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第9話 オーシャン、捕まる!

 トラッシュは、俺のお好み焼きに魔法をかけるという。

 お好み焼きソースを開けて、謎の呪文を言い始めた。

 そして、好き♡という文字をソースで書く。


「美味しくなあれ♡ 萌え萌えバッキューン♡

 はい、これでご主人様のハートを撃ち抜きました!

 きっと美味しくなっているはずです!」


「ふふ、これはまだ愛が足りない!

 お好み焼きやオムライスなどは、ご主人様の味の好みも知らなければ美味しく出来ない!


 俺は、濃厚なソース味が好きだ!

 この好き♡という文字の他にも、フリル模様や◎などで味付けしなければならないんだ!」


「くう、メイドとしては、まだまだ修行不足でした!

 これからもご主人様が喜んでくれるように精進いたします!」


 俺とトラッシュのやり取りを見て、オーシャンは冷や汗を垂らす。

 どうやらメイドという職業を舐めていたらしい。


 可愛いだけではなく、ご主人様への愛、他の人への接し方、歌や踊り、料理など全てにおいて精通していなければならない。


 そして、メイド自身が楽しむ事も重要なポイントなのだ。

 それらを総合して、ようやく有能なメイドさんと言えるのだ。


 オーシャンは、確かに露出も多く、美人だし、スタイルも良い。

 しかし、メイドという点においては、トラッシュの足元にも及ばなかった。

 恥じらいや萌え要素を含んでこその大人の女性と言えるのだ。


「この勝負、トラッシュの勝ちだ!

 オーシャンは、自分の武器を全く使い熟していない!

 彼女と互角に戦うのなら、せめて高級スーツとメガネに教鞭くらいを装備しなくては……」


「それ、ありますよ!

 早速持ってまいります!」


 俺の言葉を聞き、トラッシュはオーシャンに合うスーツとメガネ、教鞭を準備し始めた。

 彼女の衣装室には、大小様々なサイズの服が並べられているという。


 どうやら、この星で使われていない服は、自動的に彼女のところへ集められるという。

 女性を探し出して保護した場合、住む場所や食料、衣服なども完備されているのだ。


 まず、人間を増やしていく事と、物資を調達する事によって、この星を人間の住みやすい場所にするというのが王女の仕事だ。

 トラッシュも出来る限りの事をして、この星に貢献しようとしていた。


「ふう、良い生活を送ってはいるようだが、彼女は彼女なりに頑張っているようだね。

 中々好感が持てるよ!」


「ああ、トラッシュは凄いよ!

 朝から晩まで農作物の世話をしているし、水や物資も節約している。

 彼女達がいなければ、この星はすでに死の星になっていた事だろう。


 ヤマネコなどの野生動物がいるのも、彼女が動物達を自然に近い環境で世話しているからに他ならない。


スィネフォ』地区で発見した野生生物は、王宮に送られて保護されているからな。


 男性だけは、仕事をする事によって保護してくれるようだが……。

 今の王女様は凄い賢いという評判だ!

 もっとも、トラッシュ達に対しては厳しいらしいけど……」


「トラッシュ?

 妹の名前じゃないのかい?

 聞き慣れない言葉だね?」


「ああ、本来ならば、足や目、体が不自由な者達さ。

 生まれつきの重度な障害を持っている人達は、本来処分されていた。


 それを、トラッシュと呼ばれる彼女が生まれた事によって王族が急遽が変更させたんだ。


 とりあえず処分はせずに、働かせようという算段だ。

 それによって、体が不自由でも生かされるようになった。


 その代わり、結婚などの制限はあるし、偏見や虐待も多くなった。

 中でも、トラッシュの姉のアビス姫は酷いという……。


 結婚相手もすぐに切り捨てるし、トラッシュにも酷い扱いをする。

 体が不自由な者を一番嫌っている王女様らしい。


 今日の朝に初めて出会ったが、顔や体はトラッシュに似ていたけど、目は恐ろしいほど鋭かった。

 俺でさえも体が震えたのを感じたよ!」


「それを、恋と呼ぶ……」


「いや、恐怖でだよ!

 あの冷酷な目は、自分を他の人間とは違うとして蔑んでいる感じだ。

 利用価値がないと思えば、すぐに切り捨てられるかも……」


 俺がそう語った後で、廊下を走ってきたトラッシュが姿を現した。

 手には、教師のコスプレ衣装を持っている。


 壁伝いに、俺がアビス姫の悪口を言っていることを聞いていたらしい。

 さすがに、俺は言い過ぎたのではないかと不安になる。


 トラッシュは、無表情な顔をしていた。

 俺が彼女の顔色を窺っていることが分かると、途端に笑顔になり、喋り始めた。


「私の姉は、そういう人です!

 我儘で横暴で、私を一番に嫌っています。

 権力を持つようになってからは、その事が顕著に表れています。


 そうは言っても、良い面を持ってもいるのですが……。

 スカイには、姉の良い面を探って欲しいくらいですね。

 彼女は私の分身です。


 姉とスカイが結婚して子供が生まれたら、ほとんど私の子供と同じなんです。

 実の所、私はスカイと姉がそういう関係になる事を望んでいます。

 子供の産めない私ですが、姉とスカイが結婚すれば幸せを感じられるのです!」


「いや、俺はトラッシュに惚れているんだ!

 たとえ、顔やスタイルは似ていても、アビス姫と結婚する気はないぜ!


 まあ、彼女の協力で、トラッシュが俺の子供を持てるように交渉してはみるけど……。


 俺は、トラッシュと一緒に幸せになりたいんだ。

 その決意を変える気は一切ないぜ!」


「そうですか……。

 まあ、そうでしょうね……」


 トラッシュは、悲しそうな顔をして笑っていた。

 まあ、双子の姉を退けたようなものだ。

 彼女が少し暗い表情になっても仕方はない。


 逆に、オーシャンはテンションが上がっていた。

 修学旅行の女子高生のような雰囲気になり、恋話に凄く敏感だった。

 俺とトラッシュが両想いと感じて、俺達を茶化す。


「おいおい、もうラブラブじゃないですか!

 私は少し2人の関係に嫉妬していますよ!

 私も幼馴染の恋人が欲しいですね……。


 まあ、幼馴染でなくても素敵な男性なら別にいいんだけど……。

 この星では、若い男性は空賊くらいしか知り合いがなくて、私がトキメクようなシュチュエーションも中々無いんだよね!」


 オーシャンがそう言って、ガッカリしたポーズをしてみせる。

 トラッシュは、その言葉を真剣に考え始めていた。

 どうやら、オーシャンが本気で恋人が欲しいと思っているらしい。


 俺が見る限り、オーシャンはまだ結婚のことは大して真面目に考えていない。

 仕事に集中するキャリアウーマンのような雰囲気だった。


 トラッシュが持って来た服を連想したことによって、そうイメージしてしまったのかもしれないが……。


 トラッシュは、彼女の服を着せつつこう言った。

 オーシャンが徐々に、セクシーな女性教諭になりつつあった。


「大丈夫です!

 こんな事もあろうかと、ある男性を呼んでおります。

 彼は、オーシャンさんと同じ年齢だと思うので、すぐに恋人同士になれますよ♡」


「は、はい?

 あんた、手際が良過ぎないか?

 本当に、ただの蔑まれたお姫様なのかい?

 お見合い結婚を紹介して、執り行うおばちゃんじゃないのかい?」


「ふふ、何を言っているのか分かりませんが、私も王族である以上は、この星の子孫を繁栄させなければなりません。

 その為には、スムーズな結婚と子作りが重要なのです。


 私の持っているネットワークを駆使して、オーシャンさんに最高のパートナーを紹介するくらい造作もありません。

 元気な子供を幾人も作り出すシステムも確立しつつあるのです!」


「くっ、これが王宮の実力なのね……。

 でも、残念ですね。

 私は郵便配達員、重要な仕事を担っている女なのです。

 すぐに男性と結婚というわけには……」


「ふふ、その点も抜かりはありません!

 あなたが郵便配達員ならば、より良い調整を図ってくれるでしょう!

 そろそろ彼が来る予定です!」


「あんた、何を言って……」


 トラッシュがオーシャンの服を着替え終えると、食堂の扉がギーという音を立てて開き始めた。

 俺が見ていると、俺の上司である総監督が姿を現した。


「ごめんください!

 姫様より連絡を受けて来たのですが……。

 なんでも、美しい女性を紹介して貰えるとか……」


 総監督がそう話すと、トラッシュが笑顔でこう語り出す。

 どうやら、最初見た時からオーシャンの素性を疑っていたらしい。

 彼女の隙をついて、後ろ手に手錠をはめていた。


「はい、スカイが怪しい女性を捕らえて来ました。

 一応、彼女自身が郵便配達員と自己申告しているので、総監督に相談して貰える様にしました。


 とても美しくスタイルも良い女性ですよ!

 私の目算では、総監督と同い年だと感じられます。

 まずは、会って確かめてください!」


「くう、あんた、ここまで計算して?

 この衣装も、正装といえば正装だから……」


「はい、私は一通りの郵便配達員の顔と名前は記憶しています。

 オーシャンさんの顔と名前は記憶していないので、空賊ではないかと推測しました。

 そして、適当に時間を稼いで、総監督が来るのを待っていたんです」


「くっそう、逃げられない……」


 オーシャンはガチャガチャ手錠を鳴らして逃げようとするが、重たい鉄の手錠の前には彼女も素早く逃げる事ができない。

 俺の反射的な押さえ込みによって、四つん這いになる形で取り押さえられていた。

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