表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/4

バウンティハンター

 動画を再生すると生々しい戦闘シーンが再生された。

 阿鼻叫喚の中、刀を振り回す人々。


 しかし、次々とあっけなく凍らされていった。

「なるほど、地面を凍らせて、凍る範囲を広げてるのか」

「それにしても、兄さん、朝倉の凍らせる速度が早いね。周りの人は一瞬で凍っちゃったよ」

 葵は無表情でスマホの画面を見つめている。

「ああ、それに加えて凍らせられる範囲も広い。常人では離れた距離から発砲してもそう当たらないだろう」

「そうだね。それに凍らせた人を盾にしてるもんね」

 朝倉東は不完全な状態に凍らせた人を担ぎながら歩いていた。

 人質は助けて......助けて......と呟いている。

 こいつは人質だぞという牽制のためだろう。

 凍らされていない、朝倉の存在に気づいた人は一目散に逃げ出していった

 銃刀法違反が廃止されたとは言え、誤射でもシリアルキラーではない人に撃てばそれなりの罪に問われてしまう。

 シリアルキラーから逃げて、警察を呼ぶのが普通の判断だろう。

 まぁ、その警察すら人質のせいで為す術がないわけだが。


「でも兄さんなら一キロメートルくらい離れていても狙撃できるよね!」

「そうなんですか? 荊さん」

 茉央は目を輝かせながら俺の方を見つめてきた。

「ああ。だが、朝倉東の場所がわからないことにはどうしようもない。帽子とマスクをつけているから確信なく狙撃するなんてことはできないな」

「それじゃ、不意打ちはダメってことね」

「そうだな。あくまで奴が動いた時にこっちから向かって狩るしかない。しかし、もし奴が人質を抱えたまま動くなら正直、狙うのは至難の技だ。一発では恐らくは殺しきることができない。最低でも五発は打ち込む必要がある。おそらく一発は流れ弾が人質に命中するだろう」

「近づいたら負け。離れても殺すのは厳しいか。一体どうしたもんかね〜」

 お手上げという感じで葵が愚痴をこぼした。


「あくまでお二人は朝倉東を殺すおつもりなんですか?」

「ああ、殺さない方が懸賞金は五倍高くもらえるが殺さずして倒せる相手ではないからな」

「そう......なんですか」

 警察が発表する懸賞金は殺したときの懸賞金を掲示している。

 生け捕りにして警察に引き渡せば五倍の懸賞金を受け取ることができる。

 朝倉東の懸賞金は百万円なので、生け捕りで渡せば五百万円という高額になるが、手加減して奴を狩ることは難しいだろう。


「それでだ。葵にやってもらいたいことは一つ。朝倉東の隙を作る囮になってほしい」

「でもどうやって、いくら私でもあの氷には凍るよ?」

 俺はブラウザバッグボタンを押し、Amazonのサイトにアクセスした。

「まぁ、任せておけ。注文はしておく」

「注文?」「注文?」

 葵と茉央は同時に呟いた。


 作戦会議をしてから三日後の木曜日の放課後、俺は東京の某所で朝倉東が暴れているという事件をツイッターで知った。

 葵にも連絡をし、俺は一足先に現場へと向かわせた。


 少し離れた方に、地面が凍っているのが確認できた。

 あそこに朝倉東はいるのだろう。

 俺は近くのビルの屋上に移動した。高い場所からの方が狙いやすい。

 望遠鏡で奴の位置を確認した。

 距離は恐らくは二百メートルくらい。

 この程度、狙撃銃を使うまでもない。

 ショットガンで充分だ。

 葵から電話が来た。


「葵か。もう現場に着いたか? ちゃんと『例の奴』身につけて来たか?」

「うん、大丈夫。もう、作戦実行していい?」

「ああ。よろしく、それじゃ、ご武運を」


 俺は電話を切った。

 事故現場から朝倉東の様子を確認していると、葵の姿が確認できた。

 俺の指示どうり、葵は防寒服と『例の奴』を身につけていた。

 ちなみに朝倉東は予想通り、人質を担いでいた。


「その子を話しなさい!」

 葵の声が聞こえてきた。

 自慢じゃないが俺は耳がいい。離れていても話し声をキャッチすることができる。

「なんだお前は?」

「私は賞金狩りの秋月葵。あなたを狩りに来たわ!」

 葵は日本刀を取り出し、鞘を抜いた。

 ここまでは予想どうりである。

「人質がいる状態で俺に切り込めるかな?」

「く!」

 葵は苦悶に満ちた表情を浮かべた。まぁ、これは作戦のうち。

 演技である。

「こないならこっちから行くぞ!」

 朝倉東は自分の右手を地面につけた。

 氷は氷に伝播し、葵の靴にも向かった。

 しかし、葵の靴は凍らない。

 葵はRSFラボという研究所で開発された絶対に凍らない靴を履いている。

 以前、俺が大物youtuberの商品レビューの動画を見たときのその存在を知った。

 原理は不明だが特殊な材質でできていて、絶対に凍る事はないのである。

 ちなみに一足、十五万円する。

 靴から脚、身体、そして頭部へと凍らせるのがチェルスハンドの力だが今はそれが無効である。

 靴さえ凍らなければ、直接、体に触れない限り凍らされる事はない。

 奴は見事、罠にハマった。

「何!?」

 ーー今だ。

 奴の腕に狙いを定めてショットガンの引き金を引いた。

 銃弾は狙いどうり、奴の腕に直撃し、腕は弾き飛んだ。

「うがぁ!」

 朝倉東は激痛に苛まれたようである。

 奴は人質を放り投げた。

 いて! という声が聞こえたが、人質は無事なようである。


「さすが兄さん!」

 葵は一気に朝倉東との距離を詰め、奴の体に切りかかった。

「い、痛ぇ!」

 奴の体から、大量の血が流れ出た。

「この!」

 抵抗のつまりか氷の破片を葵に投げつけた。が、葵はこれを刀で防いだ。

 

 朝倉東は呻き声を上げながら走り出した。

 葵なら追いつくだろうが、アシストしてやろう。

 両脚に銃弾を打ち込んだ。

「うがぁ!」

 朝倉東は地面に這い蹲り、腕で左手で移動しようと試みている。

 しかし、うまく前に進めていないようである。

 葵が近づき、柄の部分で朝倉東の頭を殴り、気絶させた。

 これで狩り成功だな。


 葵から電話がかかってきた。

「兄さん、見てる?」

「ああ、見てたぞ。よくやった」

「朝倉東は生かしておく?」

「そうだな。賢所金の額も増えるしな。警察に電話したあと、俺もそっちに向かう。一応、警戒しておいてくれ」

「ラジャ」

 

 そして、十五分後に警察が到着し、俺と葵は朝倉東を警察に引き渡した。

「君たち、まだこんな事してるのか」

 俺と葵は賞金狩りの件で何度も警察の件でお世話になっている。

「ええ、別にいいでしょう。それよりも懸賞金、よろしくお願いしますよ」

「まぁいい。あんまり無茶はしてくれるなよ」

 そう言われても俺は賞金狩りをやめる気はない。

 金も欲しい。が、それだけではない。


 翌日、茉央が俺の教室にやってきた。

「ありがとうございます。朝倉倉を狩ってくれて。」

「別に茉央さんのためじゃない。自分のためだ」

 朝倉東の動画を見たあと、俺は茉央の母親を殺したシリアルキラーの情報をもらった。

 そのシリアルキラーは赤髪の長髪で人を焼却させるマーダーフォース。

 そして、日本で焼却殺人事件が頻発していること。

 一致した。

 それだけで、かなり有益な情報だ。


「あの、どうして荊さんはシリアルキラー狩りをしてるんですか? お金のためだけってわけじゃないですよね」

「俺もシリアルキラーだからかな」

 俺は茉央に微笑みかけた。

「嘘つきですね。いいです、言いたくなければ。一応、これお礼です。良かったら食べてください」

 茉央は俺に紙袋を渡すと、教室から出て行った。

 中身を見たら焦げたクッキーだった。

 食べてみたが正直、不味い。

 葵と料理のレベルがどっこいどっこいだな。


 俺はこれからもシリアルキラーを狩る。

 母を殺したシリアルキラーをこの手で殺すまで。




 

 




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ