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自称平凡少年の異世界学園生活  作者: 木島綾太
【五ノ章】納涼祭
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第六十三話 学園長の呼び出し

『スキル』

 《クラス:クレバー》

 =《飛躍上達(クイック・グロウ)》《異想顕現(アナザーグレイス)

 《万■ノ結■》

 =《■血ノ■》《七魔ノ■》《護焔ノ■》《■癒ノ■》《■■ノ■》

 《魔力操作》

 《アイテムシューター》

 《高速事務作業》

 《大物殺し》


 《鍛冶師(スミス):中級》

 =《魔導武具理解》《一心入魂》《完全修理》

 =《ヘヴィエンチャント》《ライトエンチャント》《最適鍛錬》

 《装飾細工師(アクセデザイナー):中級》

 =《凝り性》《裁縫上手》《高速修繕》

 =《鉱石特性付与》《魔物特性付与》《特性強化》


 《錬金術師(アルケミスト):中級》

 =《爆薬精製》《薬品精製》《フルーティテイスト》

 =《霊薬精製》《成分抽出》《素材合成》

 《ルーン操術師:初級》

 =《高速刻印》《能力付与》《属性付与》

 《指導者(メンター):上級》

 =《戦術指導》《技巧継承》《素質開花》


 《盗賊(シーフ):中級》

 =《トラップ解除》《罠利用》《罠摘出》

 =《スティール》《安全第一》《早解き》

 《魔法使い(メイジ):初級》

 =《魔法看破》《アクセラレート》《コンセントレート》

 《召喚士(サモナー):初級》

 =《契約召喚》《世話上手》《オーダー》

 《連舞剣士(ソードダンサー):初級》

 =《フレームアヴォイド》《フレームパリィ》


 《鑑定:初級》

 =《素材看破》《解読術》《熟考理解》

 《各耐性系》

 =《出血》《痛覚》《毒》《炎》《雷》《氷》

 《身体補助系》

 =《俊足》《強靭》《器用》《不屈》《感応》


「おー…………長いわ」

「俺もそう思う」


 衣替えの季節となり、全体的に薄手の制服に切り替わり。

 ホームルーム前の、まばらに生徒が集まった二年七組の教室で。

 一つの机に集まった“アカツキ荘”の面々は、俺のデバイスを覗いていた。基本的に他人のを見るのはご法度だが、身内ならば問題ない。


「ここまで支援型クラスのスキルを高めてると壮観だな」

「鍛冶師が中級に上がったのを皮切りに他のも中級に上がったからね。補助スキルもだいぶ増えたし」


 腕を組んで唸るエリックを見上げて、改めてデバイスを見る。

 錬金術は頻繁にやっていたので、俺のクラススキルの影響もあり成長するのは時間の問題だと予想していた。

 想定外だったのは装飾細工の方。ちょっと諸事情で特殊な素材を使ったら急成長したのだ。


 知見のある人に話を聞くと、扱う素材が自身の技量を越えているにもかかわらず、無事に完成させると稀にそうなるらしい。鍛冶でも錬金術でも同じ現象が起こるようだ。

 出来た装身具(アクセサリー)は会心の出来だったので嬉しくもあり、これってある種のパワーレベリングでは……? とズルをした気分にもなったが。

 小さい女の子が二人、満面の笑みで身に着けているのを見たらそんな気持ちも晴れた。

 こまけぇことは気にしないに限る。


「こんなにスキルを取得してたら大変じゃないかい? どれを使おうとか迷うだろ」

「ほとんどがパッシブ系の物ですから、クロトさんがメインで使うスキルは片手で数える程度ですよ」

「ああ、それもそうか」


 流れるような水色の髪を適当にまとめて縛ったエリックの姉貴分、セリスの言葉に(かんざし)の鈴を鳴らしながら黒髪のポニーテールを揺らすカグヤが冷静に言う。

 二人して端正な顔に同年代より整った体型の美少女で、七組の中でもトップクラスの美貌の持ち主である。


 俺を含めたこの四人と姉弟の妹分であるユキ、七組の頼れる担任教師シルフィ先生と酒浸りのフレン学園長の七人で、アカツキ荘にて共同生活をしているのだ。

 ……改めて考えるとおかしいよな。男女比なんと二対五、肩身が狭い。

 おかげで男性陣のお風呂が日曜大工で急遽(きゅうきょ)設営した、屋外ドラム缶風呂に変わったりしたのだ。悪天候だと入浴不可になるが。


「文字化けのスキルも多少読めるようになったが、相変わらず意味が分からねぇな。何の効果があるんだ?」

「知らん。そんなこと考えるより返済すべき借金がある」


 口では言いつつ、不安に思う事はある。

 以前使用した《異想顕現(アナザーグレイス)》は厄ネタの感じがするし、文字化けスキルは単純に意味不明で怖い。国外遠征で発現した“虹の力”も詳細は不明。

 イレーネが何やら訳アリだからと個人的に調べてくれているが、未知を未知で固められた俺の身体は謎だらけである。怖い。


「入学金の返済、あとどれくらい残ってるんだっけ?」

「割と頑張って一〇〇〇万メル。この調子で続ければ二か月後くらいには返せるかな」

「ただ日用品や食費代は毎日掛かる。装備のメンテナンス……なんかはクロトがやってくれるおかげで、それなりに節約できてるとはいえ気が遠くなるな」

「……私達も手伝いはしてますが、やはり時間が掛かるものですね」

「額が額だからねぇ、迷宮の瓦礫撤去費用も本当ならこれくらいだったみたいだし。でも一人で返してた頃よりずっと楽だから、根気よくいこ──」


 ……ピーンポーン、パーンポーン。

 どこからともなく響いた校内放送の音に身体が強張(こわば)る。


『二年七組アカツキ・クロトくん、学園長がお呼びです。至急、学園長室に向かってください』

「出たよちくしょうめ。朝に伝えればいいのに登校してからわざわざ呼ぶなよ……」

「無理だろ。だってあの人、今朝二日酔いでダウンしてたじゃん」


 四人が揃ってため息を落とす。これまでの生活で“アカツキ荘”のメンバーは、学園長の痴態を見てしまっているからだ。

 酒を浴びる、愚痴りまくる、有り金を溶かしたような表情でソファに座るなど。

 ニルヴァーナ最高権力者の立場もあって気苦労は多いから、家でくらい羽目を外したいのだろう。その気持ちは痛いほどわかる。

 でも限度があると思うんですよ。毎日酔い覚ましの薬を作らされるんですよ。飲んでる酒に対応して用法容量変えて作るから面倒なんですよ。

 勘弁してくれ。


「はあ……まあ、お弁当渡し忘れてたし丁度いいや。行ってきます」

「おう。また後でな」


 見送る三人に手を振って教室を出る。すると、廊下の陰から一人の女子が飛び出し、どこかへ走り去っていった。

 ……あの後ろ姿、配達の時に助けたヤツだな。こんな所で何をやってたんだ?

 ふと湧いた疑問に首を傾げるが、とにかく学園長の元へ急ごう。


 ◆◇◆◇◆


「あっ、クロト君だ」

「ああ、ノエル会長。おはよう」


 お弁当を片手に学園長室のある階に上がり、廊下を曲がろうとしてバッタリ出会った。元気よく手を挙げてセミロングの銀髪を揺らし、寄ってくる。

 彼女は実力者が勢揃いしている生徒会のトップ、学園が誇る最強の学生冒険者──ノエル・ハーヴェイであり、俺と同様に魔剣の適合者だ。


 ある意味、印象的な初対面であった中間テスト最終日。アカツキ荘の前で膝を抱えていた本人から“自分は敵ではない”と宣言された。

 安易に信じるのもどうかと思ったが、後日カラミティの話題を出した途端に飛び出る奴らへの文句を耳にし、ちゃんと味方であると再認識。そこから顔を合わせる機会も増えた。


 しかし外部の依頼を要請される彼女は基本的に学園にはいない。こうして挨拶するのも五日ぶりくらいだ。

 あまり悠長に話してる時間もないので、彼女の持つ魔剣が何の異能かもよく分かっていない。本人が言うには“地味な異能”らしいが。


「会長も呼び出し受けたの?」

「ううん、ボクは依頼完了の書類を提出しに来ただけ。頼まれた物は全部終わらせたから、ようやくゆっくりできそうだよ」

「そうかぁ……見た感じすっごいやつれてるから、ちゃんと寝た方がいいよ」

「ほんと? うーん、西へ東へ忙しかったしなぁ。保健室で休もうかな」

「そして授業を受けないから勉強遅れて期末で赤点を取るんだ」

「やめて、マジでやめて。ただでさえ中間で成績悪くて周りに白い目で見られてるのに、そんなこと言わないでっ!」


 赤い瞳を歪ませ、頭を抱えながら階段を下りていく会長を見送る。

 一応、彼女もカラミティに接触され、狙われる側の存在。学園最強だと(はや)し立てられても、あんな風に学業で悩む姿は学生らしい。

 生徒会長の激務をこなし、生徒や教師に頼り頼られ、何事にも真摯(しんし)に取り組む姿は見習いたいものだ。


「っと、感心してる場合じゃないや。学園長? 来たよ」

「はーい、どうぞ」


 扉をノックして、返答を聞いてから入る。

 調度品の飾ってある棚や観葉植物、来客用のソファにテーブルが置かれた部屋の奥に。

 執務机の上に山積みされた書類を生気の無い瞳で見つめるフレンがいた。


「うわっ。これ全部、会長がやった依頼か?」

「いや、自警団からの注意喚起とか商会からの嘆願書で半々くらいよ。最近なんだか治安が悪くなってるのよね、柄の悪い連中が増えてるっていうか」

「らしいね。自警団の見回りを手伝ってる時に団員がぼやいてたよ」

「人的被害が出る前に対処できてるからいいけど、商会が保有する建物の破損が目立ち始めたみたいでね。なんとか原因を突き止められればいいんだけど……」


 眉根を寄せた顔を揉みほぐし、咳払いを一つ。


「まあいいわ、君を呼んだ理由とは関係ないし。それよりも今月の特待生依頼よ」


 やっぱりか。的中した予感に項垂(うなだ)れる。

 俺が学園に所属する条件として課せられた役割である“特待生”。

 お金も戸籍も実績も無い凡人を継続して編入させる為に、月ごとに学園長や教師から言い渡される依頼をこなし、存在価値を上げる──いわば内申点稼ぎのようなものだ。


 先月の国外遠征は月初めに言われたのに、この時期になってもまだ言われなかったからおかしいとは思ってたんだよな。

 首筋を撫でながら顔を上げると一枚の書面が差し出される。学園の年間行事表だ。


「今月の終わりに納涼祭っていう、街も学園も巻き込んだお祭りを三日間にかけて開催するのよ。君に分かりやすく言うなら大規模な文化祭ってところかしら。初等部も中等部も高等部も、生徒主導で企画して出店を開くのよ」

「へぇ……夏に長期休みがあるのは知ってたけど、その直前にこんな行事があるのか」


 俺がこの世界の人間でない事を知る学園長の補足を聞き、改めて行事表を見下ろす。

 “納涼祭”……これから来る厳しい夏に向けてニルヴァーナ全体でバカ騒ぎして、熱量には熱量をぶつけて相殺し、暑さに立ち向かおうという趣旨の祭りだそうだ。

 日本では七月から八月のお盆と重なるぐらいで開催される事の多い祭りと名称は同じだが、少し目的が違うし、こちらの納涼祭はだいぶ時期が早い。


 他国でも認知されているようで、大勢の人がニルヴァーナに訪れるのだとか。普段から相当の賑わいを見せる大通り(メインストリート)はいつも以上に騒々しくなるらしい。商売人にとっては稼ぎ時だな。

 ……納涼祭が近い為、空気に当てられた人達が暴動(まが)いの行動を起こしてるのでは? とも思ったが。


「毎年そういう問題が起きなかった訳ではないわ。でも、まだ準備すら始めてない今日の時点で去年の三倍は被害報告が来ている……さすがに異常よ」


 書類の束を叩き、フレンは細く息を吐く。例年にない事態だから自警団も警戒し、学園の方に注意を促しているんだな。

 不用意に路地裏へ入り込まないように。

 不審な様子の人がいたらすぐさま自警団へ通報を。

 寮住まいでない初等部や中等部の生徒は明るい時間に帰宅すること。

 他にも様々な要項が書かれた書類を流し見てフレンへ返す。


「話は戻して特待生依頼についてだけど──納涼祭において二年七組の出店をどの組よりも盛り上げなさい」

「……遠征と比べて随分と毛色が違うような……」

「でも重要な事よ? 納涼祭で得た顧客はニルヴァーナ、引いては学園を評価し関心を深める。さらに人が来れば来るほど各店舗の売り上げは増えるし、その組で稼いだ分は打ち上げに使ってもいい」


 なるほど、学園らしい自由なやり方だ。


「はぁー……とりあえず、今回の依頼では大きなケガしなくて済みそうで安心したよ」

「遠征から帰ってきた君を見た時の衝撃は未だに忘れてないわ。全身包帯だらけって何よ、何したらそんな状態になるのよ」

「文句はグリモワールの頭のおかしい企業に言って。俺は悪くない」


 呆れた顔でこめかみを押さえるフレンにお弁当を手渡す。

 中身は簡単なサンドイッチとデザートの果物。仕事に追われる立場の彼女にとって、手早く食べられる料理はありがたいだろう。

 受け取って、拝むような仕草をしてから机の下に仕舞う。そうしているとホームルーム開始の予鈴が鳴り、教室に戻るように言われた。

 げっそりとした表情で書類に手をつけるフレンに苦笑し、部屋を出る。


「納涼祭を盛り上げる、か……」


 七組に向かう道中、頭に思い浮かぶのは中学・高校の文化祭。

 中学の頃は音楽コンクールだ演劇だの発表会のような物がほとんどで、お祭り感は無かった。事故で入院して参加できなかった時もあったし。

 かといって高校時代は何故か出店の売り上げを盗んだとあらぬ疑いをかけられ、真犯人を捕まえたにもかかわらず金に目が眩んだ強盗だ、クソ野郎だと罵倒されて散々だった記憶しかない。

 仲の良いクラスメイトや教師が説得してくれたおかげで、クラスの雰囲気が悪化する事は無かったが。


 総じて“楽しかった”と心から思えるような行事ではなかった。

 だがこの世界では、この学園ではどうだろうか。今まで経験した事の無い面白さを感じられるだろうか。

 依頼だから、という意識はもちろんあるが……折角の祭りを存分に楽しみたい。その為に俺が出来る事を可能な限りやろう。

 胸に湧く高揚感を抑えたまま、足早に廊下を進み。


「まずは七組の出し物を決めないとな」


 窓から見上げた空は、まだ朝だというのに。

 夏らしい大きな雲を浮かべていた。

色々と詰め込みたかったけど、情報量が多くなりそうだったので三千文字くらい消しました。

おかげで生徒会長との絡みがさっぱりしたものになってしまった……これじゃ浅漬けだ……

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