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ひとりヨリふたり  作者: 柴田 鴨
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出逢

学校の屋上なんて普段なら来ない。

そもそもフェンスも何も無いので、生徒の立ち入り自体を禁じている。だから自分しかいない。

寧ろそれで都合が良いのだ。自分一人だけ此処にいる事で、これからの行動を邪魔する者も現れない。


一歩踏み出せば、そこは空気の上。

硬くて冷たいアスファルトまで一直線、真っ逆さまに落ちていく結末を見る事になる。

危険だろうが、それが目的だ。


正直な所こんなくだらない理由で人生に幕を下ろすなんて本当に馬鹿なんだろうと思う。


今朝、下駄箱の中の内履きに画鋲が無数に詰められていた。教室に向かえば周囲からは蔑む笑い声。酷い時には蹴飛ばされる事もあった。


いざ授業が始まったら後ろの席の人間から消しゴムを投げられ、虫が止まっていたからという明らかに冗談と聞こえる理由で思い切り教科書で頭を叩かれたりもした。


いい加減疲れてしまった。


見た目が根暗であるからと、入学数日で急速にスクールカーストの一番下にまで落ちた。それから先に述べた通りの、人間を相手にしているとは思えない扱いを受けてきて、きっと卒業するまでこのままだ。もしかしたら卒業してからも解放なんてされないのかもしれない。


そんなの、こっちから願い下げ。


だから落ちる。落ちて、生きる事から逃げてやるんだ。

私の残骸を見る事で、私を散々馬鹿にしてきた連中に後悔させてやりたい。


____さようなら世界。









「死ぬの?」



「ぅえっ!?」



あまりにも唐突に背後から声を掛けられる。

声を掛けられる?いや、可笑しい。この場には今私しかいないはずなんだ。なのに…。


恐る恐る振り返ってみると、数m先に確かにこの学校の制服を着た男子生徒と思しき人物が立っていた。


「何か嫌な事でもあった?」


本当に心配だとでも言う様な表情で、ゆっくりと此方へ歩み寄ってくる。

予想すらしていなかった展開に頭が真っ白になる。何故生徒がこんなタイミングで屋上になんて来ているのだろうか、それよりもこの状況をどう始末しようか。

何かを言わなければならないと解ってはいるのだが、どうしても脳内の整理が追い付かずに彼を見続けるしか出来なくなっていた。


「目の前で人に死なれるなんて、気分が悪いよ。悩み事があるなら僕が聞くから…とりあえず、その場所から離れてほしい」


優しく語り掛ける柔らかい声色に涙が溢れそうになる。

私はその瞬間に気を失ってしまい、崩れ落ちるように床へ倒れた。





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