プロローグ
ドッペルゲンガー、その言葉を聴いたらまず何を思い浮かべますか?
自身の分身のような存在?あるいは、何者かに造られた別の存在ではないでしょうか。
どのように思い浮かべても、どうせ一生見る事のない存在だと思うだろう。しかし、少しでも考えてみて貰おう、それらは、ただ気づかないだけでそこにいるかも知れない。
何で存在しているのかも不明確のまま、世界中の研究員が調べ上げる中、一人の施設から全てが始まった――
「霧丘博士、今回の実験も失敗です!」
その研究所で白衣を着ている研究員とぼしき男性六名は、何やら怪しい実験を試みていた。
「失敗作は、すぐに処理しろ、この研究所に不必要なサンプルはいらない!」
冷酷極まりない声で指示を出す霧丘博士、フルネーム霧丘十次郎を即座に頷く研究員達。
「了解しました!」
研究員が頷いてすぐさま固体を運びスクラップ場へと投げ込んだ。
「次の実験に移行する。皆直ちに次の個体の用意を」
「「は!!」」
短い返答で大急ぎで準備に掛かり始めた研究員達は、次に黒髪の少年を連れてきた。
現れた少年の表情には一切の感情が反映していない。
その黒い瞳に何も映させず、むしろ瞳にあるであろう光を閉ざしているかのようにも見える。
拒絶感を漂わせ、連れてきた研究員ですら嫌悪を抱かせる程だった。
少年は、態度以外は、従順に研究員の指示に従った。
テーブルの上に座らせた少年は、仰向けに横たわらせ、何やら怪しい液体を注射器に投入し、少年の腕に移した。
変化を待つように研究員達全員が沈黙のまま、赤外線センサーを通してモニターに張り付いたままの者も少年の様子を診る者もいた。
その直後――
少年は、激痛に冒され、藻掻き苦しみながら悲鳴を上げていた。
モニターにいた研究員達は、予測数値を遥かに超える演算で故障を修正に移り、赤く染まった画面に成す術もなく、イジるだけイジっても何も変わる事はなかった。
少年を見ていた研究員達は、少年を取り押さえて診察に移った。
けれど、他の個体になかった反応だと、捉えた霧丘博士は、笑いを堪えながら笑みを浮かべた。
「いよいよだ!!この反応を待っていたんだ!!」
何をするべきか困惑する研究員達を余所に霧丘博士は、手術用手袋を取り外し、研究所を出た。
結果を見届けず姿を消した博士。
その所在を知る者はいなかったそうだ……
如何にか少年を落ち着かせる事に成功した研究員達は、博士がいなくなった事に気づき、焦ったがその心配させる間もなく――
……――――――………
――研究所は、爆発し、何もかもが消滅した……