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自称平凡少年の異世界学園生活  作者: 木島綾太
【七ノ章】日輪が示す道の先に
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第二一四話 歴史に積まれた標

膨大な情報量に呑まれるアカツキ荘。

そして次の目的に向けて動き出す。

 急成長したユキ、詰問の時間、朝食後の爆弾発言、と。

 二転三転とした展開が続き、朝にもかかわらず疲労を感じてきた。

 しかし、ここで止まってはいけない。ようやく視力が戻った今、本格的に動き出さなくてはいけないのだ。


「では、改めて──ツクモと出会って判明した事実をお知らせします」


 先伸ばしにしてきた魔剣の真実を語る為に。

 屋敷の一室にアカツキ荘の全員を集め、顔を見渡してから、俺は早速音頭を取った。


「今まで色々あって先延ばしにしてましたが、ようやくカラミティの曖昧な目的に目処が立ったんですよね?」

「思い返せば遠回りっつーか、クロトの負担がとんでもねぇっつーか……」

「アタシらじゃ到達するにはムズ過ぎるってのもあるが、とんでもねぇわな。というか、なんでこれまで黙ってたんだい?」

「あまりにも生々しい始まりのお話だったから」

「クロトさんがそこまで覚悟するほどですか?」


 カグヤの再確認するようなセリフに頷く。

 彼女の計らいによって影の者の監視も無く、この空間には本当に身内しかいない。劇物だらけの膨大な情報量を聞いても、どうにかなるだろう。


「どうしよう、この場にいるのが怖くなってきたわね」

「大丈夫? ユキが手を握っててあげる!」

「純朴な気遣いが()みるわ……あれ、意外とがっちり握るわね。途中退室も許さない感じなの?」

「いかなる情報といえど、私たちは既に深淵へ足を踏み込んでいるようなものです。諦めて受け入れてください」

「ひぃん……」


 涙目の学園長を拘束するユキ、諭すシルフィに視線を送ってから。

 俺はレオ達を召喚し、左右に広げて設置する。


「記憶が無いとはいえ、当事者であるレオ達の補足もありきで聞いてもらえたら、幾分か分かりやすいと思う」

『うむ、請け負った。とはいえ、どこから話した物か』

『やはり星の創生、平行世界、神とは何かという前提の認識を……』

『クロトさんだから受け入れてましたけど、普通は正気を疑うお話ですよね』

『だが、オレ達に繋がる重要な事象だ。全体を把握するには必須だろう?』

「言葉の端々に覗く単語で嫌な予感しかしねぇ……」


 心底、頭が痛そうに。エリックはこめかみを抑えてぼやいた。

 申し訳ないけど、まだホシハミについて語ってないから衝撃は弱いのだ。


「それじゃあ、早速始めていくよ──」


 様々な反応を尻目に、口火を切る。

 ツクモからもたらされた、幾つもの真実。常人であれば、普通に生活していれば知り得ない真相。

 星の生まれ、平行世界、神という超常存在。

 文明、生命体を(おびや)かす外宇宙の脅威、ホシハミ。

 討伐は不可能だとしても封印に動いた古代文明の守護者。


 彼らによって生み出された鍵であり、封印器具である魔剣の数々。

 それらによってホシハミは時空断層へ放逐されたが、奴の残した爪痕が時代を経ても影響している、と。

 イレーネはともかく、さすがに俺の両親が出てくる部分は端折ったが、おおむねこんなところだろう。


『…………』

「みんな静かになっちゃった」

『誰だってそうなるだろう』


 かなり短縮して一時間と掛からなかった。

 しかし怒涛の流れに気圧(けお)され、アカツキ荘の面々は沈黙。彼らを前に、同情するようなセリフをゴートが漏らした。


「まあ、待て……レオ達が元々、古代人だってのは分かった」

「肉体と精神を刀剣に置換する……並大抵の技術力ではありませんよ」

「んで、ホシハミの目覚めを促そうとするカラミティの奴らより先に、魔剣を集めりゃいいって話だな?」

「クロトさんに集約されたら、ひとまず安心ですからね」

「鍵として機能させなければいいんだから、考えようによっては楽かも?」

「敵は倒す! シンプルにやろう!」


 腕を組み、首を傾げ、顔を見合わせ、拳を突き合わせる。

 理解と納得を得た何人かが行動を起こし、やる気を(みなぎ)らせていた。


「結構、突拍子の無い情報ばっかりだと思ったけど大丈夫?」

「ぶっちゃけ星だ、世界だ、神だ、ホシハミだと……スケールがデカすぎて想像できねぇよ。けど、やるべき事は単純だし、今までとそう変わんねぇだろ?」

「ユキも言ってたが、カラミティが向かってくるんならブッ飛ばせばいいし」

「まずは目先の事から解決していきましょうか」

『全員クロトの言動に慣れたおかげか、容易に事態を許容できるようになったようだな。素晴らしいことだ』

『事と次第によっては哀れとしか思えんぞ』


 あまりにも失礼では?

 遠慮の無い発言を口にするゴート、レオに心中でツッコむ。しかし、どこかホッとした気持ちがあるのも確かだった。

 エリックがぼやいていた通り、話が大きすぎる。既に個人でどうにかできる領域を逸脱しているのだ。

 協力して事の解決に動かざるを得ないのは確実。だが、ここまで付き合ってもらっている身として不安視していたのも事実。

 何かしら反感があると思っていたが……俺はこの場に至ってまで、仲間を見くびっていたかもしれない。


「俺は、この話をツクモから聞いても、世界を守りたいとか高尚(こうしょう)な意志が湧いた覚えは無い。でも、皆と生きる世界が滅茶苦茶になるのは嫌だ」


 だから。


「改めて──カラミティと戦う。その為に、力を貸してほしい」

『もちろん!』


 決意表明に応えてくれた皆の顔を流し見て、深く頷く。

 そうしてエリックが自身の頬を叩き、立ち上がる。


「それじゃあ早速、編み笠の男……ナナシだっけか? そいつを捜索するか」

「つっても潜伏箇所の目星すら、ついてないだろう? 手当たり次第、怪しい場所を巡っていくか?」

「今の話で神秘魔法(アルカナム)の精度が上がったから、これを頼りにしてもいいわよ」

「ありがとうございます、学園長。ナナシとの咄嗟の会敵でも対応できるように、二人組で行動しましょうか。それぞれに一枚ずつ渡すとして……」

「私は今日日輪の国(アマテラス)分校の方で会議があるから、捜索に参加できないわ。本当なら来国初日に済ませる予定だったんだけど、裁判沙汰が起きたからねぇ……」

「俺も用事があるから、それが終わった後ならいけるかな」

「用事って、なんだい?」

『以前に話したであろう。シラビの子の墓参りだ』


 俺の代わりに答えたキノスの言葉に、セリスはああっ! と手を打った。


「あれだけ熱心に聞いておきながら、無碍には出来ないからね。面会したカグヤと一緒に行ってから捜索するよ」

「んじゃあ、捜索隊は俺とセリス」

「私とユキで動きましょうか」

「あいよ」

「わかった!」


 迅速な班分けと元気の良い返事を最後に、各人が行動を起こす。

 俺も(なら)ってレオ達を粒子化させ、カグヤと目配せする。

 必要な物と地図を確認して、シノノメ家の屋敷を後にした。

ネット回線が終わってたり、何故か保険会社の面接を受けに行ったりと忙しかったので、少し短めです。


次回、お供え物を手に墓参りへ。カグヤのヒロインイベント回です。

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