状況だった。


「は、早く処理しないと……。

 爆弾が、爆発しちゃう……」


 目算で標準を定めていると、携帯型の無線から声が聞こえてきた。

 思わず、「ひゃあああああああ」という声を出して驚く。

 アビス姫の声を聞き、彼女が無事だったことを悟った。


「アビス姫、無事だったか……」


「はい、ご心配をおかけしました。

 そちらはどうでしょうか?」


「いや、ちょっとヤバイかも……。

 処理する方法も、やり方も分かっているんだが、緊張して……。

 手元が狂うかもしれない……、ごめん……」


「ちょっと待ってって!

 オーシャンさんの将来に関わる重要な話があるの。

 無線を繋げたままでいて!」


「うん、でも、あんまり時間がないよ……。

 1分くらいしかない状況だからね。

 それ以上は、時限爆弾が爆発しちゃうから……」


「うん、大丈夫だよ!」


 アビス姫は、オーシャンの緊張を無くす方法があるようだ。

 もう時間がない緊迫した状態であることは彼女も知っている。

 無線で連絡している間も、オーシャンの体は震えていた。


「オーシャンさんですか?」


「あ、はい。

 あれ、アビス姫は?」


「オーシャンさん、好きです!

 俺と結婚してください!

 一回会っただけですが、愛しています!」


「お前、総監督とかいう奴だな?

 嫌だよ、何プロポーズして来たんだ!

 アビス姫に変われ、バカ!」


「酷い、せめてデートだけでも……」


 オーシャンに振られて、総監督は落ち込んでいた。

 アビス姫は、オーシャンと再び話し合う。

 すると、オーシャンの笑い声が聞こえて来た。


「プッククク、アハハハハ……。

 これで失敗したら、アイツのプロポーズが嫌で自爆したと思われるかね。

 そこまで嫌っているわけでもないんだが……」


「緊張が解けたみたいですね。

 じゃあ、処理はお願いしますね!」


 オーシャンは、緊張が無くなり、体が震えているのが無くなっていた。


「アビス姫、やっぱりやるね。

 彼女にだけは、ガチで勝てる気がしないよ!」


 すでに、時限爆弾は10秒以内になっていた。

 オーシャンは、時限爆弾に狙いを定めて構える。

 どこに一撃を入れれば良いかがハッキリと分かるようになっていた。


「不思議な感じだね。

 銃の威力さえも手に取るように分かるよ。

 いつもの感覚が戻って来ただけじゃないね……」


 オーシャンは、運命の一撃を躊躇なく撃ち放った。

 彼女が狙うのは、時限爆弾と管理システム装置の接続部だった。


 少しでも管理システムに傷付けられない状況の中、時限爆弾だけを人工太陽の方へ弾き飛ばした。


 時限爆弾は、引き寄せられるかのごとく、人工太陽のところへ近付いていく。

 ぶつかるかと思った瞬間、時限爆弾が大爆発する。


「くう、爆風が……」


 オーシャンは、爆風が撒き散らす煙によって目が開けられなくなっていた。

 爆風の煙を過ぎ去るのを待つ。

 恐る恐る彼女が目を開き始めた。


「人工太陽は無事か?

 管理システムは大丈夫だと思うが……」


 彼女が人工太陽を見ると、いつもと変わらない情景が映し出されていた。

 保護のガラスも割れておらず、時限爆弾は全て燃やし尽くされていた。

 管理システムも異常はなく機能している。


「成功したみたいだな。

 はは、終わった後で冷や汗がすごいね。

 人工太陽が暑いのか、冷たいのか分からない状況だよ。


 とりあえず、アビス姫に無事処理したと報告しよう。

 後は、防護服を着て、人工太陽と管理システムの調査をしてもらえれば事件は解決だ」


 オーシャンが無線を弄ると、すぐにアビスの声が聞こえて来た。

 通信は繋いでいたので、爆発音は俺にも聞こえていた。

 彼女の集中力を上手く発揮できたようでホッとしていた。


「オーシャンさん、どうですか?

 爆発音がしましたけど、声が聞こえるという事は、無事だったようですね!

 応答してください!」


「はいはい、無事ですよ!

 緊張を解くために、いきなりプロポーズなんてさせないでください!

 笑って、逆にピンチになっていましたよ!」


「なんとか緊張も解けたようで良かったです!

 でも、本当にオーシャンさんにとっては、人生を変えるほどの大切な情報ですよね?」


「うん、まあ、振っておいた。

 まだ知り合いレベルだし……。

 それよりも、そっちの様子はどうだい?」


「犯人の空賊は全員捕らえました。

 後は、女の子達を解放するだけです。

 どうやら、数人の女性が囚われていたようで……」


 オーシャンにそう話していると、アビス姫が冷や汗をかき始めた。

 なんらかの恐怖を感じたのか、体が震えている。

 俺も、得体の知れない恐怖を感じ取っていた。


「囚われのはずの女性部屋から、異常なプレッシャーを感じる。

 どうやら、まだ危険が潜んでいる可能性があるな……。

 しばらく調査するために、通信を切るぞ!」


 俺は、無線を切って、戦闘に備える。

 アビス姫と共に、女性の部屋へゆっくりと入っていった。

 ボスは捕らえたというのに、何を恐れているのだろうか?

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