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秋月葵(あかつきあおい)

「話を詳しく聞かせてもらいましょうか」

 姉の仇を討ちたいというこの少女の話をとりあえずは訊くことにした。

「私、藤崎綺音の妹の藤崎茉央ふじさきまおって言います。もしかしたらニュースで見たかもしれないですけど、昨日、うちの姉はシリアルキラーに殺されたんです」

「なるほど、朝倉東にか。それで、俺の噂を聞きつけてやってきたってわけか」

「はい。それで、差しがましいお願いなんですが、朝倉東を狩ってくれませんでしょうか? もちろんお礼はしますので」

「断る」

 俺は低く冷たい声で拒絶した。

 茉央は驚愕の表情をした。


「そんな! どうして!」

「どうしても何も

。なぜ俺が赤の他人のために命を賭けてまでシリアルキラーを狩らないんだ。俺は慈善運動のためにシリアルキラーを狩ってるわけじゃない」

「でもいつも、あなたはシリアルキラーを狩ってるじゃないですか」

「それはほぼ狩れると自信のあるシリアルキラーに狙いを絞ってやってるから大した危険はない。いつも俺や妹の狩ってるシリアルキラーの懸賞金は高くてもせいぜい30万程度。対して朝倉倉は100万越えのシリアルキラーだ。さすがに分が悪い」

「あなたでも、勝てる自信がないってことですか?」

「はっきり言えばな」


 茉央の表情が暗くなったように感じた。悪いことをしただろうか。

 だが、罪悪感はない。

「悪いことは言わない。いつか警察が捕まえてくれるのを信じるんだ」

 諭すように茉央に語りかけた。

「警察なんて、当てになりません!」

 茉央の顔が紅潮した。

 突然の激昂に俺は面食らった。

「姉だけじゃありません。私の母も、私がもの心着く前からシリアルキラーに殺されました」

「......」

「母を殺したシリアルキラーもまだ捕まっていません! まだのうのうと生きてます! 私はシリアルキラーを許せない! 荊さんがやらないのなら構いません。私が自分の力で狩ってきます」

 そう言うと茉央は歩き出した。

「待て」

 声を掛けると茉央は立ち止まり、振り向いた。

「なんですか?」

「気が変わった。協力してやろう」

 茉央はまるで鳩が豆鉄砲をくらったような顔をした。

 さすがに俺の変わり身の早さに驚いたのだろうか。

「どうして急に」

「あんたの母親を殺したっていうシリアルキラーに興味を持ってな。その情報をくれるなら協力してやるよ」

「え? それはどういう......」

「いいから。あんたの母親を殺したシリアルキラーの情報を教えてくれるか?」

「朝倉東を狩ってくれるなら」

「よし、交渉成立だ。よろしくな茉央さん」

 俺は放課後、茉央に屋上に来るように指示をした。

 葵のやつにも連絡を入れた。

 屋上に赴いたがまだ茉央も葵も来ていなかった。



 スマホでツイッターを監視し、3分後に葵が到着した。

「お待たせ、お兄さん。話っていうのは?」

「葵、もう少し待ってくれ。もう一人来るから」

 すると、ちょうど良く茉央がやってきた。

「すみません、荊さん遅くなりました」

 葵は茉央を見た瞬間、真顔になって俺に問いてきた。

「お兄さん、何なの? この人?」

 瞳孔が開いている。なんか、怖い。

「えっと、この人は昨日、シリアルキラーに殺されたうちの生徒の妹さんだ。朝倉倉を狩ってほしいって頼まれてな」

「藤崎茉央って言います。よろしくお願いします。葵さん」

 ぺこりとお辞儀をして葵に挨拶をした。

「つまり、この人のために朝倉倉を狩るってわけ? 報酬は何? まさかこの人の体?」

 淡々と訊いてきて怖い。

「ち、違う。茉央さんは姉だけではなく、小さいとき母親も別のシリアルキラーに殺されたんだ。そのシリアルキラーの情報を聞こうと思ってな」

 すると、茉央の表情は元に戻った。

「お兄さん、まだ......」

「協力したくないなら別にいい。お前に任せる」

 葵はやれやれみたいな顔をした。

「協力しないわけないじゃん。お兄さんは私がいないとダメだし」

「そうか、ありがとう」

 俺は葵に微笑みかけた。

「えーと、それじゃ荊さん、葵さん何から話せばいいでしょうか」

「茉央さんの母親を殺したシリアルキラーの話はとりあえず後でいい。朝倉東の情報をできるだけ教えてくれ」

「はい」

 

 そして、俺と葵は朝倉東に関する情報を茉央から聞いた。

 とはいえ、あんまり有益な情報を得ることはできなかった。

 ネットで事足りる情報がメインだった。

 役に立ちそうな情報といえば、夕方あたりに人混みに紛れて襲いかかる傾向があるということ。

 朝倉東の服装は顔を隠すために帽子とマスクを身につけていることだが、たくさん人のいる東京ではあんまり有益な情報とは言い難い。


「それにしても、どうして警察や他の人たちは朝倉東を倒せなかったんだろ」

 葵が疑問を呟いた。

「どうしてって......それは能力が強いからじゃないか?」

「だって、特に防具とかも身につけてないんでしょ? 銃で倒せるんじゃないの?」

 言われてみれば確かにそうだ。シリアルキラーになると、身体能力は上がるのだが、それでも銃弾を食らうと普通にやつらにとっても致命傷......とまではいかなくても大ダメージにはなる。

 俺は今までのシリアルキラー狩りで防具に覆われていないところを狙撃したことがなんどもある。

 防弾チョッキといった防具を身につけていなければ大ダメージは不可避だろう。

 銃刀法違反が存在しない今、警察だけでなく市民も銃を持っていてもおかしくはない。

 あいつの能力的に右手に触れさえしなければ発砲だけで倒せるだろう。

「そういえば、YouTubeで朝倉東の戦闘シーンがアップロードされてます。見てみますか?」

 茉央が提案してきた。

「俺らはいいけど......茉央さんは見ないほうが」

 俺は茉央にトラウマを甦らせないために忠告した。

「いや、見ます! 姉の仇をうつために。朝倉東の弱点を見つけます!」

「分かった、それじゃ見るぞ」

 俺はスマホを取り出し、Youtubeにアップロードされてある朝倉東の動画を再生した。

 











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