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第17話 俺VSアビス姫

 俺は、アビス姫がトラッシュの居場所をほのめかすような事を言っていたので、彼女が生きている事を知った。

 アビスを倒せば、トラッシュと結婚させてくれるという。


「本当に、あなたを倒せば、俺とトラッシュを結婚させてくれるのか?

 嘘や、冗談は通じないぞ!」


「ふう、少しはヤル気になったようだな。

 これで楽しいデートができるというものだ。

 ああ、断言してやるよ!


 お前が私と戦い、この手袋を片手でも外せれば、愛しのトラッシュに会わせてやるし、結婚も認めてやろう!

 ついでに、ゴーグルも返してやるよ!」


「アビス姫、覚悟してくださいね!」


 俺は、アビス姫を押し倒して、手袋を外す事を試みる。

 まずは、両手の手首を掴んで、動くを封じることにした。

 しかし、アビス姫には通用せず、腹を拳で殴られてしまう。


「うふふ、まずは素手での殴り合いかね?

 言っておくが、私は強いぞ!

 今のスカイでは、正攻法では通用しない!


 勝負の方法を相談してくれれば、少しは応じても良いぞ。

 チェスや将棋、トランプでも勝負可能だ。

 なんなら、運勝負のルーレットにするか?」


「くう、まずは普通に戦わせてもらうよ!

 君は女の子だ。

 長期戦になれば、俺の方が有利になる!」


 俺は、腹の痛みを耐えて起き上がった。

 彼女を捕まえれば、俺の勝ちだが、女の子を傷付ける事を戸惑っていた。

 それによって、動きや攻撃が鈍っている。


「どうやら、私が姫だから戸惑っているのか?

 遠慮はいらない。

 格闘の訓練だと思って勝負に臨んでいる。


 傷付ける事を恐れるな。

 アゴにアッパーでも食らわせれば、私も気絶してしまうだろう。

 そこを狙って打ち込んでくれば良い」


「じゃあ、遠慮なく本気でいきますよ!」


 俺は、拳で殴ると見せかけて、蹴りでアビス姫の腹を狙う。

 彼女はそれを察知して、体がダンスを踊っているかのようにガードをする。

 そして、流れるようにカウンターの蹴りを食らわせて来た。


 俺は攻撃を避け切れず、地面に叩きつけられる。

 どうやら技のキレやセンスなどは彼女の方が上だった。

 男性と女性という腕力のハンデさえ無いように感じる。


「ぐあ……」


「ふん、少しは楽しくなって来たかな?

 でも、まだハイハイが出来るようになったくらいかしら?

 私から手袋を奪うのは無理みたいね♡」


 アビスは、俺が反撃して来るようになったので、楽しそうな表情をしていた。

 指を舐めるような仕草をして、自分の手袋の破れを気にしていた。

 彼女が手袋を破っても俺の勝ちである事を理解しているようだ。


「すごいね、アビス姫。

 実力的には、ゴーグルを付けたスカイと同じくらいの実力だよ。

 農業をしているから腕力も強いし、格闘センスも良い。


 普通に戦っているだけでは、スカイに勝ち目がない。

 せめて、奇襲戦とか、油断している時じゃないと……。

 スカイの得意な分野で戦う方が勝率は上がるとは思うが……」


 俺が攻撃を止め、崩れ落ちたのを見て、アビスは温泉に戻る。

 湯船に浸かり、体を温めようとしているようだ。

 彼女が俺に後ろを向けた瞬間、俺は彼女に飛びかかった。


(正攻法では勝てない。

 なら、多少卑怯な手を使ってでも……)


 俺は、アビス姫の右手に注意を集中する。

 死角からの攻撃ならば、彼女も完全には対応できないはずだ。

 彼女の右手を捉えて、手袋を外す作戦に出た。


 アビス姫は、俺が近付いた瞬間、後ろに目があるかのごとく、俺の顔面に肘鉄を食らわせる。

 俺は防御もできず、鼻を強打して血を出していた。


「あら、ごめんなさい。

 私、背後から狙われる事が多いから、後ろからの攻撃には特に敏感なの。

 でもまあ、温泉で鼻血を出すなんて、私の体が魅力的過ぎたのかしら?」


 俺は、彼女のカウンターがあまりにも綺麗に決まった為、気絶して崩れ落ちていた。

 気を失った俺を、アビス姫は抱きかかえて支える。

 俺は、2人の介抱によって、布団に眠らされていた。


(この反射的なカウンター攻撃、逆にスカイの方が油断していたようだ。

 アビス姫、生半可な不意打ちでは勝てる見込みは無いだろう。

 私なら、麻酔弾で眠らせるくらいでやっと勝てるかもしれない……)


 オーシャンは、俺を布団に運びながら、アビス姫の強さに驚嘆していた。

 確かに、技のキレや格闘センスが凄いと、彼女の体にメロメロの状態になっていた。

 俺とアビス姫の戦闘は始まったばかりだ。


 朝になり、俺が目を冷ますと、2人はもう起きていた。

 朝風呂に入った後のようで、シャンプーの心地良い香りが漂う。

 俺が朝の挨拶をすると、グーッというお腹の音が鳴った。


「私では無いですよ。

 スカイがお腹を空かしているのでしょう?

 夕飯もまともに食べずに、体を動かしたり、海に入って体を冷やすから……」


「うう、確かに、お腹が空いているのは事実だ。

 でも、お腹の音は、別人だと思うよ?」


「ふふ、嘘はやめなさい!

 確実に、スカイのお腹が鳴りました!

 状況から見ても間違いありません!」


 アビス姫が俺を指差していると、俺と彼女の腹の音が同時に鳴った。

 その音を聞いて、オーシャンが笑い出す。


「アヒャヒャ、勝負は引き分けだね!

 早く、朝ご飯を一緒に食べようよ!

 まだ何の準備もしていないけど……」


 オーシャンの言葉を聞き、俺は思い出したようにアビス姫に語りかける。

 昨日は勝負にならなかったが、手袋を外す事を条件にして、彼女に得意な勝負を持ちかける事は可能だ。


「よし、ならば料理対決といこう!

 俺とアビス姫、どっちの作った料理が美味しいかで勝負をする。

 オーシャンが美味しいと思った料理を作った方の勝ちだ!

 アビス姫、負けたら手袋を脱いでもらうぜ!」


「ふん、面白い!

 負けたら、手袋だけじゃなく、服も全部脱いであげるよ♡

 温泉にも一緒に浸かってあげる!」


「いや、そこまでは……」


 俺の言葉に被せるように、オーシャンはこう語る。


「はいはい、じゃあ私がお題を決めようかね?

 テーマは、『絵に描いたような朝食』だ!

 食べて、ああ、美味しい朝ご飯で幸せというような感情を感じさせてくれ!」


「楽勝!」


「朝ご飯だからといって、油断しない事ね!

 私は和食だから、昨日の残りを使わしてもらうけど……」


 こうして、俺とアビス姫の対決が再び始まった。

 30分ほどで俺達の準備は完了する。

 3人で集まり、朝食を食べる事にした。


「では、2人が作った料理を見せてもらおうかな?

 まずは、期待の薄いスカイからだ!

 ショックを受けるのは、早い方が良いからな!」


「何を言っているのか知らないが、僕の料理はこれだ!」


 俺は、被っている蓋を開けて、料理が見えるようにした。


「おお!

 これは……」


 オーシャンは、俺の料理を見て黙ってしまった。

 体を震わせて、興奮を隠し切れないようだ。

 平静を装って、俺にこう尋ねてきた。


「とりあえず、何故それを出したか説明してくれるかね?」


「ふふん、あまりの美味しさに驚いているようだね!

 これは、この星で一番高いと思われるコーンフレークさ!

 栄養満点、牛乳と合わせれば、朝には元気が漲る最高の朝ご飯さ!


 中には、レーズン、ハチミツなどがふんだんに使われており、一口ごとに幸せを噛みしめる事ができる!

 俺は、月に一度はこれを食べている!」


「うん、まあ、美味しいよね……」


 彼らは一口食べるが、笑いを堪え切れないようだ。

 俺の必殺の朝食をなぜか素っ気ない態度で食す。

 実は、王宮では常備されている物だったとは、この時の俺は知らなかった。


「相手と時期が悪かったようですね。

 来たばかりの時ならつゆ知らず、1週間経った今では何の感動もありません。

 いえ、スカイに良い奥さんをあげようという気にはなるかもしれませんが……。


 さすがに、同情でオーシャンさんの判断が鈍るはずは……。

 そこまで考えて、これを選んだなら、私に勝ち目はありませんけど……。

 私の料理が美味いとヤバイかも……」


 アビス姫は、ブツブツと独り言を喋り、この料理勝負の奥深さを知り始めていた。

 オーシャンは、それに気付いてアドバイスする。

 どうやら思わぬ接戦になりかけたようだ。


「私は、感情に流されるような事はしない!

 どちらの料理を食べて、幸せを感じたかで勝敗を決める。

 アビス姫、自信を持って料理を出しなさい!」


 彼女の言葉に、アビス姫はふっと笑って料理の蓋を開けた。


「これは、決まったな!

 とりあえず、説明を……」


「はい、白いご飯に焼き魚、味噌汁に、野菜の炒め物と漬物です。

 さらに、デザートに杏仁豆腐をお付けしました!

 どうぞ、存分に堪能してください♡」


 俺とオーシャンは、夢中になって彼女の料理を平らげていた。

 俺が食べ終わると、アビス姫は俺に得意げな表情で近付いてきた。

 そして、微笑みながらこう言う。


「どう?

 私の料理の方が美味しいでしょう?


 特別に、『アビス姫大好き! 結婚して♡』と言えば、ゴーグルを返してあげようかな?


 その時は、昼食も夕食も愛情を込めて作ってあげるよ!

 まあ、私には完全敗北だけど……」


「いや、俺の料理が勝つから!

 俺のシリアルが、アビス姫の料理に負けるはずが無い!

 俺は、トラッシュと結婚する!」


「なあ、スカイ、味覚障害者なの?

 勝てるわけないじゃん!」


 そう言いつつも、アビスは不安になってオーシャンの方を見る。

 運命の審査が始まろうとしていた。

 オーシャンは、とりあえず両方の料理を食べて、完食させていた。


「では、第2回スカイVSアビス姫の対決の結果を発表します!

 私が食べ比べて、幸福だと思った料理は……。

 CMの後で!」


 こうして、対決の結果は次話に持ち越される事になった。

 果たして、俺はアビス姫に勝っているのだろうか?

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