第二〇三話 混迷極まれり
日輪の国、後編スタートです。
これまでの簡易的なあらすじになり、本筋は次回から。
王家、個人、神と様々な思惑が混在した裁判。
かねてから国家を揺らがす存在としてコクウ家を捕縛する為に組まれた芝居。
最終的にクロトの判断によって彼の独壇場と化した血まみれの惨劇。日が経った今でも賛否両論の意見が立っていた。
しかしその内容は、いずれも王家を非難するものへと帰結する。それもそのはず、たかだか一般の、しかも外国から来た学生を悪戯に磔へ追い立てたようなものなのだから。
命を燃やし、意識が潰える最後まで。
自身の潔白と裁判に関与した者へ糾弾を止めなかった。止める訳が無かった。
権謀術数が渦巻く大国家の流れに屈してなるものか、と。
クロトに残された身一つで成し得る、反逆の証明であったからだ。
──当の本人は関係者全員、後処理に困る地獄を見ればいいという、なんとも刹那的な思考で動いていただけだが。
されど彼の行動は傍聴席にいた者、その主張を聞いた者へ伝播した。
現在、事の発端となったコクウ家領地は荒れに荒れている。元当主たるシュカ、若者の命と尊厳を軽はずみに扱った王家に対し、人種問わず有志が集った反乱軍のような組織が出来上がっていた。
コクウ家の一人娘、マチと王家が沈静化に努めた所で焼け石に水。
これまで燻っていた埋め火に燃料が投下された事で、誰かが懸念していた、マガツヒに連なる組織が発足していた。
他の領地は幾分か冷静ではあるが、初手を見誤った王家へ不満が高まっている。各当主と子息女が懸命に火消しをおこなっているが、やはり効果は薄い。
皆が、待っているのだ。クロトの真意を、王家を赦すかを。
今もシノノメ家の屋敷には王家の臣下が見舞いや様子見に足を運んでいるが、暖簾に腕押し。
王家直属の隠密間謀部隊“影の者”が偵察に出るも、シノノメ家に回された人員が防いでいる為、全貌は把握し切れていない。
情報が出回らず、完結しているが為に。
推測と憶測が飛び交い、義憤にまみれた俗世となっている。
……そんな折に、目覚めたクロトが勝手に出歩いて道場でリハビリをしていた。
誰に伝えるでもなく医者の判断を待たずに、なんとも元気な様子で、アカツキ荘の皆が見たことのない技を振るっていたのだ。
故に、粛々と。
関係者各位に囲まれた中心で正座し、説教を受けるのは当然の罰であった。
クロトがツクモと話していた間、現世で何が起きていたか、というお話。
次回、淡々と説教を受けて疲弊したクロトと、淵源の戒刀について。